第8話 チートの道も一歩から
「では、実際にモンスターと対峙してみましょう」
即実践ですね
「まず、火魔法、早いうちにlvを2にあげましょう!
覚えが悪そうだけど、できれば今日中に上げた方がよいと思うわ。理由を今から見せるから」
そういうと、あらかじめ仕込んでいたように
木の間からゴブリンが現れた。
なぜ、ゴブリンと分かったかというと
ゴブゴブ言ってるからだ。
きもい
「あれは、ゴブリンという初級モンスターね。
交戦的で人間を見ればとりあえず襲ってくるわ。」
そういうと、むやみ突進してくる生物に向かってイオリさんが手を向ける
「ファイヤーアロー」
一言、呪文名を唱えると炎の矢がゴブリンを貫通し、そのままこと切れた。
モンスターとはいえ、はじめてに近い生物の焼死に吐き気がする。焼けた肉の匂いは、とても食事をする気分になれるものではなかった。
腐臭
それが適切な表現かはわからないが
焦げ付くゴブリンから感じるものを不快感のみだ。
「これが、lv2にすると使えるようになる火矢の魔法。魔法名は実は何でもいいの集中さえできてれば無詠唱でもできるし、人によっては呪文をつけることで威力を強くすることもできるの。結局のところ、この世界の魔法で一番重要なのはイメージってことね。最初は一撃で倒せないと思うけど、撹乱には最適だから」
ゴブリンの死と匂い動揺を隠せないでいた私だがこう考えた。
呪文を唱える。
それが、ロマンだろ?
「あ、そういえば武器…何か希望ある?おすすめ軽いショートソードとかだけど。。
接敵するから、最初は怖いかも。」
武器か…魔法少女になるつもりだったが、どうやら火の魔法は才能無し。他に才能ある魔法があるかもしれないが、こればっかりは取得してみないとわからないとのこと。
「武器にも、もちろん適性があるんですよね?」
「そうね、女ん子は結局いろいろ試さず遠距離の武器を選ぶ子が多いけどね。」
弓・銃・投擲ナイフなどこの辺が遠距離武器か。確かにナイフなんかの刃渡りの短い武器は恐怖心がある。
イオリさん曰く、どうせ遠距離攻撃は魔法が中心になるから近接で守れる武器の方が後々良いと思うとのことだ。
ただ、さっき見たゴブリンの死の光景を思い出すと、とてもショートソードで切りつける気にはなれない。
…
「槍ってありますか?」
「槍?まぁあるにはあるわよ。」
もちろん、イオリさんが懸念していることはわかる。得物は長いが重いし取り回しが難しい。突くといっても力もいるだろう。集団戦闘ならまだしも、
個人戦を想定している武器としては少し扱いづらいだろうか。初心者的にはそう思った。
ただ私は、【イメージが重要】だという言葉を大事にしていきたいとも考えた。もし魔法少女になれないなら、次にイメージする戦闘職はヴァルキリーだ。
軽装の鎧に重盾と槍というよりはランスを使った戦術。身軽に動いて切るよりも、突撃の方がよほどイメージのできる攻撃だった。
「え~と、いまはこんなのしかないけど」
渡された槍は鉄かアルミ?のような明るい銀色の素材で私の身長ほどもある長い槍だった。穂先には飾りつけのないシンプルな矢じりのような刃で棒部分には綺麗な唐草模様が施されていた。
「あの、なんか高そうですね」
「まぁ、安くなないけどね!使い憎いかもだけど...大丈夫よ、とりあえず貸してあげる。」
そう言って渡された槍は、想像をはるかに超える重さで私が持って突くにはギリギリのサイズだった。
「結構重いですね。。。」
「そうね。。でもそれがイメージできるなら、すぐにスキルもとれるかも?スキルを取ると、ずっと簡単に保持できるようになるわ。唯さんは大きいし、なんとなるかも」
大きいだと…コンプレックス
ゴブゴブ
そんなことを言っているうちに
2体のゴブリンが木の陰から登場した。
なんで、こんなに急にゴブリンが湧いてくるのだろう、さっきは余裕でご飯食べてたのに…
「あら、二体も来たのね。はい」
そう掛け声を挙げると一体のゴブリンが燃え上がった。
燃えた仲間を見て逆上したのか、ゴブリンが叫びながらまっすぐこっちへ走ってくる。
叫び声はゴブゴブゥだ。
「もう一匹は槍で刺してみて!できる?」
ヤバイ
肯定も、否定もできず目がゴブリンに釘付けになる
恐らく安全だろう。圧倒的な強者が二人も背を守ってくれる。
だが心の準備もそこそこで、いきなりの実践に手の震えが止まらない。
私は走ってくるゴブリンに対して動けない。
ただ、向かってくる奴に槍を向け、にらみつけるのが精いっぱいだった。
がっ
低能なゴブリンもさすがに止まった得物は無視して横をすり抜けようとする。
慌てて反対側に逃げようと体を捻ると焦ってこけた拍子に槍の穂先がゴブリンの足をかすめた。驚くほど簡単に槍先が肉をえぐり、嫌な感触と共に腐臭が立ち込める。これはゴブリンの血の匂いなのか?
足を怪我したゴブリンが体勢を変えようとした拍子に痛みで動きを止める。
私はこけたことで、緊張からの硬直からは解放されていた。即座立った私は迷わず、槍を持って突く。
こけた時に槍を離さなかったこととリーチが長いことが功を奏した。何とか届いた槍がゴブリンの肩口を押して転倒させる。
「まだよ!きちんと止めさして」
イオリから無慈悲の声がする。
ただ、もう無我夢中にゴブリンに向かって何度も突いた。うまく刺さるときもあれば殴打に近い感触もあった、槍の名手は急所を一突きにすると漫画で読んだことがあるが、そんなの無理だ。ただひたすらにミンチになるまで槍を突き続けた。
この時には鼻は馬鹿になり腐臭も気にせず、返り血にも気に留めず、私は突きの運動をするだけの生物になっていた。
私が落ち着いたのは、槍のスキルを獲得した感触が体を駆け巡った時だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます