父と暮らせば。

宮間

第1話 ハズキルーペ

ビバホーム(家から車で30分)に行くと言ったら着いてきた。

新聞の折り込みチラシでハズキルーペを扱っていたという。

どうも最近目の見え具合がよろしくないようだ。


「…ビバホームってチラシ出してたっけ?」

「出してんだ! まったくお前は何も知らねえな!」

「ホーマック(逆方向に車で30分)じゃなくて?」

「違う! ビバホームの方だ!」


サービスカウンターで訊ねる父。

「ハズキルーペどこ?」

カウンターのおばさんが面倒くさそうに答える。

「ハズキルーペ? ウチにはないよ。」


固まる父。


ほぼ予想通りの展開に私は買うつもりなどないキャンプ用品コーナーを眺めた。

このチェアちょっとかっこいい。


私は何も聞こえない。


しかしおばさんは強かった。


「他にもいたなハズキルーペとか言ってる人。ホーマックと間違えてんだな。」



遠い目をしている父の姿を視界に入れないようにした。

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