PART7
RANMARU、いや、上野五郎は、蒼ざめた表情で低くゆっくりと深呼吸を繰り返し、肩を押さえて俺の顔を見上げた。
『う、撃ったね?この僕を?』
俺は何も答えなかった。
彼の手から拳銃をもぎ取り、バンダナで包み、ベルトに突っ込むと、腰のポウチから止血帯を出して縛った。
仮にも免許持ちの身の上だ。
最低限の仁義は通しておく必要があるからな。
俺は
『あ、あんた一体、誰なんだ?』
俺は黙って、ライセンスとバッジを出し、奴の目の前に突き付けてやる。
『探偵?』
『そうだ』
『何で僕を撃ったのさ?僕は未成年、義賊だぞ!』
『だからどうした?先に警告はしたぜ。拳銃を撃てば、誰であろうと容赦なく撃つ。文句があるなら訴えるなりなんなり、後から好きなようにすればいい。RANMARU君よ』
俺は奴の側に落ちていた『森蘭丸』のカードを拾い上げ、思い切り凄んでやったが、奴は自分のやったことについて殆ど理解出来ていないような、そんな表情をしていた。
間もなく、パトカーと救急車のサイレンの音が、遠くから近づいてくるのがはっきり分かった。
『お屋敷』の周囲はちょっとした騒ぎだった。
パトカーが4台、救急車が一台。流石に消防車まではこなかったが、後は野次馬にマスコミが押し寄せ、
俺は
『何故事前に連絡をしなかった』
『今度こそお前の探偵免許を取り消してやる』
等と、毎度お馴染みの殺し文句が飛んだものの、駆け付けた吉岡が仲に入ってくれたのもあってか、向こうも渋い顔をしながらも、
その場はとりあえず収まった。
RANMARUこと上野五郎は救急隊員に肩の治療を受け、警察官に同行の元、救急車に載せられて運び出されていった。
『ありがとよ・・・・』
吉岡は騒ぎが収まった後、俺の肩を叩いて呟いた。
『礼はいい。それより必要経費と割増しの危険手当の請求書は送るからな。頼むぜ』
五日後・・・・俺は
まあ、なんてことはない。
俺は新宿署に報告書(つまりは体のいい始末書だ)を提出し、公安委員会の査問とやらに出頭したものの、処分が下った。
平たく言えば『1カ月間の営業免許停止処分』つまりは
あれから公安委員会に、人権派の市民団体や識者とやらから抗議の電話や手紙やファックスが殺到し、
『撃ったのは探偵の方が先じゃないか!』
『犯罪者とはいえ、未成年者を非情に撃つとは何事だ!』
というわけだ。
それだけじゃない。テレビのワイドショーやニュースショーなんかでも俺を非難する有様だ。
泥棒のRANMARU君は『未成年』だから顔も名前も流れず、単に『少年A、17歳』だったのに、俺は名前から住所、果ては『元陸上自衛隊々員』と、ご丁寧に前歴まで流してくれる始末だ。
始めは免許取り消しという話も出たらしいが、保護司の吉岡と、そしてあの『切れ者マリー』まで俺の弁護に当たってくれたおかげで、結局『この程度』で済んだって訳だ。
え?
その後『RANMARU』君はどうなったかって?
奴はまだ17歳、ぎりぎり刑事事件の対象にはならなかった。
アジト(東中野にあった安アパートだそうだ)から、盗まれた宝石が手付かず
で発見され、被害者が全員訴えを取り下げたこともあってか、処分保留という形で『保護観察』に落ち着いて、今では暢気に病院で治療中だとさ。
まあいい、俺は貰うだけのものは貰ったんだ。
一か月の業務停止くらい屁でもない。
呑んだくれて寝て、また呑んだくれて寝て・・・・
一か月なんざ、あっという間だ。
終わり
*)この物語はフィクションです。登場人物、事件その他全ては作者の想像の産物であります。
怪盗少年『RANMARU』 冷門 風之助 @yamato2673nippon
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます