第10話 再会

 先輩の幽霊は度々目撃した……そう、やっぱり先輩は成仏しないで幽霊になっていたんだよ。

 でもなかなかまともに姿を見せなかった。

 学校でよく見た。

 後ろ姿をちらっと見せて、角を曲がってしまったり、

 遠くの廊下をスッと横切ったり、

 向こうの校舎の窓にいたり、

 トイレに入って、手を洗ってると、鏡の中に一瞬映っていたり。

 こっちがギョッとした顔を見て、笑ってんだよ。

 見えてる事が分かって、からかって、面白がってんだな。

 まったく、先輩らしいよ。

 でもまあ、家族が危ない目にあったりする事はなくなったから、まあ、よかったけど。


 …………

 先輩が自殺した動機だけど、

 やっぱり俺だったんじゃないかと思う……

 先輩は、俺が好きだったみたいだ。

 自惚れてんじゃねーよ、って言われそうだけど、

 先輩の幽霊になってからの行動を見ると、そう思うんだ。


 夏休みにデートした時、

 先輩は気づいたんだと思う、

 俺がもう、霊感がなくなって、霊が見えなくなっている事に。


 先輩は子供の頃から霊が見えたらしい。

 やっぱり霊が見える事で、周りから気持ち悪がられて、友だちもいなくて、孤独だったんだろう。


 俺という、霊感のある弟分が出来て、楽しかったんだろう。

 男と付き合った事なんかなかっただろうから、けっこう俺を男としても意識してたんじゃないかな。


 その俺が、霊感がなくなって、元の世界、先輩の馴染めない普通の人たちの世界に戻っていく事が寂しくて、改めて、自分の孤独を思い知ったんじゃなかったのか。


 それで、あっちの世界に行ってしまったんじゃないか、と……



 遠くでチラチラ姿を見せていた先輩の距離が、だんだん近づいてきた。


 俺は部活に復帰するのと同時に新しい自転車を買ってもらって通学に使ってたんだが、

 ある日の帰り、

 先輩が自転車の後ろに乗ってきた。

 自転車を漕いでると、いきなり空から舞い降りたみたいに重み……はほとんど無いんだが、空気が体温を感じさせて、頭の中ではっきりと、後ろに乗って、俺の腰に手を回してくる先輩の姿がイメージ出来るんだ。

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