真相

 ガチャリ、


 ガチャリ、


 ガチャリ、


 扉が開く度に思い出していく、忘れてしまった過去。


 実はもう、母の死因なんてとっくに思い出していた。

でも、ちゃんと思い出すまで終わらない。


この身体は、記憶の通りにしか動かない。

いつ終わるかも分からない。


 ああ、だんだん近づいていく。


怖い。もう終わりにして欲しい。最初からやるのをやめておけばよかった。


そう思う自分もいれば、


最後までちゃんと思い出したい、と思う自分もいる。



 多分、これが最後の扉。

見届けなければいけない。私が犯した、大きな罪を。



――――――――――



 血塗れの服。血塗れの床。

手に握られたナイフ。冷たく、硬い感触。

見慣れたベッド。笑顔の写真。



 全部鮮明に思い出した。

逆に、何で忘れてたんだろう?

そう思うと、笑いが込み上げてきた。


記憶の中の私も、笑っていた。

頬を流れる液体に気づかないまま。


「ばいばい」


私はそう呟き、そのまま意識を失った。



――――――――――



 気がつくと、そこは真っ暗な道だった。

進んで行くと、扉が現れる。


私は、ガチャリ、と扉を開けた。



――――――――――



「――いかがでしたか?お母さんの死因、分かりましたか?」


なんで分かったんだろう?……まあいいや。


「はい。とてもスッキリして、いい気分です。あの人は、死んでしまうべき人だったんです」


「そうですか……では、なぜ泣いているのですか?」

「……え?」


頬を触ると、暖かいものが流れていた。

どうして?分からない。


こんなに嬉しいはずなのに、何で?

何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で

お母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さん母母母母母母母母はははははははははははははははははははははははははははははははは

ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ



――逃げなきゃ、扉から、逃げなきゃ。


だってぜんぶおかあさんのせいなんだから。





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