第23話 決戦!巨人族と時空魔法

「我妻さん!赤坂から入電、短距離ミサイルの準備ができました!どうしますか?」


「三留、返信!状況報告後、発射体制維持のまま待機」


「了解」


「我妻さん。」


八神さんが怖い顔で我妻さんを睨んでる。


「すまん、すまん。大事な事を伝え忘れてた。香川さんをうまく使えって昂暉から」


「遅いですよ!それで、新人隊を俺のとこに預けたんですね。砲撃訓練はまだだから俺に打たせるために。」


「はい、おっしゃる通りで」


「ていうか何一人で突っ込んでるんですか!普通にこっちの手が先でしょうがjsふぇおf@!!」


戦況が落ち着き説教を始める八神さんに我妻さんが平謝りしてるが、私も確認の報告を八神さんにしていなかったので無言を貫く。だって、急に登場した方がかっこよくない?


「香川さん戦力を把握したいからスキルと持っているものをもう一度正確に教えて、我妻さんから適当に教えてもらっただけだから!あと、こういうのは最初に班責任者には報告するように!」


「いえっさ!」


普通に怒られたので、照れ隠しに敬礼する。戦力の説明をしていると目視で監視していた村上君から声が上がる。


「目標に動きあり!撃墜した魔導兵器から。。。。でかい人?が三人います。」


「何言ってだ?」


そう我妻さんが叱責すると持ち場に戻る。


「ありゃ巨人族かぁ、矢倉落としに本気だな。」


「よし、わかった。香川さん俺たちも戻ろうさっそく、砲撃が必要かもしれないし。」


そして、魔導兵器に隠れてたのか5mくらいのサイズの人が瓦礫を押しのけ出てきた。追撃用の隠し玉なのだろう。負傷しているようで回復の光が三人を覆っている。


「どうします?今なら撤退もスムーズですよ?」


「逃げてミサイルを撃つか?もし空いたスペースにヴィルヘルム本体が突っ込んだらゼノグランつぶれるよね?」


「まぁ、でも交戦は気づいてるでしょうから、うちが撤退したら一緒に逃げるんじゃありません?」


「ん~新渡戸がいないと意思の疎通ができなくて厳しいね。まさか、ここが激戦区になるとは」


「昂暉さんたちは予想してたのでは?可能性は低そうだって言ってたけど。」


「まぁ他所から見たら、現状はカールトンの暴走だからね。」


「はい、質問です!」


私が横やりを入れたので、目をパチクリさせる我妻さん


「どうぞ」


「和平交渉前にこんな本格的に交戦したらヴィルヘルムもまずくないんですか?」


「まぁ、普通に考えたらまずいよね。でも、カールトンってのは執念と狂気の将と知れている。だから、今回も単独行動での規律違反としてカールトンを罰せればヴィルヘルム側は面目が保てる。そう考えてるのでは?」


我妻さんの代わりに八神さんが答える。


「ありえるね、今回はヴィルヘルムに大義名分あるしなぁ。」


「執念と狂気。。。」


「そう、もう10年はカールトンと戦争を繰り返してる。あいつ腕無かったろ?あれ、イオリさんが焼きちぎったんだ。で、うちの唯一の戦死者3名はその時にカールトンに殺された。まぁ浅からぬ因縁があるよ。最近はちょっと大人しいとは思ってたんだが。」


我妻さんが、さらっと衝撃的な過去をかたり、八神さんが補足する。


「片腕を取られた恨みを晴らすべく義勇軍に執着する将として私怨で動いたとも見れるかな。まぁ、実際カールトンは浅はかでもないけどね。たぶん戦略だよ。深淵のラピス・グライズね。会ったことないけど冷酷な宰相だって噂だ。カールトンも自分の名誉にこだわるより、唯一大敗を期した義勇軍への勝利にこだわってるみたいだし。」


「さぁ、雑談は置いといて巨人さんも立ち上がったみたいだ。こっちも動くとしよう」


そう言うと我妻さんが動き出す。


「一体は俺が受け持つ!遠距離部隊は左端を集中攻撃!八神は、香川さんの貴重な物理を状況に応じて利用して!判断は任せる。」


「もう一体はどうします?撤退のが確実では?」


「いや、東隊に足止めさせる。俺が1分で一体目を潰せれば何とかなる。」


「撤退の判断は八神!最悪俺は無視して東隊が後退できればミサイルを撃ち込め、東には深く入りすぎないように指示する。」


「やはり撤退は最終手段ですか。。。」


「すまんな、今回はここが正念場だ…あと10分膠着が続いた場合も撤退を開始しろ」


「「了解!!」」


「よし!出るぞ」


そういうと、我妻さんはまた戦場に飛び込む。


「我妻さんも突っ込んでますね。」


「まぁ、いつもは昂暉さんの役さ。本人は昂暉さんと同じで突っ込む方が好きみたいだけど。」


「香川さん状況を説明するね。」


「お願いします」


「おそらく肝になるのは東隊の戦場。遠距離部隊は膠着するし、我妻さんは絶対に勝つ。だから、大事なのは我妻さんの殲滅スピードと、それまで東隊の防衛だね。それに魔物歩兵も半数以下になってるけど、どうせ後ろから補充される。どんどん矢倉に接近を試見るだろうから多少の白兵戦も覚悟してね。」


「弾幕ないのに大丈夫なんですか?」


「矢倉の付近には地雷原がある。接近もそう簡単ではないよ。」


なるほど、トラップがあるから前のめりの作戦なんだ。


「あと、三石さん大丈夫?」


「は、はい。」


唇が真っ青で体は震えてるのはわかるが返事はしっかりとしてる。


「大変申し訳ないけど、東隊のフォローにあなたの力は絶対必要になります。相手巨人を巻き込んで良いから戦場が崩れないように回復をお願いできる?」


「任せてください!」


強い子だ。怖くて声も体も震えてるが自分の役目を受け入れている。


「木梨君、ちゃんと支えてあげてね。」


私はそっと木梨君にささやく。


「え?・・ハイ」


そういうと、青白かった木梨君の顔に血色が宿る。あら男の子。私は八神さんと【ひまわり】に乗り準備する。


「東隊が巨人と接敵!最初の突進で3名飛ばされてます。」


双眼鏡を使い、八神さんのフォローをする村上君から報告。


「三石さん、お願いします!」


「はい!」


そういうと、東隊の戦場エリア全体に光が上り敵味方関係なく倒れてたものが立ち上がる。


「よしいいぞ!」


「あと何回くらい行けそう?」


「わかりません!でも何度でもやってみせます!」


そういうと、魔法ポーションをあおり息を吐く。マジ琴音ちゃんかっけ~。私が気をそらしていると爆発音が鳴り響く、近くの地雷原が発動してそのあたりが一掃される。


「八神さん!遠距離部隊の一部を歩兵殲滅に戻します!こっちの巨人の援護を!」


「了解!」


そういうと、自分を支えていた巨大兵器ひまわりがぐるっと旋回して振り落とされそうになる。


「香川さん!」


止まる反動で落ちそうになるが、ぐっとこらえ槍を発射する。巨人の足に命中して進行が止まる。即座に巨人に回復の光が纏う。


「もう一発行くよ!」


「了解!」


二発目は左肩を貫通し腕がもげるように落ちる。


「がXaxaxax!!!」


さすが、痛いのか遠くに悲鳴が上がる。よしこれで、時間は稼げる。


「とどめは?」


「いや、本当は今ので刺したかったけど玉を節約したい。」


東隊の周辺ではもう何度目かのエリアヒールが発生する。戦闘が開始してすでに5分は経っている。体を自分で支えることができずに柵に手をつくようバランスをとる琴音ちゃん。しかし、その眼光は自分の担当エリアで【一人も】死人を出さないと強い意志が感じられる。その時、吉報が上がる。


「八神さん!我妻さんの巨人が倒れました!」


「よし、三石さんあと少しだ!」


その掛け声とともに視線を琴音ちゃんに向ける。すると、柵の上に見たことのない黒い装束が上半身をのぞかせていた。たぶん、矢倉を上ってきたのだろう。


「貴様か!」


「バニシエス!?」


八神さんの叫び声と共に琴音ちゃんの目の前の空間がゆがみ、吸い込まれそうになる。


「うおぉ!」


その時、そばについていた木梨君が琴音ちゃんを術の効果範囲から、かなり後方に放り投げ、その反動で自分が空間の歪みに飲まれる!


「くそぉ、ゲートかぁ!!」


そういうと、八神さんが背に持っていた弓でバニシエスと呼んだ黒装束を狙う。普通の弓では考えられないスピードで柵から飛び降りた黒装束の足を穿つ。


それでも黒装束が琴音ちゃんの方へ足を引きずりながら駆け寄るが、八神さんは当然それを許さない。その二射目に合わせて私も槍を投擲する、槍は矢を避けてバランスを崩した黒装束の腹に刺さり押し倒す。さらに、八神さんが接近しながら弓を射抜きつつ黒装束に接近する。


「くそ、あと少し!」


黒装束はそう漏らすと、ゲートを発生させるが距離が遠く琴音ちゃんを捉えられない


わたしは、八神さんに黒装束を任せ、琴音ちゃんの確保に動く。


「大丈夫?琴音ちゃん?」


「木梨さんが木梨さんが!!」


木梨君が琴音ちゃんをかばってどこかへ飛ばされてしまったことに強く動揺し、泣きじゃくる。


「村上!」


八神さんの声が上がる


「はい!ゲート確認!東隊の前方の敵陣奥深くにゲートを確認」


私は琴音ちゃんを連れて、柵に近づき光の場所を確認する。


「くそ、間に合えよ!三留!東隊通電、巨人を無視して奥の木梨君救出優先!我妻さんにも報告!」


「了解!バニシエスは!?」


「死亡確認」


「了解!」


恐らく、エリアヒールがこの戦局を左右していると判断した敵兵が突っ込んできたんだろう。それはわかる。だが、ゲート持ちは貴重だと聞いていた。おそらくは替えの利かないほどの人物で予想できなかった?


今は死んでるならどうでもいい、木梨君を助けないといけない、このままでは確実に殺される。


だが私は直感していた。目の前で起きたゲートを見て私はそれが理解できたのである。私にもできると。村上さんが報告した方向をみて光の残滓を確認する。私は木梨君を助けたい。あそこに行きたい!


「八神さん!私が追います!」


私はそう一方的に告げると、木梨君を連れ去ったゲートの残滓に触れた。




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