第14話 ゴブリンナイトをやっつけろ

「あの、でも槍はどちらにあるんですか?」


「え?あ、そうね。これも見せとくね」


私はそういうと中空から槍を出して手に取る


「えぇ!!何ですかそれ?めっちゃ、かこいいじゃないっすか?」


ふふふ、唯一の特技よ!?


「これは、収納ってスキルで道具の出し入れができるの。まぁ、容量は有限なんだけどね。だから、あたしの適性職サポーターだって…さっき我妻さんに鑑定してもらってやっぱりサポーター…」


ふふふ 現実がつらい


「まぁ、まぁサポーターが戦えないってわけじゃないないから、とりあえずさっきの陣形でいいかしら?」


「わかりました。。」


優秀な二人の年下ズに心を折られ、幻惑魔法出来るなら木梨君が前衛で的になって、私がとどめ指す方がセオリーじゃないのかな?という疑問を口に出せず。イオリさんの言い分通り、諦めて前衛のまま洞窟を奥に進んで行く。


サポーターのどこに前衛適性があるのだよ!?


「でも、収納のレベル2になったのね?」


「あ!そうなんですよ。昨日の準備日に櫻井さん所へいって、色々相談してたらレベル上がったんで結構収納力上がったんです」


「そうんなんだ、唯ちゃん大きいもんね!羨ましいわ。」


お?でかい違うぞ?適性があるだけだよ?


「いや大体体のサイズくらいって昂暉さんは言ってましたが、私やっぱり適正あるみたいでサイズは半畳くらいで高さが身長くらいですかね。普通より広めです。」


やっぱり、体の大きさ関係あるじゃんって意見は受け入れませんので悪しからず。


「ほかにもスキル獲得したんで、変異種とかも何とかなると思いますよ!」


「そうなの?さすがね、期待してるわ。」


と優しい笑みを浮かべるイオリさん、「ヤバくなったらすぐ泣きつきますので助けてくださいね」と心の中で返事する。


がぁ ゴブ


そう思った瞬間右上にあった抜け穴からゴブリンが飛びかかってきた。とっさのことでイオリさんの対応が遅れる


「っく」


しかし、私は飲み会の席で【ダンジョンあるある】あてクイズを2~3時間ほど昂暉さんと櫻井さんとやっていため、この罠を想定していた。


持っていた槍とは別に、中空に出した槍がゴブリンの前に現れ、飛び込んだ自重を止めることができずに腹に刺さり、さらに槍のお尻が地面に着いたタイミングで槍が貫通する。


ある程度予期していた私は半歩下がって回避し、そのまま前蹴りでゴブリンごと槍を倒す。


痛みでもがくゴブリンを何事もなかったように持っていた槍で首を落とし、さらにその返しで耳を落とす。


槍で耳を刺して間接接触した状態で収納。

最後は200回は経験した首落としの流れ作業に、新しく編み出したかっこいい収納法のお披露目した。


「まぁ、ゴブリンよ。不意を衝くなら背後から飛びかかるといいぜ。」


私はそう言い残し、ゴブリンの屍を超えて先に進む。


「ちょっと、待ちなさい!!」


「あれ、なんでしょう?」

なにかまずった?


「なによ、その熟練戦士みたい置き台詞!しかも、ゴブリン相手に!?いや、それはいいのだけど気づいてたの?」


「いいえ、ああいった罠があるって飲み会の時に昂暉さんに聞いていたので注意していただけですよ。」


「そ、そう。」


なにその、「忘れてました」みたいな顔?うすうす感じてたけどイオリさんんって…もしかして、うっかりお馬鹿さんなのかな?一気にイオリさんの可愛い度合いが上昇したわ。


「えぇっと。まぁ、何があるかわからないから隊列広げないようにね」


確かに。セリフ言うのに必死だった。


「おねぇさま。。」

「マジかっこいいっす!」


琴音ちゃんの漏らしたワードは木梨君の声に潰されて聞こえなかったことにして、意気揚々と先に進む。


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それから15分ほど洞窟の先に進んだが、集団ゴブリンには出会えず単発のゴブリンの止めを琴音ちゃんに任せながら進んで行く


とうとう、三匹のゴブリンが出てきたが、木梨君と瞬殺する。その時に、あることに気づく。


「そうか。」


「ん?どうしました。唯さん」


私はゴブリンの耳を回収しながら、離れた位置にいる琴音ちゃんとイオリさんを見る


「木梨君、しばらく幻惑分身で戦える?」

「え?何でですか。」


「今は、うまく扱えないからしょうがないと思うけど、私たちパーティーで人の入れ替わりはあるかもだけど多分3人は固定じゃない?」


「そうかもですね」


琴音ちゃんとイオリさんがこちらに近づいてきて話を聞きだした。


「今はイオリさんがいるけど、3人で戦うパターンが多くなると思うの。そうなったときに、琴音ちゃんがあまりにも危険な位置にいるなと思って」


よし、自然と下の名前で呼んだぞ!?もう変えないよ?


「確かに、今はイオリさんに守ってもらって頂いてますもんね」


「そうなのよ、本来なら琴音ちゃんと木梨君はツーマンセルでセットで行動して、私が敵を押し込んで木梨君の分身で倒す。漏れたりバックアタックがあった場合は木梨君が本体で応戦かな。少し不意打たれてケガしても、琴音んちゃんいるからすぐ回復できるし、うちらのパーティーの肝は琴音ちゃんの防衛だと思うのよ。」


「確かにそうですね」


「そう、だから理想は分身が木梨君と同等の戦闘力で私のフォローができる様にならないとパーティとして形ができないと思うの。」


「わかりました!じゃ、分身でやってみます。」


「ありがとう」


「すみません、なんか手間かけさせてしまって…」


「いやいや、ヒーラーがいるパーティーでは当たり前だからね。それに、琴音ちゃんがいるから気が楽に戦闘できるんだよ?」


そういうと、琴音ちゃんは嬉しいそうに頷いた。まじ、天使!


たぶん、イオリさんの陣形指示は昂輝さんあたりの入れ知恵だろうか。私が中衛だと琴音ちゃんのフォローができないから中衛は木梨君なんだな。理解してましたか、イオリさん!?


「…」


「どうしました、イオリさん。」


何ですか、その裏切られたみたいな顔


「ゆ、唯さんって頭いいのね?」


「そうですかね?普通くらいですが。」


あまり謙遜すると嫌味になるので、適度にいいことをアピールする。いや、勉強は嫌いなだけで普通にはできますよ?イオリさんと一緒にしないでくださいね。


そんな話していると、とうとう奥から五人組のパーティータイプのゴブリンがやってきた。弓を持った個体と剣を持った個体がいる。


即座に、戦闘態勢に入る私。イオリさんは私の発言に衝撃を受け呆然としている。いや、戦闘入りますから真剣にやってくださいよ。


「木梨君はアローあてた相手を倒してね」


「わかりました!」


複雑な戦術はできないので、事前に作った決まり事を確認する。

私のファイヤーアローでひるんだ相手を木梨君が殲滅。他の個体を私が引き付け時間稼ぎ、琴音ちゃんが状況確認の指示と警戒、回復を担当する。

といった簡単なものだ。


そして、私が突進すると向こうも一体のゴブリンが突出してくる。


馬鹿だな。わざとなのに


私は走った勢いのままファイヤーアローを先頭のゴブリンに投げつける。練習してわかったが、命中率は集中力とイメージの問題なので、やり投げの要領で勢いつけて投げつけた方が強い魔法になることが分かった。多分、私だけだが。。


腹に直撃して燃えるゴブリンがゴブゴブ言いながら前に倒れる。その個体を無視して、私は他の四体のもとへ一気に駆け寄る。剣を持ったゴブリンナイト(命名)が私に応戦しようと出てきてゴブリンアーチャー(命名)も矢を射ってきた。


丁度、矢とゴブナイトが接近する瞬間に収納から取り出したベニヤ板を自分の目の前に出す。矢はベニヤに刺さり、突然視界が無くなったゴブリンも驚いて板に衝突して動きを止める。


背後では、ゴブリンの断末魔と琴音ちゃんの「一匹撃破」の報告を耳で受けつつ、板の死角から飛び出し雑魚ゴブの首元を槍で一突きする。抜いてる時間がないので槍ごとゴブリン蹴っ飛ばして無効化した後、こっちに向き直り矢を射ろうとしているアーチャーゴブに召喚した槍を投擲する。肩口を深めに削りバランスを崩したアチャゴブに、続いて放ったファイヤーアローが顔面に当たる。


次のターゲットを予想していたらしく、タイミングよく木梨君がそのアーチャーゴブを瞬殺したあと、近くの雑魚ゴブと交戦を始める。


向き直ったゴブナイトに対して新しく召喚した槍で突撃をかける。槍を避けようと右にかわすが、それを許さず方向調整した私の槍がゴブナイトの左腕を捉える。片腕を不能にされバランスを崩したゴブナイトは、雑魚ゴブを倒した木梨君の加勢よって間もなく絶命させられた。


すると、目の前の木梨君がすっと消える


「あれ、分身?」


「唯さん、うまくできました!」


そういうと、離れたところでイオリさん、木梨君、琴音ちゃんが並んでこちらに手を振っている。



ふふ


自分で提案した事だが生身で危険を晒しているのが自分だけなことに自嘲する


私、サポーターだからね!!

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