第7話 呪い?
先輩が首を吊ったのは、家の近所の林の中だった。
早朝、犬の散歩をしていた近所の高齢者が発見したんだが、先輩は深夜、家を抜け出して、そこで木の枝にロープを掛けて、首を吊ったんだ。
俺はニュースで市内の女子高校生が自殺したらしいと言うのを知って、「話を聞きたい」と訪ねてきた刑事からそれが先輩である事を知らされた。
刑事が俺の所に来たのは、俺が先輩としょっちゅうつるんでるのはもう有名だったからな、先に話を聞かれた先輩のクラスメートが俺の名前を出したんだろう。
どうやら先輩が自殺したのは確かなようで……つまり他殺じゃないってことで、それほどしつこくはされなかったけど、それでもやっぱり不愉快な思いはさせられたよ。
ま、向こうもプロだからな、先輩が自殺したと聞かされた時の俺の反応で、だいたいの関係は察したんじゃないかな?
ただ、遺書は見つかってなくて、自殺の動機を求めて捜査しているようだった。
二学期が始まって、俺は目も治って、サッカー部に復帰した。
先輩の自殺は当然学校中で噂になっていて、早々に部活に復帰した俺に疑惑の目を向けるやつもいた。
俺は……、先輩の自殺の動機にはさっぱり見当がつかなくて、俺とは関係ないだろうと思っていた。
ああいう特殊な能力のある人だったから、……クラスから浮いていたんだろうな、もしかしたらイジメに遭っていたのかなあ、俺には全然そんなそぶりを見せなかったけど……、なんて考えながら、あえて考えないようにもしていた。
先輩には良くしてもらって感謝してたけど、俺の知ってるのはごく一部でしかなくて、本当の先輩がどういう人だったのかなんて、高一のガキなんかには分かりはしないだろうと思っていた。
なんで死んじゃったのか、ちょっと悔しい思いもあったけどな……
しばらくして、ちょっと変なことが起こり出した。
まずは、俺が練習中にケガをした。
ふと何かに気を取られてよそ見をした所にボールが飛んで来て、もろに顔面……左目に直撃を受けてしまった。
頭がクワ~ンて感じで、視界がチカチカして、当たった場所が場所だからな、すぐに顧問に病院に送ってもらって検査を受けた。
目自体は大丈夫だったんだけどな、周りがひどく腫れちゃって、みっともないんでまた眼帯の世話になる事になった。
変なのはさ、ボールが当たったとき、何に気を取られたんだったか、自分でも全然思い出せないんだよなあ……
それから……、
うちは両親と妹の四人家族なんだが、
次は母親が買い物行くんで自転車乗ってて、運転を誤って、ガリッ、て、ブロック塀で左腕をひどくこすってしまった。
ああ、目の事ばかり言ってたけど、事故で俺は左腕も骨折してたんだ。目より早く、二ヶ月で完治してたけどな。
「おいおい、気をつけろよ?」
なんて呆れてた父親が、車を運転していて、危うく自転車の子供を轢きかけた。
軽く接触して、倒れて、乗っていた小学生は投げ出されて軽い擦り傷ですんだけど、自転車はバリバリッて踏んで、おシャカにしてしまった。
買ったばかりの不慣れな自転車でフラフラ走ってた子供に多くの原因がある事故だったが、親父は全く生きた心地がしなかったって青ざめていたよ。
で、
妹が何か虫に刺されたらしく、やっぱり左目のまぶたがひどく腫れ上がって、中学生だったんだがな、
「こんな顔じゃ学校に行けない!」
って大騒ぎして、俺に、
「お兄ちゃん、呪われてるんじゃないの? なんとかしてよ!」
って食って掛かりやがって。
でもまあ、そうだよな、
左目に、左腕に、自転車の事故に、
どうしたって俺の事故をなぞってるとしか思えないよな。
俺自身、ボールの直撃だけじゃなく……、
ふと、嫌な気配を感じる事が度々あったんだ。
学校でもあったし、
家で、自分の部屋にいる時にもあったし。
何か姿が見えたりはしないんだ。
ふと、なんとなく、嫌な感じがする、ってだけで。
具体的な異変もあった。
部屋で、物が動いた気配があるんだ。
女なんかはそういうのは敏感で、ちょっとした位置のズレでも分かるって言うよな?
俺はそこまで敏感じゃないからな、やっぱりなんとなく、誰かにいじられたような気がする程度なんだが。
ちなみに母親に訊いたら、「あんたの部屋なんか入んないわよ」って怒られた。
でも鈍感な男でも、いつも見ている卓上ミラーが倒れてたりしたら、そりゃあ気づくよな?
極めつけに、
夜中、やっぱり嫌な気配に目を覚まして、そうしたら、
ピシッ、
って鋭い音がして、電気を付けてなんだろうと見回したら、その鏡にひびが入っていた。
こりゃあ本格的に拙いなあと思って、調べる事にした。
…………
それだけ怪しいことが起こっていて、霊感、幽霊を見る能力はどうしたんだ?って思うだろう?
ああ。どうやらな、
目が治るのと同時に、霊感はなくなったようだった。
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