第44話 ダンジョンのお引越し
「というわけでやんす」
途中のセーフティーゾーンで適当に自己紹介を含め情報共有を図る。先の出来事としては、粗方こちらの想像どおりでグローデンに襲われてる所をうまい具合に助けに入ったらしく、ゲレイロにはさらに貸しを貸し付けてやったことになる。
なんでも、この周辺の食材をカーモンが狩りに狩って、ゴブリンに配るもんだからゴブリンはむしろ脱出どころか簡易牢屋で集落形成をはじめ、カーモンが取り過ぎた森の食料がこのダンジョンに貯まってることがバレて平原の王様に襲われたのが事の顛末のようだ。
相変わらず馬鹿丸出しだ。
ギガンテスはやはり死んでしまい、すぐにネームドモンスターとして復活させたので強力だったらしい。そして名前は【ガンス】という…ふむ、貴方の口癖そっくり。。
ただ、貯めていたDMもギガンテスのネームドモンスター化でほとんど使いきってしまい結局のところ今はDMが殆ど空だそうだ。
「すみやせん、唯様。。」
「いえ、大丈夫よ。それじゃ丁度いいから引っ越しをしましょう!」
「ダンジョンを別の所にって奴でやんすか?」
「そうよ、私達も長期間ここには居れないし、はっきり言って危ないじゃないこの森」
「そうでやんすね」
「だが香川さん、引っ越すたってダンジョンからマスターは外に出れないんだろ?」
「そうみたいですね。だからダンジョンの引っ越しです。ダンジョンごと移動すればいいじゃないですか。」
「えぇっと…はい?」
八神さんはまだピンと来てないらしく好都合。
ゲレイロは考えるを放棄して、こくこく頷いているが表情がモグラなので寝ていると言われても不思議ではない。
「ちなみにゲレイロ、今DMってどのくらい時間で吸収してる」
「えぇっとでやんすね。。3200!!さすが、義勇軍方でやんすね。ゴブリン牢屋でも150位でやんしたのに」
ゴブリンと比べるなよ。。まぁ、3200か。イオリさん一人で2000近くあったから、湧帆さんと八神さんだけでもそのくらい行くのか…
「内訳ってわかる?」
「えっとでやんすね。湧帆さんが1800でやんすね。次がキンググローデンでやんしたか?あれは600くらいでやんすね。八神さんが400で木梨君が140で琴音さんが250でやんすね。大きい数値はそれぐらいやんす。」
木梨君が琴音ちゃんよりも低いことにムンクの叫びみたいな顔をしているがDMは魔力ベースなので現状物理ばっかり育ててる木梨君の評価は当然だ。幻惑魔法もレベル上げなさいよ。
「あれ?おかしいでやんすね。。」
「どうしたの」
「唯様は0でやんす。」
死んでる~!!
「うそぉ」
「見てくださいでやんす。」
「ほんとだぁ。」
何故だろう?どうして、こうなったか考えていると、まったく別の角度から八神さんの質問を受ける。
「おい香川さん、それ読めるのか?」
「え?どういう事です?」
「ダンジョンマスターのマスター画面って、こっちから光っていてあるのは分かるんだが強力な認識阻害があるから俺らには見ることもできないだよ。しかも、マスター画面はマスターしか見れないのは一般常識になってる。」
「ぼやーっとそこに魔力光があるのしかわからないね。」
湧帆さんが頑張ってみようとする難しいみたいだ。
えぇっと?なんでだ?
「そうでやんしたか。。知りやせんでした。いままで、唯様にしか見せたことが無かったので気付きやせんでしたね。」
ほんとなんも知らないのね。このモグラさんは。。
「木梨君たちも見れないの?」
「はい、唯さんが見えてるとは気づいてませんでした。それに、前回は別行動も多かったので…」
なるほど。。。私だけが見えるのか。。。
「ユニークスキルのせいってことか?」
「いえ、前回から私は画面が見えるのでユニークスキルは多分関係ないです。その時は顕現してませんでしたから。」
「そりゃそうだったな。」
「じゃ、何でだろうね?あ!香川さんってもしかしてモールマンなの?」
そうそうモグモグ、って!んなわけあるかい!!
「はははは、湧帆さんご冗談を」
心の中の突っ込みとは別にお為ごかしをすると、湧帆さんは「違うのー?」って顔をするので無視する。
「多分でやんすが、魔法清書せいではないでやんしょうか?…」
「確かにそうね。それ以外は説明がしずらいわ。」
「それって、大発見なんじゃねぇか…」
結構ヤバイ話になってきたので、一旦この話を打ち切ることにする。早めに移動を開始したいし、恐らく移動に時間がかかるので話したり検証したりの時間は山ほどある予定だ。
「まぁ、今は良いです。私も画面見れて便利くらいで進めましょう。どうせ、検証しないとわかりませんし新渡戸さんいるときに細かいことはやりましょう。とりあえず、移動が可能か試してみます。」
私はそういうと、一人立ち上がり全員の移動を促す。
「本当に、香川さんは思いっきりがいいね。。」
八神さん何か言いました?
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私達はダンジョンの入口にいる。
「それじゃ、ゲレイロ検証よ。ここから外に出ようとしてみて」
「いや、壁みたいに阻まれて進めないでやんすよ。」
「だから、それが見たいって言ってるんじゃない」
「わかりやした。」
しぶしぶ、入口に歩くゲレイロがマジックシールドのような透明な光に阻まれて進むことが出来ない。手とかで押せばいいのに、わざわざ歩いて外に出ようとするので全身で壁に押し潰されるように見える。
おかげで魔法の壁の形までわかり、見た目が面白い。
「ゲレイロありがとう」
「どういたしましてでやんす。」
「それじゃ、次は入口の外ね、そうね半径5メートル位でいいわ。平原とか一番安い地面を作ってくれる?」
「わかりやした!」
そういうと、1秒もかからず足元の土に芝生が生える。
「DM的にはこれが一番安い地面?」
「いや、平原っておっしゃったので芝生にしやした。赤土みたいのが一番安いでやんす。」
「ふーん」
赤土でいいのに、ホント融通が利かんな。
「よいしょ!」
私はそういうと芝生の出来に満足そうに見下ろしているゲレイロを押す
「げぶへ」
良い声で鳴くな。。。
違う違う。思いっきり押したのでゲレイロは芝生と森の土の堺でコメディ風に壁に衝突している。やはり芝生の外には出られないが洞窟の外には出られた。
「ふむ、いけそうかな」
「痛いでやんす」
涙目のゲレイロは一旦無視して検証を進める。
「なるほど、分かってきたよ。」
「僕も分かった~!」
意外な事に湧帆さんも察したようだ。次は上の検証がしたい。
「ガンス!外に出れる?」
ぐぉおぉx
がしゃがしゃ
「危ない、こっちにおいで」
入口付近は天井が低く窮屈そうにしていたギガンテスが入口付近の壁を壊して広げながら外に出てくる。すかさず琴音ちゃんを守る木梨君に冷たい視線だけ送って無視する。
嫉妬とかじゃないんだから!
「あぁ、ガンスは唯様の命令も聞くでやんすね。」
「あれ、普通は聞かないの?」
「多分、そうだと思うでやんすが」
「へぇ、ガンス!やっぱり洞窟に戻って」
八神さんが検証がてらに余計な事を言う。戻ったらめんどくさいじゃん。。
しかし、私の心配事は杞憂に終わる。ギガンテスは八神さんの指示に無反応を示す。
「なるほどな、どの程度かは分からないが香川さんに一部ダンジョンマスター権限が許可されてる感じかもね。」
「「なるほどぉ」」
年下ズと同じ動きで湧帆さんも納得する。やっぱりそうか、経営権ってどこまでの範囲なんだろう…
「まぁ、便利でいいわ。細かいことは後でにしましょう。ギガンテス、ゲレイロ持ち上げてみてどの高さまであげられる?」
ぐおぉぉぉ
いや、いちいち叫ばんでも…
すると、ギガンテスは主人であるゲレイロを丁寧に両手包むように持ち上げる。身長が5メートルほどあるギガンテスの目線の先位でゲレイロはつぶれた。
「痛い痛い!!死ぬでやんすつぶれるでやんす」
「ギガンテスおろして~」
があぁ
ギガンテスが今度は控えめに叫んで下ろす。主人を痛めつけて凹んでるのかしら?
「はぁ、死ぬかと思ったでやんす。」
「やっぱり上空はあんまり範囲が広くないわね。」
上空が制限無しだったら飛行機でビューンのつもりだったが、そこまでうまくはいかない。
「ということで平原に出て地上ルートで赤坂に合流しましょう。」
「まぁ歩くより車でダラダラ進む方がまだ早く移動できるだろう。」
そう、ダンジョンの引っ越しとは車や歩きの通常の移動をしながら【平地ダンジョン】を作ってその上を移動して進み続ける力技だ。どうせ、この拠点は破棄なので元のダンジョンを壊しながら新しく作ったダンジョン道を突き進むことで移動を可能にする。
ダンジョンコアさえあればどこでもダンジョンは生成できる。
普通のダンジョンマスターはそんな野ざらしな方法だと不安だろうから、引っ越しは出来ないと勝手に想像するだろう。しかし、私達が護衛として居れば移動は問題ない(はず)。
「ちなみに赤土直径5メートルってDMでどのくらい?」
「6くらいでやんすね。あっしも移動の方法が分かって来やした。ただ、これだとある一定を超えるとワンフロア増設が結構かかるでやんす。具体的なサイズまでは分からんでやんすが、ある一定を超えると必要DMが倍くらいになって、また倍にって感じで増えるでやんす。」
「ダンジョンの破棄はDMどの位かかるの?」
「フロアの建造と同じくらいでやんすね。」
すると5メートル進むのに12DMか。。
「そういえば最大で何メートルまで広さを一発で出せるの?」
「一本道で数百メートルは行けるでやんすね。ただ、距離に応じて時間はかかるでやんす。距離と時間が比例してるかはよく分からないでやんすが、たぶん横2メートルで全長20メートルが3秒くらいで建造出来るでやんす。」
流石は建築系の人間だ。いやモグラか?寸法の話とかになると調べないでも大体理解してるし話が早い。得意な分野ではやはり有能なのかな。
それでコストだが、一時間は3600秒で3秒を割って20メートルをかけると時速24キロか。一時間の消費は2000DMってところかな?八神さんと湧帆さんだけでも足りそうだな。残念だが今回はグローデンを始末してDMのストックにした方が良さそうだ。
「まぁ、時速20キロくらいか?馬車よりましだろう。」
「八神さん、ここから赤坂の本拠地ってどのくらいあるんですか?」
「正確には分からねぇけど、5000キロくらいかなぁ?赤坂の通常運行が30キロくらいで一週間だからな。まぁ寄り道したり止まったりしてるからなんとも言えないけど」
「すると、車だと2週間位ですか?」
「まぁ、休憩も必要だからもう少しかかるかもな。」
「義勇軍さんの本拠地は帝国でやんすよね?行商の頃の馬車だと1か月かかるでやんすよ。馬車の時速は15キロくらいでやんすかね。3週間は良い見積もりでやんすよ。」
ふむ、やっぱり3週間位は見積もるか。
「それよりゲレイロの魔力は12時間も連続で使い続けらるのか?」
「いやぁ。。やったことないでやんす。DMを使う時は建造とかを使うみたいに魔力の消費は感じないでやんすが。。。」
「まぁ、試してみましょう。とりあえず赤坂の拠点にゲレイロさんを匿うのがいまは一番理想的。そもそも、赤坂をダンジョン化すればそれだけでDM収益相当すごいでしょ?今は無理しても移動が大事よ。」
「たしかにな。」
八神さんの了解を得ることが出来たので事をすすめる。
「それじゃ、平原を車でレッツゴーよ」
「そうするかぁ」
「のんびりした旅は久しぶりだねぇ」
こうして、ダンジョンの引っ越しが始まる。
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