ー3- 星瞬く夜

 空を黒が支配した。兵である星が散り瞬き、いくつかは流れる様に落ちていく。

彼女は落ちていく星がどこに向かうのか不思議でたまらなかった。


 一つ、また一つと星は流れ落ちていく。そんなに落ちてしまったら、真っ暗になってしまう、と彼女は思った。月の見えない夜は、星だけが唯一の明かりだった。


 彼女は星に手が届くか試みた。上に手を伸ばすと、自然と体が上昇した。このまま行けば、あの星を手に取ることが出来るかもしれない。しかし、少し上ったところで目の前が緑色の手に遮られた。シオンの手だ。


 何をするの?彼女は手を下ろし、シオンを見た。そこで彼女は、シオンの表情がより一層深く悲しい表情を浮かべているのに気が付いた。


 彼は何か言いたげに口を開くが、僅かに唸っただけで口を閉じて俯いてしまった。彼女はシオンと顔を合わせようと目の前まで来るが、彼女を目に映してもなお俯いたまま動かない。


 シオンは膝を抱え、顔をうずめた。彼女には分からなかった。シオンがどうして悲しい表情を浮かべるのかが。彼女が行動を起こすと、彼は表情を曇らせる。出会ってちょっとしか経っていないが、彼女にとって大切な存在になっていた。近くにいると、不思議と心が安らぎ、恐怖や不安などと言う感情から守ってくれる。


 ずっと昔に体験したことのある感覚だった。


 記憶なんてない。でも、感覚だけは何故か残ってる。彼女にとって、その感覚は陽だまりの中にいるようで温かいものだった。


 シオンにも、こんな温かな感覚を知ってほしい。笑ってほしい。

 もう、離れないから。


 彼女は寄り添うように、シオンの手の甲に乗り、髪を撫でた。せめて、シオンが安心できるように。悲しい表情を浮かべないように、優しく撫でた。自分勝手だけれど、傍にいることを証明するため、ずっと、撫で続けた。



 太陽が顔を出し、夜が逃げる頃には、シオンの手の甲ですやすやと寝息を立てていた。

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