第2話 霊波をキャッチ

 放課後、校内を回ったり、近くの公園とか、バスに乗って街とか行って、先輩に幽霊を見るトレーニングをしてもらった。


 俺が気づいたのは、それまでちょくちょく見ていた視界の端の白いモヤモヤや、黒い影は、やっぱり幽霊だったんだ、ってことだ。

 幽霊なんて、人がいる所にはちらほら普通にいるもんなんだな。


「周波数を合わせるんだよ」


 って先輩は言った。


「幽霊、って言うか、霊ってのは、電波みたいなもんでね。

 電波って、空中を飛び交ってるけど、それ自体は見えないじゃん?

 ラジオとかテレビとかって機械を使って、電波を捉えて、機械を通して変換してやると、音とか、映像とか、聞こえて、見える形になるじゃん。

 霊を見るためにはね、ラジオ、テレビに相当する受信機がまずは必要で、

 それを持ってるだけじゃなくって、周波数のダイヤルを回して、相手の霊に合わせてやらなくちゃ駄目。

 どう合わせるかって言うと……、経験で覚えていくしかないね」


 って。

 うーん、と……

 霊感の強い人といっしょにいると幽霊が見えるようになる、って言うけど、聞いたことない?

 それはやっぱり本当で、先輩と一緒にいて、

「ほら、あそこ。見てみ?」

 って言われて、見ると……、見えるんだよ、これが。

 俺の場合は……

 そこだけ世界が変わる、って感じかな?

 なんか色が褪せて、それまで現実の色の中に埋もれていた物が浮き上がってきた、って感じ?

 先輩にはもっと普通に見えているみたいで。

 いわく、


「テレビやラジオっつっても、安っす~いのから高っか~いのまで、色々あって、画像の細かさや色の再現度、音の鮮明さや迫力とか、色々グレードがあるじゃない?

 霊感がある、っつってもピンキリでね、君みたいにモヤッとした影みたいにしか見えないのから、ま、色々あるわけだよ。

 ちなみにわたしは、幽霊を見ててもそれを幽霊と気づかなくて困ることがしょっちゅうある」


 と、まあ半分自慢げに言ってたよ。


 幽霊を幽霊と気づかずに何が困るか?って言うとな、

 幽霊ってのは世間一般から無視されてんだよ。何せ見えないから。

 で、たまに見える人に出会うと、嬉しくて、付いてきちゃって、油断してると、取り憑かれてしまう、ってわけだ。

 先輩も

「肩が凝って困る」

 って言ってたな。もっとも、肩こりは胸のせいじゃないかと思うんだが……

 うん、けっこうあるんだよ、胸が。


 先輩か?

 うーーん……

 よく見ると、けっこう美人、かな?

 よく見ると、な。

 パッと見はな、ダサイ。

 髪の毛が重そうで、色黒で、ダッサイ黒ぶちのメガネ掛けててな。

 目が三白眼で、いっつもニヤニヤ笑ってて。

 危なそうで、関わりにならない方が無難だな、って。実際、「見える人」なんだけどな。

 でもまあ、よく見るとな、目鼻立ちが整っていて、胸が大きくて、……エロイんだなあ、「年上のお姉さん」って態度が……

 まあ、好きだったよ、うん……

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