第一章 1 『死のほとりで生きる日々』 

 高層都市 《富士》の崩壊から四年が経過していた。


 霊峰富士から南下する事およそ百キロメートルに位置する伊豆半島の東部の山岳地帯。

 そこにそびえ立つもう一つの高層都市 《天城あまぎ》に不穏な動きがあった。

 錆びたトタンの壁に囲まれた薄暗い廃屋の奥で、酷くうるさい音を立ててシャッターが上がる。差し込む光に包まれ、軍服を身にまとった男たちが巨大なコンテナを運び込んできた。

 廃屋の中では派手な装いのギャング達が軍人たちを迎え入れる。

 手遊びのように拳銃をいじる者、煙草をふかして気だるそうに佇む者。ギャングと軍人は旧知の仲のようで、軍人の登場を特別なことに感じる者はその場にいないようだ。

 ギャングたちの顔を見て、軍人たちは陽気に語りかけた。


「よう。鰐塚わにづかさんとこの若い衆じゃねえか。いつも世話になってるな。………けど、今回は確かボスの依頼だったんじゃなかったか?」

「ボスはご多忙でなぁ。かわりに、鰐塚わにづかさんのところで荷物を預かることになったんだ。」


 ギャングの一人はボスの署名が綴られた書類を提示する。

 軍人はその文面を確認すると、納得したようにコンテナの扉を解放した。


「それが例のやつかい?」


 ギャングの男はコンテナの中を覗き見る。

 そこには、大人がひとりは入れそうなぐらいの大きな球体の金属容器が入っていた。頑丈そうな球体の周囲には管や何らかの装置が複雑に絡みつき、表面には軍の所有物であることを示す刻印と記号が記載されている。


「ふむ。確かにボスが欲しがってるもので間違いはないようだな。……これがあの《富士》に隠されていた物、というわけか。」


 ギャングの男は引き換えに軍人にトランクを渡す。そこには多額の金が詰め込まれていた。


「やはり鍵は見つからなかったのかい?」


 ギャングの男が問いかける。

 軍人は煙草に火を付けながら気だるそうにつぶやいた。


「報告の通りさ。……まあそのブツだけでもあの崩壊した街から運び出せただけ、奇跡ってもんだ。ハンターの協力あってのことだな。」

「彼らには頭が下がるよ。しかし、鍵なしでこれを開けるのは難儀だなあ。……おい、ケイジ。」


 ギャングの男がシャッターの方に向かって呼びかけた。

 そこには黒いミリタリージャケットとショットガンを装備している集団が見張りを行っている。

 その中でもひときわ背が高く目つきの鋭い青年が振り向いた。


「ケイジ。……確かお前の知り合いに鍵開けの名人がいたよなあ。開けられるはずがない扉を開けて《上の街》に侵入した奴らだ。」


 ケイジと飛ばれた青年は少し間を置いた後で、眉をしかめながら口を開く。


「……ツカサとユイのことですか?」

「そうそう。特にユイって娘は有名だよなあ。まだ十五、六だったか? あの問題児ども、今では技師組合の主任らしいじゃないか。」

「あいつらのことは放っておいてやってくれませんか。………俺がケジメをつけたことで終わった話のはずです。」


 ギャングの男は鼻で笑う。


「何もいまさら捕まえようって話じゃねえんだ。ただの仕事の相談だよ。……そういやお前のお友達は俺らが嫌いなんだっけ? それともお前がお友達を巻き込みたくないんだっけか?」

「まあ……どっちもですけど。」

「ガキどものお気持ちなんて、どうでもいいんだよ。組合の奴らは俺らの命令通りに動けばいいんだ。あと、ケイジはうちで一年目だったよな。いくら能力者だからって、口ごたえしてんじゃねえぞ。」


 ギャングの男は銃口をちらつかせながら凄む。




 ケイジが仕方なく了解の言葉を出そうとした時だった。

 突然、廃屋の中の様子が激変した。

 空間の形状や広さは変わっていないが、四方の壁面がまるで胞子まみれのカビの世界に様変わりし、身の丈ほどに巨大な胞子嚢ほうしのうが粒子を放出し始める。

 何が起きたのか分らずに皆が一様に周囲を見回していた時、ギャングの男の背後に現れたモノを見てケイジは身をこわばらせた。


「……後ろ……《カルマ》です。」


 ケイジのつぶやきにぎょっとしてギャングたちが振り返ると、その背後には無数の虫が寄り集まったような……子供ぐらいの大きさの何かがたたずんでいた。


「ありえない……。ここは防壁の中なんだぞ?」


 ギャングたちが恐怖で動けなくなっていると、異形の怪物が突然虫をまき散らしながら襲いかかってきた。

 ギャングの一人が瞬く間に虫の群れに襲われ、その口の中へと虫がなだれ込んでいく。

 首の皮が破けるかと思うほどに自分の首を掻き毟ってもがき苦しんだギャングは、やがて力なく腕を下して茫然と立ち尽くした。


「くそ……喰われたんじゃない。乗っ取られたんだ……。」

「《カルマき》だ……。カルマ憑きになりやがった!」


 《カルマ憑き》と呼ばれた犠牲者は眼球が消失したように真っ黒な穴となり、その穴から虫が這い出てくる。胸が陥没して穴が開き、うごめく虫で満ちている様子が見える。

 体内を虫に乗っ取られたギャングがゆっくりと歩き始めると、カビの世界がその動きに従ってゆっくりと動いた。

 このギャングの体を中心に発生している球体状の空間の中が、周囲の正常な世界から切り取られたようにカビの世界へと様変わりしているのだ。

 近づいてくる怪物を恐れて悲鳴が上がる中、とっさにケイジを含めた黒服の男たち数人が自分の腕に注射器を押し当てて、血のように赤い薬剤を体内に注入していく。

 そしてすぐさま異形の者に向かって手を掲げると、それぞれの体から淡く光る透明な球体が広がった。


「相手は細かく分裂してる。《霊殻れいかく》を重ねて隙間を埋めろ!」


 ケイジは冷静に指示を送る。

 怪物は無数の虫に分裂しながら飛びかかってくるが、黒服の男たちの体から生み出された光の球体に包まれるや否や時間が停止したかのようにピタリと動きを止めた。


「早く逃げるんだ!」


 ケイジの叫び声に我を取り戻したギャングや軍人たちは突き動かされるようにコンテナを押し、空中で停止する異形の横をすり抜けていった。



         ◇



 ギャングたちが《カルマ》と呼ばれる怪物に襲われていたのと時を同じくして、高層都市 《天城》の外壁からはドリルのけたたましい音が空に響き渡っていた。

 数百メートル下まで遮るものがない巨大な壁面にいくつかの作業用のゴンドラがぶら下げられて、作業員が老朽化した外壁パネルを新しいパネルと交換している。

 その作業員の中に十六歳に成長したツカサの姿があった。

 身長が随分と高くなっており、薄手の作業着からは細いながらも鍛えられた体が透けて見えている。




 汗とほこりだらけになりながらの長時間の作業に疲れ果てたツカサがふと周囲を見渡すと、はるか遠く強い日差しの向こうにはあおかすむ富士山が見えた。

 その均整のとれた霊峰に密着して、その大きさに匹敵するほどの巨大な塔のような建造物が寄り添うように立っている。

 全高二千メートルに及んでいた高層都市 《富士》……だったもの。

 すでに中間部分から崩れているので現状の高さは随分低くなっており、風雨にさらされながらも怪物の爪痕を残している。かつての関東の中心的な都市は、今や惨劇の記憶を今につなげる墓標と成り果てていた。


 ツカサが故郷を失った日、ツカサを乗せた大型ヘリは高層都市 《天城》にたどり着いていたが、一握りの権力者を除いたほとんどの難民たちは都市に入ることすら許されなかった。

 ツカサ達も例外ではなく、街の扉は目の前で閉ざされたのであった。

 そんな途方に暮れた人々が最後にたどり着いたのが、低層に存在するスラム街であった。

 スラム街は高層都市の居住可能な安全地帯……通称 《上の街》と怪物が存在すると言われる《汚染層》の間に挟まれたわずかな隙間に形成されている。

 《汚染層》の高度は年々上がり続けており、スラム街は常に怪物の侵入に脅かされている。

 しかしそれでもスラム街は他に行き場のない難民であふれかえり、元々の住人との衝突は日常茶飯事の出来事になっていた。

 難民がどう死のうとも構われることはない荒みきった街ではあるが、それでも幼い弟を守るためにツカサはスラム街にしがみつき続けるしかなかった。




 全体の作業の進み具合を確認しようとツカサが周囲を見渡したとき、隣のゴンドラにツカサは強烈な違和感を覚えた。

 ゴンドラを支えるワイヤーの付け根が錆びきっているのだ。

 スラム街はすでに放棄されて久しい階層を無理やり使っているにすぎず、あらゆるものが古びている。作業員たちも連日の労働で疲れ切っているため、設備の事前確認がおろそかになっていたに違いない。


「作業をやめるんだ! すぐにこっちのゴンドラに移って……。」


 ツカサが呼びかけたその時、突然の強風がゴンドラを大きく揺らした。

 その衝撃に耐えられなかったのか、ワイヤーの付け根の金具は錆びた破片を飛び散らせながら断裂してしまった。

 「あっ」という短い声と共に隣のゴンドラに乗っていた作業員たちが落下していく。

 まさかこんなにあっけなく自分たちが死ぬとは思いもよらなかったようで、彼らは茫然とした表情でみるみる遠ざかっていく。

 誰にも助けられるはずはなかった。

 重力に引き付けられて落下していく作業員たちの結末はわかりきっている。


 その結末は墜落死……ではない。


 ツカサは数十メートルを落下していく者たちを視線で追いかける。

 今いる場所は地表から五百メートル以上の高さはあるはずだが、落下していく彼らはその高さを落ち切る前に突然空中で停止し、恐れを帯びた悲鳴をあげながら肉体がバラバラに分解されていく。

 その高さにまるで水面が存在するかのように真っ赤な体液が水平に広がり、やがて最初から何もなかったかのように消え失せてしまった。


 喰われて死んだのだ。


 何に食われたのかは見えない。

 離れたところからは何も見ることができない。

 空気も澄みきっており、まさかすぐ近くに人体を粉々に分解してしまうような脅威が迫っているなど一見してわかるはずがない。

 しかし、確実にそこに何かがいるのだ。かつてツカサの両親を殺したような怪物が……。

 ツカサは足がすくんで動けなくなった。膝が小刻みに震えているのがわかる。


 突風がさらに襲い掛かる。

 ゴンドラから金属のきしむ音が響き渡るなかで、他の作業員たちも次々に悲鳴を上げた。


「もういやだ! だから壁外作業なんて嫌だったんだ!」

「黙れ! 珍しいことじゃないだろう? この区画は今のうちに整備しておかないと街まで侵入してくるぞ!」


 動揺がみるみる広がり、作業員の一人が作業続行の指示を無視してゴンドラを上昇させ始めた。

 その動きが引き金となり、作業員たちは我先にと離脱し始める。

 ツカサの乗るゴンドラも同僚の操作によってゆっくりと上昇し始める。

 恐怖で座り込むツカサはその動きに身を任せるしかなく、ワイヤーの巻き取られる様を疲弊しきった顔で見上げていた。




 ツカサが四年前に逃げ込んだこの高層都市 《天城》は《富士》ほどではないとはいえ、それでも全高が千メートルを超える巨大さがあった。

 しかしすでに下半分は無人と化している。

 地球全土を襲ったと言われている汚染はその領域を徐々に上昇させており、伊豆半島全域はおろか、天城連山あまぎれんざんの上に建造された高層都市の半分が汚染層に没するまでになっていた。すでに汚染層はスラム街の存在するフロアの直下に迫っているとも言われている。

 再び怪物が街を滅ぼすのはもはや時間の問題であった。


「……ツカっちゃんは倒したいと思ったことはない? ……《カルマ》のこと。」


 風に揺れるゴンドラの中で同僚のミツルが問いかけてきた。

 ミツルも《富士》の崩壊がきっかけでこのスラム街にやってきた難民の一人だ。彼もカルマに家族を喰われ、同じ境遇のために助け合うことも多かった。



 技師組合やギャングたちは怪物のことを総称して《カルマ》と呼んでいた。

 そしてカルマに憑りつかれて体を奪われかけている犠牲者は《カルマ憑き》と呼ばれていた。

 《カルマ》という名は随分昔から宗教家の間で使われていた名称が定着したものらしい。

 業。

 因果応報の法則。

 行為の結果に生じる宿命。

 かつて人類の活動が地球規模の汚染と破壊をもたらした歴史があり、その結果として人類を滅ぼす怪物が地球全土に満ち溢れた。そういう因果応報としての存在に《カルマ》という名をつけたということだ。



 カルマは目で見ることができない。写真にも鏡にも写らない。

 しかし見えないだけで存在していることは、このスラム街に住む以上は常識のようなものだった。

 カルマの力は生物だけに及ぶものらしく、接近されて力を浴びてしまえばその存在を感じずにはいられなくなる。

 おそらくカルマの姿かたちというものは、カルマの力を浴びた者が心に感じた《恐怖の形》なのだろうとツカサは思っていた。

 両親を殺した黒いヘドロのようなカルマの姿が思い出され、ツカサは身震いした。


「……そりゃあ、倒したいと思わない人間はいないだろ? ……だけど俺達みたいな普通の人間が戦えないのは常識だよ。あの怪物には武器が役に立たないんだから……。」

「確かにあの怪物には銃もナイフも、爆弾さえも効かない。核攻撃さえも効果がなかったっていう話は有名だよね。奴らを倒せるのは《特別な能力者》だけってことは誰でも知ってる。」


 ミツルは他の作業員に聞かれないようにツカサに耳打ちする。


「………《特別な力》をもたらす薬の話、聞いたことはある?」

「薬……………?」

「ほら、随分前にカルマ憑きが見つかった三区のゴミの集積場があるでしょ? 最近、あそこの防壁の修理に行ったんだけど、見ちゃったんだよ。ギャングの連中が妙な薬を打ちながら能力の訓練をやってるのを。………あの薬がきっと力の秘密なんだ。たぶんギャングがいっぱい持ってるよ。」


 ミツルは一層声を潜めて囁いた。


「盗みに入らない?」

「盗み……って。何を馬鹿な……。ギャングの拠点に入れば殺されるし、そんな特別な薬、厳重に保管されてるに決まってるだろ?」

「ツカっちゃんほどの人が何言ってるの。僕知ってるんだよ? 鍵開けの名人って話。」

「その話は一年も前の話だ。……結局、軍やギャングに目をつけられたし、ケイジにも散々迷惑をかけた。………弟がいる俺をこれ以上巻き込まないでくれよ………。」


 しかしミツルはいつにも増して真剣な表情で迫ってくる。


「でもさ、考えてもみなよ。軍が守るのは《上の街》だけ。ギャングが守るのは自分たちだけ。……僕らも、自分の身を守る力が必要なんだよ。」

「ダメダメ!」


 ツカサは大げさに腕を交差させて見せた。


「そんな確実でもない話で危険は冒せないよ。戦うなんて危険を冒す真似はそれこそ専門家に任せておけばいい。……それにギャングにはあまり近寄りたくないんだ。」

「ちぇーー……。」


 ミツルは口を尖らせながらゴンドラの壁に背中を預ける。

 ミツルには悪かったかもしれないが、守りたい家族がいるツカサにとっては今の生活を維持するだけで精一杯だった。

 ツカサは気まずい雰囲気をかき消すように、話題を変えようとミツルの顔を見た。


「そういえば今度、技師組合の集会があるだろう? 待遇改善のための大事な会議なんだ。全員参加って言われてるし、ミツルはいつもさぼってるんだから、絶対に出席しろよ。」


 ミツルは寝ぼけたような気だるいため息をついて、つまらなそうにツカサから視線を外す。


「西塔でやるんだっけ? ……あんなの意味ないと思うよ? 何やっても、結局はギャング様の腹積もり次第なんだから。ゴミ拾いでもしてた方がお金になるでしょ………。」


 ミツルはあからさまに嫌そうな顔をした。



         ◇



 壁外作業を終えたツカサ達を待っていたのはいつもの身体検査だった。

 全裸にされた後、ショットガンを携えた黒いミリタリージャケットのギャングに全身を嘗め回すように確認される。

 汚染層より高い位置で作業しているとはいえ、壁外作業を行っている以上は怪物に襲われる危険がある。喰われて死ぬならまだしも、憑りつかれて体を乗っ取られでもすれば、怪物を街の中に招き入れてしまうことになる。それだけは絶対に避けなければいけないことだった。

 怪物に憑りつかれた者は必ず体のどこかが人間ではない何かに変異してしまう。

 監視役の男が確認しているのはそういった体の異常についてだった。



 ツカサとミツルが身体検査を終えて服を着ていた時、後方から悲鳴が沸き起こった。

 とっさに小さなメンテナンスハッチの隙間から検査場を覗き込むと、視線の先には服を脱がずに後ずさる作業員の姿があった。

 とっさに黒服のギャングが取り押さえると、はぎ取られた衣服の中には獣のような不気味な異物が浮かび上がっていた。


「リョウタ………! あいつがカルマ憑きになるなんて………。」


 黒服のギャングが手のひらをリョウタの方に向けると、突然何かが爆ぜたような衝撃が広がり、リョウタは外壁の縁まで吹き飛ばされる。

 それは何かの物語に出てきた超能力のような力だ。

 何度かこの目で見たことがあるが、それでもツカサには何が起こっているのかよくわからない。

 続けざまに衝撃が発生した時、異形と化したリョウタは崖下へと姿を消してしまった。


「リョウタ君………。まだ仕事を覚えたてだというのに……。」


 仕事仲間が今日もひとり犠牲になってしまった。

 リョウタは父親が健在のはずだから、残された遺族のことを思えばツカサの胸は張り裂けそうになる。

 しかしほとんどの仕事仲間は、こんなことは日常茶飯事であるように無感情に立ち去っていく。決して人の死に慣れているわけではないはずだが、騒ぎ立てたところで何にもならないことを、誰もが知っていた。

 そんな中でただひとりだけ、ミツルは辛そうにつぶやく。


「ツカっちゃん。僕、リョウタ君のお父さんの所に行ってくるよ。人が死んだのに何の事件にもならないなんて……、お悔やみもないなんて辛すぎるもん。」

「俺も行くよ。」


 ツカサは当然のように応えるが、ミツルはそれを遮るように首を振った。


「今日はツカっちゃん、まだ仕事が立て込んでるんじゃなかった? ツカっちゃんは仕事したほうが助かる人も多いよ。こっちは任せておいて!」


 そう言ってミツルはツカサの背を押した。

 ツカサはまだ若いが技師組合では主任を任されるようになっており、舞い込む仕事もそれなりに多い。そして街のあちこちが古びており、技師組合の仕事は忙しかった。

 ツカサは後ろ髪を引かれる思いがあったが、街を少しでもまともな状態にしたいという思いも常にあり、荷物を肩にかけて歩き出すのだった。

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