第5話 トカゲさん、ありがとう
「なんで、昂暉も付いてくるのよ?」
「いやぁ、香川さんのことが気になってね」
「ごめんなさい。私、年上は十歳上までって決めているのでノーセンキューです」
「なんか、フラれた!?セクハラ上司みたいな扱いやめてよ!」
ふふ、たたけば響く面白いおじさんではあるな。赤髪ロン毛だけど。
さすがに上半身は着いて、軍服を着るかと思えば白に金糸で刺繍された、かっちりとした着流しををきている。
「なんで軍服じゃないんですか」
「うむ、イメージとしては和の軍礼服だな。戦闘中はまた違うさ」
きもーい
「あぁ、変人なんでしたね。」
「どうして、そうな辛辣なの?前世で何かあった?」
「運命的に拒絶を感じるので、そうかもしれません」
「とりつく島もないな。。」
「あなたたち仲がいいわね?」
「「嫉妬?」」
ハモってしまうだと…ぐ、これも奴のペースだというのか
一人で愚問の表情を浮かべていると。
「はぁ。ついたわよ」
目的地に着いたらしい。
…
「え?なにこれ…」
目の前には、星をまたにかけ戦争する映画に出てきそうな飛行機とトカゲ人間。。
随分と異世界に慣れてきたつもりでいましたが、気のせいでした。慣れたのは、変人にでした。。
「お、肝っ玉女か。」
「しゃべるの!?」
「あら、レオンここにいたの?湧帆は?」
「あぁ、湧帆は帰還探索に、俺の指示で行ってもらった。」
「あ、そうだったの?レオンは?」
「俺様はスターゲイザーの研究だな。こいつの早さを理解すれば俺様はまだまだ早く走れると思うんだ。」
トカゲ人間は飛行機をみて、そう言った。飛行機の名前をスターゲイザーというらしい
「なかなか、難しそうだが頑張ってくれ。」
「ふふ、レオンは面白いことを考えるわね。」
「チョーっと!まった!私は置いてけぼり!
日本 リザードマン イナイ OK?」
新人を置いてけぼりにしてクライアントと話し込む教育担当の上司の顔が一瞬頭をよぎりながらも。ここで、受け入れたら一生後悔すると思い説明を促す。
「あ?さっき基本的なファンタジー種族はいるって話しただろ。」
「ここにいるとは聞いてないです。だって土人でしたっけ?の52名で構成されてるのでは?」
「こいつは客賓扱いだ。蛇鱗族では重鎮らしいからな。」
「元帥よ。俺様は牙旺族だと言っているだろ。おい、肝っ玉娘」
人を【スーパーなお母さん】みたいな名前で呼ばないでほしい。。
「見てみろ。」
そういうと、右手が2倍ほどに膨れ上がり爪が大きく生まれ変わる。
私がネズミなら、鷹の足くらいある5本の爪は
弱肉強食の上下関係をはっきりと示す威圧感がある。
「いいか、蛇鱗族の中でも牙旺族は特別だ。変身の能力を持ちこの地上で最も身体能力の優れる種族となる。」
「は、はい」
ギリギリ立っているのが奇跡的なほど、台風の強風に煽られるように体が委縮し後退する。
どこかで、感じた感覚。
「そして、お前の命の恩人だな」
そういうと、先ほどの禍々しい右手は人間サイズの、しかし鱗と鋭い爪を生やした異世界の手に戻っていた。
「い、命の恩人ですか?」
…
「あ、Tレックス!」
「あははははは Tレックス ははは そっくりだわ。」
見事イオリさんのハートを射抜きました。
「なんだ、そのTレックスとは」
「こっちの、世界の恐竜と呼ばれる絶滅種に似てるといったろ。」
「む、絶滅するようなひ弱な種ではない…」
機嫌を損ねかけた命の恩人に社会人の二年目の処世術が発動する
「いえ、そんなことないですよ。Tレックスが絶滅したのは異常気象。氷河期によるものだと考えられています。捕食を含む戦闘行為では当時、地上最強だと言われていた種なので強い象徴なんですよ?」
「なに?強い象徴なのか?」
「はい、しかも早いです。」
映画では。。。
「うむ、ではその名で我を呼ぶことを認めよう。」
「ありがとうございます。そして、助けてくれてありがとうございました。」
「うむ」
そう言うと、鷹揚にうなずいたレオンさんは後ろを向き頬を赤黒く変色させたような気がした。
最初は怖いと思ったが話してみるとそうでもない。そもそも、私は爬虫類は可愛いと思う類いの人間だった。
「寒いのが苦手 あははは 単純 あはあはあは」
もう私は彼女のツボがよくわからない。
「さて、それはそうと訓練に行くんだろ」
「はぁあ そうだった じゃ、行きましょうか?」
レオンが一歩引いた気がする。。。
イオリさんとなにかあったのだろうか苦手そう。
がががー ウィーン
けたたましい音と共に目の前にあった鉄製の壁が
王間の扉のようゆっくりと開いていく。
人が立っているには強い風が吹き込み
吸い込まれそうなほどの青が私の瞳に焼き付いた。
「なにこれ?空?」
「あ?そうかここに入るときは気絶していたのか」
「では、改め。ようこそ 東邦義勇軍所属 移動要塞 赤坂へ」
三人が最後尾にいる自分に振り返る。
この世のものとは思えない青空をバックに異界の3人に見つめられる。
「あぁ、これから異世界での生活を始めるんだ。」そう実感の湧く一瞬だった。
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