第13話 パーティーのリーダー?なにそれおいしいの?
異世界に来て一か月もしないうちに戦争に参加することになり、悲劇のヒロインを気取りたいが(私悪くないし!伝達ミスだし)それどころではない。
今回だけの出兵拒否権を与えられたが、そんな特別待遇を使えば白い目に晒されるのが日本国民の性だ。そもそも、年下同期ズが参加するのに「自分はちょっと」なんて言えるはずがない。
とはいえ「かくなる上は、特訓に特訓を重ね戦争を乗り切るしかない!」なんて、普通の日本人ならば「馬鹿なの?」と思う精神状態だった。
多分、ゴブリンを倒し続けたことによる妙な自信がついてきているのだろうか、そんなこんなで意外とすんなりと参加を受け入れた。これは、危険な状態なのかと自分の頭の中をよぎるがそれを無視する。
しかも、今回の義勇軍の役回りはとても難しい。簡単に説明すると、天人が納める聖パルノガス神国と魔族納めるヴィルヘルム魔導国の国家レベルのケンカなのだ。この2種族はGF(グランフロント以下略)では同じ人種とされているが特に仲が悪い。魔族というと悪役のイメージだが、普通に文化を形成する国家を納める種族だ。今回は聖パルノガス神国側がヴィルヘルム魔導国に無茶苦茶な経済支援要請(寄付?)を続けたのが事の発端らしく。。軍事的に最強に近いヴィルヘルム魔導国は体裁のため、ずっと我慢してきた聖パルノガス神国側の対応にとうとうブチギレて報復戦を始めた。
しかし、このまま戦火が拡大するのは諸外国も困るので代表としてゼノグラン帝国から、「天人側が悪かったので、ここら辺で手打ちにしない?パルノガスにはこっちから抗議しとくよ!」とヴィルヘルムに交渉を持ち掛けに行くのだ。
しかも、パルノガスが完全に悪いのは分かっているので、ヴィルヘルムに「味方ですよー」とアピールしながら交渉する必要があるらしい。
なので、ゼノグランとしてはパルノガスと交戦するふりをしながら双方との交渉をする必要があり、結果どっちの国家とも一悶着ありそうなのが今回の戦争の概要らしい。
とまぁ、私が聞いた1時間の説明をかいつまんでも、まったく理解が追いつかず、詳細については「私一兵卒だからわかりません!」と知らぬ存ぜぬを通すつもりだ。
まぁ、戦闘行為が大なり小なり行われるのは間違いないようだ。
戦争について思いを巡らしていると、あっというまに目的地に着いた。場所は、いつものゴブリンの森(私が命名)の奥にある一個の洞窟である。
「ここがダンジョンですか?」
「いや、ここはゴブリンの巣ね」
私たち新人トリオにイオリさんを入れたパーティーで軍事訓練としてダンジョン攻略に来ている。
なんでも、ほかのメンバーはこれから本格的に戦争の準備は入るそうで忙しいそうだ。猫の手も借りたい忙しさだが、新人は戦闘経験が重要らしく(主にメンタル的に)開戦直前まで訓練に充てる事になった。どうせ、準備手伝うにしても猫の手だしね。
それにしても、イオリさんは準備しなくていいのだろうか?
「ゴブリン、嫌いです」
琴音ちゃんが純朴な目で険悪な視線を洞穴に向ける。なぜか、そに視線に惹かれるのが不思議だ。
「まぁ、誰も好きじゃないんだけどね。この先にあるダンジョンを攻略中に、この巣のゴブリン集団に後ろ取られると危ないから念のため落としておけって昂暉が言うから…私が外から燃やしてもいいんだけど訓練に丁度いいのは間違いないしね。」
そういわれると、不平不満もいえず中に入っていく一行。陣形は私、木梨君、三石さん、イオリさん
…
イオリさんの火魔法でしっかりと視界を確保できる光源を用意する。それでも、道先は薄暗く不安な気持ちがお尻のあたりに疼く。そして、私は洞窟にはいり300メートルで重大なことに気づく。
「私が前衛ですか!?」
気づくのが遅い。
「え?いや、パーティメンバー的には前衛なんだけど。。どうしましょう?」
と困った顔で私の顔を見るイオリさん。少しわたわたする木梨君
「一応、木梨君はスピード型の短剣装備でユニークスキル的にも中衛アタッカー向きだから。。まぁ、ゴブリンぐらいなら木梨君も前衛できるかしら?」
と女性に気を使い木梨君にプレッシャーかける上司。
「あの!ユニークスキルですか?」
いきなり、論点を逸らす私
「あ、そうようね。そもそも唯さんだけ二人のスキル知らないわよね?」
私だけ軍からハブられてるのでしょうか?そのことに、少し驚いた顔をする三石さん。いい?可愛いがってもらえるのは十台までよ?
「えっと、木梨君のユニークは性質上あんまり他人に言うべきではないけど、これから長くパーティー組むから教えていいわよね?」
「もちろんです!香川さんはうちらのリーダーですから!」
うそ~ん
この小僧!?なにをいってるの?
「あら、そんなこともう決めてたの?」
「いえ、初耳ですが…」
「あれ、こういうのって年上の方がリーダーの方がよいのじゃ?幹部の方々とも仲がいいので、てっきりそういうもんだと…」
てっきりじゃねぇよ。こいつなんちゃって体育会系だな?ぶっ飛ばすぞ?
「でも、そうね。。。方針を決めるリーダーは居た方がいいし、このパーティのリーダーは香川さんにおねがいしてもいいかな」
「は、はい。。」
断れる要素が見当たらない。根拠はないけど、木梨君に任せたら全滅しそうだしね。
「じゃ、続けるね。木梨君のユニークは【リアルミラージュ(実体ある蜃気楼)】っていう能力で幻惑系のスキルなの」
「へえ、かっこいい」
名前がな!?木梨君の顔が真っ赤に燃えていますよ?こいつおちょくりがいがあるな?
「まだ、使いこなせてないけど幻惑魔法って普通実態がないんだけど、それに実像を持たせることができるの。要は分身ね。」
「それってかなり便利なんじゃ?」
「そうねアタッカーはもちろん壁にサポート、なんなら諜報まで、かなりの場面で有効になるかも綾香は「部下に欲しい」ってすでに昂暉に申請してるみたい」
お、おい。この小僧エリートコースかよ…
「まぁまだうまくできなくて、斬撃とか体の一部しかリアルにできないから個人バフにしか使えないですが。。頑張ります」
「じゃ、召喚系と違って、自分の意志で動かす系ってことですね。」
「え?そ、そうね。多分。。。」
あれ、イオリさん?
「どういうことですか、唯さん?」
私って、下の名前呼びが定着してるのか…
「えぇと、自分の意志で自立行動するってことは戦闘中なんかは、単純に手数が増えるってことだよね?だけど、分身はあくまで木梨君の制御下にあるから、数が増えても制御負担が増えるってことでしょ?分身って普通に考えると制御が難しいってのが一番のデメリットなわけで。。集中力が散漫になって本人がミスってたら意味がないわけだし、特性を理解しないと集団戦闘は難しいのよ。」
「「「な、なるほど」」」
あれれ?イオリさん?
「木梨君ってゲームはするの?」
「いや、自分は格ゲーとかスポーツ系とかっすね。RPGは全くです。」
「私も、あんまり知らないです。」
「まぁ、どっちにしても唯さんがリーダーに適任ね。」
そういうもんかな?ライトユーザーの知識だぞ?
イオリさんが気まずそうな顔を振り払い、話題を変える。
「で、琴音ちゃんのユニークスキルだけど。なんと組織待望の広範囲エリアヒール持ちです!超将来有望の子です。」
まさかの、こっちもエリート!?
じゃ、私も琴音ちゃんって呼んじゃうよ!?その方が可愛いから!
「スキル名は【ビジョンエフェクト(視界の理)】効果は目で見える範囲すべてを魔法の効果範囲に指定できるの!」
へぇ、そのスキルヤバくない?
「条件は結構厳しいけど、エリアヒールってすごい希少でパルノガスでは大司祭級しか使えない上級魔法なの義勇軍では一人も使えないわ。まぁ、回復が希少なんだけどね。」
「ただ、琴音ちゃんの素質上攻撃力が弱くって、まだ自衛が不安なの。スキル的には回復と強化しか使えないのよ。」
「火魔法も使えないんですか?」
「そうなのよ。水は適正低いけど何とか獲得できる見たいで。。あ、でも、攻撃魔法は一切できないっていうのがユニークスキルの制限になりそうみたい。水魔法が取得できるのは治癒系の魔法があるからかしらね」
「そんなことまでわかるんですか!?」
「いや、時と場合によるのかな?この子に関しては綾香と我妻君がスキル検証したみたいだから」
マジかよ、私のユニークスキルも探してください。
「その節はお世話になりました。一応ちゃんと見える範囲内できちんと認識できれば効果対象も調整できます。いまは、水の魔法と棍棒のスキルを取得できるようにがんばってます。一応強化魔法で肉体強化ができるので、ゴブリンも2匹止め刺しました。」
なるほどなぁ、極振りヒーラーでレベリングできないとなると強化には時間がかかりそうだな。まぁ、レベルアップ方式じゃないから、そのままヒール特化でもいいのかもね。
「まぁ、二人はそんな感じなの。唯さんは中衛寄りだけど一応前衛適性だって昂暉も言っていたし。」
「あの!唯さんはどんな職業なんですか?槍使いとは聞いてますが?」
…
「荷物持ち」
「え?」
「サポーターっていう荷物持ち」
つらい
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます