第27話 怪盗ねずみ小僧
こんにちわ。私は怪盗ねずみ小僧です。決して香川唯ではありません。
小心者の私は道すがら見つけたネズミの仮面をかぶり変装して格納庫に向かう。
これで、目撃者がいても「ネズミが盗んでいきました!」的なノリで答えてくれるに違いない。そう考えた私は奇妙な恰好で格納庫に急ぐ。
空調は行き届いてるのか適温なのにファンの音すらしない、防音設備が現代日本を超えている異世界チート物件の赤坂の廊下では私の足音だけが鳴り響く。目的の場所に付くと足を止め不気味なほどの静寂が私の心音を倍増させる。
こそ
扉から半分だけネズミ顔のぞかせ、先日矢倉を組み立てた格納庫を覗く。よし!ビンゴだ。私の想定していた通り矢倉は戦闘時のままスターゲイザーの隣に保管され解体作業は後回しにされている。
もしかしたら八神さんの指示で荷物番的な人がいるかとも思ったが無人だ。
「し、し、し、し、忍び足♪ 差し足 抜き足 しのびあし」
と私は謎の歌を口ずさみながら気分を高揚させ矢倉に忍び寄る。忍び足で
「おぁぁ!」
戦闘中は気づかなかったが(ダメ兵士)矢倉には各所に武器が配置されている。いざという時に補充できるように矢を筆頭に10か所以上は設置されている。
大き目に編み込まれた麻筒に見慣れた長槍が5本入っている。
「これは、いける!」
私の金策の第一歩は支給品をくすねることだ。
あれだよね?スーパーとかで小さいポリ袋をぐるぐる巻いて持って帰っちゃう感じだよね?モラルはともかく犯罪じゃないよね?と自分に言い聞かしギリギリの線で補充する。
「全部はさすがにまずいかなぁ。よし、2割回収!」
勝手に回収限度決めて作業に入る。次の設置場所に移動したとき、稲妻が走るような衝撃を受ける。
目新しい武器を見つけた拳銃だ。いや、ライフルかな?長めの銃身の先には刃物がついていて接近武器としても利用できそうな形状をしている。玉も結構な数が置いてあり半分くらいは持って行っても大丈夫そうだ。たぶん
私は、目の前の新しい兵器に使い方も分からないのに、心を揺さぶられ一丁拝借する。収納便利
そして、無我夢中で矢倉を上り作業を続けること15分経ち一通り作業を終えて、ほかに何かないか物色している時だった。
どごーーー
最近では聞きなれた、けたたましい音が鳴り響く。格納庫の扉が開く音だ。ヤバイ、誰か来てるのか?
そう思い格納庫を急いであたりを見渡すが誰もいない。
「ちがう!昂暉さん達が戻ってきた!?」
やばい、今矢倉の一番上だ。さいわい、格納庫の扉は開くのに少し時間がかかるし、ヘリはすぐには寄ってこないはず。ここにいては現行犯逮捕だ時間がない。そう判断した私は、矢倉に結んであるロープでレスキュー隊員顔負けのロープ降下を実践する。
「なせばなる!なにごとも~!」
私は、高所の恐怖を窃盗による恐怖で上書きして矢倉から降りると、ちょうど扉が全開しヘリが降下の準備を始める。
ヤバイここから出口まで距離がある、今から向かうとヘリから人影を確認されるかも!?どうする私?
迷路に迷い込んだ蟻のように、あっちだこっちだと頭を巡らし一つの答えにたどり着く。
「誤魔化す!」
そう私は決意してネズミ仮面を収納し、ヘリに向かって悠然と歩き出す。
「あれ~唯さん、もう起きて大丈夫?」
ヘリの扉が開くと、イオリさんの心配した声がいの一番に聞こえてくる。交渉に向かっていたメンバーがぞろぞろと降りてくる中で昂暉さんとイオリさんは私の方に向かってくる。
「はい!体調は万全です。皆さん、和平交渉お疲れ様です!大丈夫でしたか?」
まず、話題をそらす。
「いや、そんな一日で決まることじゃないよ。新渡戸達に残ってもらって俺たちは一旦もどって休息。というか、俺たち荒事起きないための護衛だから見守ってるだけでやることないんだよね。それより、どうしてここに?」
っち!誤魔化せないか。
「いや、なんか戦争した実感というか余韻というか、想いに耽ってしまって…散歩をしてたら矢倉が見えたから近くで見ようと。。。」
「そうよね。初めての戦いだもんね。」
私達の会話を、少し離れた場所で聞いていた女性陣の一部がうんうんと頷いてくれる。ナイス加勢!
「そうなんです、人を殺めた実感が恐ろしくて…」
「へぇ?まぁ普通はそうだよね。」
「普通は」ってなに?私は一般的な幼気な少女ですが!?
「私も人の子でしたね、戦争って怖いです。」
そう言いいながら、これ以上は聞くなよスマイルで昂暉さん見る。
「本当にすまなかったな。俺の考え足らずで死ぬ可能性があったんだ」
そういうと、昂暉さんは最敬礼に近い形で頭を下げる。そこまで、されると私の罪悪感がぁ!
「いえ、自分で決めたことですから。」
こういう時は軽く受け流す。
「そうか、ありがとう。そうだ、少し話が聞きたいから一時間後くらいに俺の部屋に来てくれないか?」
よし、乗り切った!話題が変わりました!
「もちろんです、私もお話ししたいことがありましたので!」
「私も参加するわよ?」
「もちろん構わないよ。というか首脳陣は全員参加ね。」
「了解!」
遠くで荷下ろししていた我妻さんから声が上がると、出口の方から人影が見えた。
八神さんだ。
「お疲れさまー!」
「おっ八神、留守番ご苦労!」
「なんで、俺が留守番なんですか?」
「特に意味ないよ」
「また、そんなこと言って」
「あ、八神も一時間後に俺の部屋来てね。」
「なんですか?」
「香川さんの話を八神にもしておこうと思ってね。」
昂暉さんはそういうと、顎を振り私を指す。
「あれ、香川さん何でここにいるの?」
蒸し返すんじゃねぇ~!!
このあと、顔を引きつらせながら同じ説明をしたのは言うまでもない。
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