第2話 筑前煮

晩御飯の仕度。

魚が焼けた。味噌汁もできた。


「ご飯ですよ」

「おー。納豆、冷蔵庫から出すか?」

「あー、お父さんが食べるなら…。」

「まったく! お前はそうやって人任せにする!」

「ええ…だってお父さん納豆出しても食べないじゃない」

「ああ!? それはおかずがある時だろ! だいたい何だ! 晩御飯が魚と味噌汁だけって…まったくお前はいつも…。」


「……。」


ぱかっ。鍋の蓋を開けると筑前煮登場。


父動揺。


「なっ…俺、煮物あるなんて聞いてねぇぞ!」

「うん。私何も言ってないです。」

「あ…う、うん…そうだな…。」


なんか父の言葉少ない食卓。


「たまに食べたくなるんだよね、筑前煮。」

「うん…いいことだ…。」


そして納豆は冷蔵庫に鎮座する。


……鎮座しているのに父は納豆を買いだめする。

だいたい健康番組のせい。

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