第45話 迷宮都市ブレインザック自治区

一週間後


ごごご~


ジープというのだろうか?大き目のタイヤで悪路でも大丈夫な感じの車だ。後部座席には横向きで座るベンチのような椅子が付いており6人くらいならかなり余裕がある。

結構揺れることを覚悟していいたが魔導制御のエアサス(揺れを吸収する装置らしい)が付いていて、びっくりするほどの快適空間である。


さらに速度も40キロくらいは出ている。実際の所、建造のペースはもっと早く可能でDMの消費コストが足りないくらいだ。エリアに入ったモンスターを車の天井に待機している湧帆さんに狩ってもらったり、休憩中に模擬戦と称して私達が訓練することで余剰DMを作りながらペースを保っている。


はぁ、キンググローデンを車に縛り付けて引っ張るべきだったかしら。。。


「いやぁ、ホント土人の方々の技術はすごいでやんす!!こんな車初めて乗ったでやんす。」


出発してすぐも漏らしていたが、ゲレイロはこの車にご執心らしく甚く気に入っている。


「そういえば、グランフロントにも車はあるのね。」


「そういえば、土人の方は別の世界にルーツがあるんでやんしたっけ?都市部では普通に走っているでやんす。ただ、燃料も魔力も燃費が悪いでやんすから貴族の乗り物でやんすね。」


「へぇ、ゲレイロはなかなか博識だな。俺らが異世界人だってことは隠してないが貴族レベルの人間でないと知らないはずだけどな。」


「あっしは、宮大工で王のお傍で仕事をしていやした。なので、噂程度に聞いたことがあるでやんす。」


ふむ、ダンジョン構築というか軍事意外にはゲレイロは結構優秀だし、王族と顔なじみなのもすごいな。カタルニアスだったかしら?


「出身はどちらで?」


「カタルニアス王国の田舎町のザードでやんす。」


「カタルニアス!?そうかぁ、結構すごいのを引き込んだな‥」


「あれ、イオリさんもよさげの反応してたけど、ゲレイロの出自は重要ですか?」


「いや、すぐにどうこうって事は無いんだが、軍の政治レベルの話をすると唯一つながりが希薄なのがカタルニアスなんだよ。王様には歴代小人族が就いていて、商業的に強い国なんだが天人との付き合いは商業以上には無理に近づかない傾向があってな。昂暉さん達も条約を結ぶために一日滞在して顔合わせしただけで、あまり仲がいいとも言えないんだよ。」


「現在の王であらせられるシャブラグ・ド・カタルニアス3世様は天人との距離感を開ける政策をとられております。政治的に巻き込まれたくない思惑がありやすね。特に神国の宗教的な圧力はとても忌避しておられやす。土人の方々に関しては様子見とおっしゃておりやしたね。」


「本人から聞いた素振りだな。」


「あっしは、装飾の作業が多く特に奥方様のため後宮などで作業が多かったでありやんす。そこで、休憩中の秘密話というか愚痴でやんすかね。王から直接賜ることも多かったでやんす。」


なんか無能モグラだと思ってごめんよ。超お抱えの優秀な人材じゃないか…男で後宮とか。。


「そんなことを、俺らに漏らしていいのか」


「王は聡明でありやんす。あっし程度に漏らして困る話は言わないでやんすよ。精々、大臣に直接言えない愚痴を漏らす程度やんす。」


恋人みたいね。。


「なるほどね。まぁ、どちらにしてもカタルニアスには一度行くわ。」


「そうなんでやんすか?」


「えぇ、ダンジョンの拠点をどこにするかは決めてないけどダンジョン協会の本部?偉い人はカタルニアスにいるんでしょ?一度話してみたくて協会に所属するかはそこで決めるわ。」


「正確には迷宮都市ブレインザック自治区に本拠地があるな。」


迷宮都市ブレインザック自治区は地下にある最古のダンジョン【ブレインザックダンジョン】の上に成り立つ街の名前でこの世界で最大の都市らしい。


「そんな違うんですか?」


「俺よりゲレイロに聞いた方が分かるんじゃないか?」


「ブレインザック自治区ははっきりいって完全な独立国家でやんす。国間の政治に関して対外的にカタルニアス王国に任せるという形で、それ以外の部分に関しては庇護下ってわけじゃないでやんすよ。昔の王様同士の盟約によって仲が良いみたいでやんす。」


「へぇ、そんな違うのか香港位だと思ってた。」


「だいぶ軍の認識と差があると?」


「そうだな。さっきも言ったがカタルニアス王国とは情報のやり取りが少ない。情報収集自体は新渡戸さんがやってるだろうけどね。」


「ブレインザック自治長は聡明な方でやんして、シャブラグ王に国外のやりとりは一任してるでやんす。はっきり言ってブレインザックが庇護下にあるという体をとらないとカタルニアス王国は5大国に数えられないでやんすよ。」


「それほど、迷宮都市ブレインザックは力があると?」


「そうでやんす。武力、金、人材、物…都市レベルで比べればブレインザックは他の都市の追随を許さない最強の都市です。野心をむき出しにすれば世界統一に一番近い国だと王はおしゃっておりやした。」


「ダンジョン産のアイテムが蔓延してるんだ可能性はあるだろうな。」


なるほど…理由は分からないがカタルニアス王国を隠れ蓑にブレインザックは力を付けていると。


「まぁ、ブレインザックには行きましょうダンジョン運営に関してヒントがあるだろうし、私の想定では作るダンジョンモデルはブレインザックみたになるでしょうし」


「どういうことだ?」


「迷宮都市って都市部がダンジョンなのかなって?」


「そうでやんすね。」


あ、公になってるのね。


「そう周知なの、なら余計に都合がいいわ。私達が目指すのは都市ダンジョンよ。しかも、都市モデルで勝負するの。」


「都市モデルでやんすか?」


「パリにでもするか?」


八神さんが意外な都市を名前に挙げる。パリも悪くないな。。でも、八神さんなら浅草とかいいそうなのに。。


「いえ違いますが、秘密です!出来るかまだ検証中ですからね。」


そうやって私はウィンクをする。


「そろそろ運転変わってくださいよ~」


簡易的な仕切りで隔たりのある運転席から木梨君の声がする。

何を隠そう木梨君は現在18歳で、教習所に通い仮免許取得直前にこちらの世界に飛ばされたそうだ。なんでも17歳で教習所通いを始め仮免許取得時に18歳を超えていれば最短で免許取得ができるらしい。日本でも車の運転経験が微妙にあったのを良いことに一日で運転に飽きてしまった八神さんが木梨君に運転を押し付けている。


「私が運転しようか?」


「いえ、なんか急に元気になってきたので、もう少し頑張ります。」


「香川さんも懲りないね…」


少し運転させてもらったが、急発進して木にぶつかりそうになり。それ以降運転させてもらってません。。ぶつけてもどうせ、壊れないじゃんこの車。。。それに、練習すれば乗れるよ。。。多分。


「あ~。。。もうすぐでやんすね!それじゃ、休憩がてらに村によりやせんか?おいしいお菓子の名産品があるでやんすよ。」


「へぇ、いいわね。」


「じゃ、そこで出来そうなら一泊しよう。野宿も疲れてきたし」


それだ、私の持ってきた備品で風呂や寝具に困らないとはいえ、テントや車で寝るのはどこか心が休まらない。


「賛成です!!個室のベットで寝たいです!」


琴音ちゃんの喜びの声で後押しされ一行は寄り道をすることにした。



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