5
聞こえているのだろうか?
守屋さんに聞いた通りにやったはずだから、聞こえていると信じるしかないけれど。
けれど、どちらにしても、あまり言葉は思いつかなかった。
話が必要なのだとしたら、こんなことをする前に話した方がいいに決まっていた。けれど、私が望む本当のことは、こうするより叶わなかったことはよくわかっている。そして、すべてを失っても叶えたかったことだった。
私の望んだ世界が、ここにある。
「ご迷惑をおかけしたことは、本当に申し訳ないと思っています。――けど、ずっと探していたんです」
そう、ずっと探していた。
武道を習い始めたのはなぜだったろう? きっかけは思い出せない。たぶん自分の意志で始めたことではなかった。身体が小さく、力もない私にはあまり向いてなかったけれど、向かい合って手を合わせることで、短い間にいろいろな会話ができるのが楽しくて、機会があるごとに組手をしていた。
霧村さんと初めて出会った時のことは、よく覚えている。お見合いの――席だった。経営難で困っていた父さんが、霧村さんのお金を目当てにしたお見合い。
霧村さんはものすごい剣幕で――あれほど怒ったのは見たことがない――破談になったのだけれど、あれをきっかけに、霧村さんが元二脚歩機のパイロットで、今では小さな工場を経営していることを知った。そして、格闘二脚歩機トーナメントに出場しようとしていることも。
初めてドラッヘに乗ったとき、私はようやく自分の居場所を見つけた心地がした。生身で向かい合うよりも、もっと鮮明に相手のことがわかる。もっと真剣さが伝わってくる。ようやくわかった。組手をしてくれた相手はみんな、私に遠慮して手加減していたんだ。
ドラッヘは私と違って、誰よりも強かった。だから相手はみんな、全力を尽くして立ち向かってくる。その真剣さは、私に向けられたものではないかもしれない。けれど、ドラッヘが感じているのは間違いなかった。
ドラッヘの強さと、霧村さんの作戦。二つの歯車がかみ合ったとき、そこにもう敵はいなかった。もちろん、楽な戦いなどひとつもなかった。紙一重、最後の最後に運で勝ち取った勝利もある。けれど、物足りなさを感じている自分がいることに気づいてしまった。
いや――勝ち続けているから物足りなくなったというのは、少し違うかもしれない。勝てばそれだけ長くドラッヘに乗っていられるのだから、それは嬉しい。けれど正直に言えば、私にとって結果はどうでもよかった。勝ち続けるからつまらないなんてことはない。楽に勝てるから、負けるとわかっているから面白くない、という気持ちは持ったことはない。そういう話ではなく――なんて言えばいいんだろう。
赤い光が細く差し込んでくるのに気づき、私はそちらに向き直った。
ゆっくりと扉が開き、非常灯の背景に溶け込むシルエットが姿を現す。人間でいう、胸のあたりにモノアイを持ち、細くとも丈夫な両腕には、その時々で一番適切な武器を装備する。足には膝の関節がなく、丸太のような形をして、わずかに宙に浮いている。
――アリス。奇妙な世界に迷い込んだ、少女の名前。しかし今は、私がアリスなのかもしれない。
最低限の隙間ができたところで、彼女のうちの一体が滑り込むようにして部屋の中に入ってくる。主人の敵を討つため、回り込むように私に迫る。その左腕がふわっと、何気ない様子で持ち上がる。
私は軸をずらしながらも、鋭く前に跳躍した。同時に、青白い閃光のようなものが詰まったカプセルのような弾が腕をかすめる――機械を破壊せずに停止させる、パルス砲というものらしい。見せてもらった資料にあった。私を生け捕りにしたい――ということもあるかもしれないけれど、それよりも、主人に流れ弾が当たることを危惧しての武器選択のように感じた。
初撃をかわされた彼女は、無防備な横顔を晒している。私は立ち止まる勢いを利用して、そのまま回し蹴りに移行する。完全に背中を捉えた一撃。
だが、すんでの所で彼女は右腕の大きな杭のようなもので蹴りを受け止め、その衝撃も軽く滑走することでいなしてしまった。ふたたび間合いが空き、仕切り直しになる。
前日、霧村さんと戦った時には、このタイミングでの攻撃にはほとんど対処できなかったはずだった。――うまくなってる。
と、嫌な予感が走り、すぐさまその場を飛び退いた。そのすぐ後に、パルス弾が飛び去っていった。
――二機目。ちょうど私を支点として十字になるように、二人が私を包囲している。三機目は見あたらない。確か、ここの護衛には三機のアリスがいると聞いたのだけど。
あまり考えている間はない。次々と青白く光る弾が飛んでくる。このまま間合いを取られて撃たれ続けるのは得策ではない。
思いっきり伏せて第一波をかわし、その後限界まで高く跳ぶ。もちろん軸をずらしながらも、相手の一人に近づくように。しかし、着地したときにはうまく間合いを取り直されていた。なかなか容易には近づけないらしい。
と、着地を狙って急所――メインコンピューターのある胸部へと弾が飛んできた。とっさに左腕で受ける。
――左腕機能不全。
ダメージアラートの窓を目の端で確認する。どうやら完全に機能を破壊できるほどの威力ははないものの、それでも当たるとしばらくはその箇所が使えなくなる。
――逆に言えば?
私は駆けだした。今度は軸をずらしたりなんかしない。真正面から襲いかかる。当然迎撃してくるアリス。しかし、その弾はことごとく左腕ではじき飛ばす。
思いついてみれば、なんてこともない。わずかなリスクさえ負えば、こんなに簡単にいなせる武器だった。
撃っても撃っても致命傷を与えられないのに痺れを切らし、間合いを取るため斜め後ろに滑走し始めるアリス。――すこし判断が遅かった。私は鋭く前に跳ぶと、その勢いを借りて思いっきり右の拳を突き出した。
自身の動きと、私の拳。全ての力が同じ方向にかかり、アリスは信じられないほどの高速で滑っていく。そのまま壁に背中をまっすぐ打ち付け、反動でよろめくように前のめりになった。
もちろん、この隙を逃したりしない。私はすぐさま追いかけ、相手が体勢を直さないうちに、その胴を思いっきり蹴り上げていた。再び壁に押しつけられるアリス。その腹部にはドラッヘのつま先が突き刺さる。突き破られた装甲の中から、水や油が流れ落ちる。
脚を戻すと同時に、地面へと崩れ落ちるアリス。ほとんどの機能は生きているけれど、ラジエーターが完全に破損しているはず。無理に動くと熱でやられる。本人もそれはわかっているようで、おとなしく動力を落とし、壁に寄りかかるようにして眠った。
それを確かめて振り返ると、あと一機いたはずのアリスがいない。――理由はわかっている。あの武器では役に立たないことを悟ったのだ。
もう、私を無傷で捕まえようなんて、甘い考えは持っていない。次に来るときはまっすぐ命を狙ってくるだろう。
その予感に対する返事は、すぐに来た。
何か異様な、あっけないほど軽く小さく、しかし、悪寒がするほどの殺気をまき散らした空気を裂く音が聞こえる。
確認している暇などない。私はできる限り遠くへと跳んだ。
そのすぐ後、室内に大音響の爆音が響く。アリスの身体と私の蹴りの衝撃にびくともしなかった壁の厚い外装に大穴が空き、その周囲は燈色の炎が揺らめいている。
間もなく、二機のアリスが扉の奥から飛び出してきた。今度はあんな軽装ではない。肩にポッドを装着し、完全武装を施している。もちろん霧村さんの時のように、さこに詰まっているのは空包ではない。それは今、目の前で教えてくれた。
右腕の近接戦武器も、あの太い杭のようなものではなく、薄く鋭い、人間の腕が変形したような、異様な形をしたものになっている。一見すると、前の杭のようなもののほうが、刺されたときのダメージは大きいような気がするのだけれど。それでも、感じる威圧感は先ほどの比ではなかった。
――すごい。
何がすごいのか、よくわからないけれど。私は震えるほどにこの瞬間を味わっていた。自分でもつくづく頭の悪い、馬鹿なことだと思うけれど。
私を囲むように左右に分かれて滑走しながら、二機がわずかに時間をずらしながらポッドから何かを射出する。ガスの漏れるような音と、空気の裂かれる音が迫ってくる。
今度は目で見て軌道がわかっている。さっきよりは楽にかわすことができる。けど、なんだか気にかかる。かわされるとわかっているものを、無造作に撃ってくるとは思えない。
避けないわけにもいかないので、また跳んで避けようとする。――その時、今度ははっきりと違和感を感じた。アリスがこっちを向いていない。まるで私が跳ぶ先をわかっているかのように――
すでに体勢に入っていたところを、無理矢理方向を逆にして跳ぶ。なんとか直撃は逃れたものの、ためらった分だけ回避は遅れ、爆風にあおられ、前のめりに転びそうになった。バランスを取り戻したところで顔を上げると、すぐ目の前には腕を振り上げて迫るアリスの姿。
避ける暇がない! そう直感した瞬間、すでにドラッヘの左腕が出ていた。頭を守るようにかざした腕に、アリスの手刀が振り下ろされる。
激しい金属音と、振動。私自身に伝わった衝撃はわずかな震えでしかなかったけれど、その静けさがかえって重みを持って感じられた。目を走らせるが、ダメージ表示はない。――左腕の機能は、いつの間にか回復していたらしい。
アリスはそのまま、ブーストをふかせて押さえつけてくる。かといって、このままドラッヘの腕が押し斬られることもなさそう。むきになって無理強いする、駄々っ子のような行動――そんなものではないはず。
もう一機の方に視線をやる。彼女はすでにこちらに向き直っている。一機が私の行動を封じ、狙撃。このままではいいようにやられるだけだ。
体勢が崩れないように、少しずつ腰を浮かし、その時を待つ。アリスはゆっくりと――実際はゆっくりではなかったかもしれないけれど――銃口をこちらへ向けた。
――今!
私はいきなり力を抜き、斜め後方に崩れるようにした。勢い余ったアリスが前のめりに――射線軸上につんのめる。
もちろん、こんなことで油断などしない。彼女の反射神経が鋭いことは、霧村さん達との戦いや、実際に戦って知っている。味方をやり過ごしてから撃ってくることだって考えられるのだ。私はすぐに動き出せるように体勢を整えようとする。
――しかし。私はまた、彼女達の覚悟を察し切れていなかったらしい。突然視界が炎に包まれたと思うと、次の瞬間にドラッヘは宙に飛ばされていた。頭の中が真っ白になりながらも、無意識のうちに左腕で壁を叩いて、受け身を取る。それでも衝撃は私の内臓を押し潰そうとし、激しいものではないけれど、不安な気持ちにさせる痛みが身体の中に響く。その反動で今度はシートから吹き飛ばされそうになり、それをシートベルトが押さえつける。肩の関節がきしみをあげるのを、聞いた気がした。
次の瞬間、今度は前から来た軽い衝撃で、私はシートに戻される。目の前には白い布製の風船のようなものが、白い煙を吹いて萎もうとしていた。
――エアバック。
それをぼうっと見つめている自分に気づき、首を振る。状況確認。
ダメージ箇所は、細かいものはたくさん表示されていて、何が何だかわからない。それでも読み取った感じでは、出力が低下して、肩の関節部がかなり疲労している、ということだった。
自分の身体の方は――とりあえず問題ない。身体の中が押されるような不快感に、意識が少し抜け気味だけど、血も吐いてないし、身体も動く。
ドラッヘの傍らには、火だるまとなって転がるアリスの姿があった。――今までアリスが、味方を犠牲にしたところは見たことがない。あの、ボートのようなサポート機を盾にすることはあったけれど、あれはそもそもアリスを守る盾としてある機体だ――と、守屋さんから聞いた。
そして最も肝心な――最後の彼女。目の前に広がる炎と煙のせいで見えないけれど、私にはその姿がはっきりと見えた。滑るようにこちらに迫りながら、銃口を向ける……!
私はその場から飛び退いた。ほぼ同時に、風船が破裂するような、意外なほど軽く乾いた音が聞こえる。
――痛いはずはないんだけど――その瞬間、私は痛みを感じた。モニターの一部がブラックアウトし、警報が二回、危険を告げる。
――当たった?
まず、かわしたタイミングだった。当たったとしてもかすった程度のはず。
あまり考え込んでいる暇はない。今度ははっきり、彼女の姿が見える。銃を構えている。再び回避しようとする。
――が、跳ぼうとした瞬間、予想もしなかった方向にドラッヘが倒れ込む。何か変。ダメージを確認しようと目を動かしたとき、何か違和感に気づいた。右側のモニターに常に映っているはずの、ドラッヘの腕が見あたらない。
右腕大破。モニターはそう告げている。右肩から先が真っ赤。――もしかしてさっきの、右肩に直撃した?
倒れたおかげで、彼女の弾は外れた。しかし当然ながら容赦なく次弾が飛んでくる。そのまま転がって避けるしかない。
横倒しにぐるぐる回る視界に軽い吐き気を覚えながら――私はまだ、右腕を失ったことを考えていた。
戦闘中にいろいろ考えてるとやられるぞ! 霧村さんは以前、そんなことを言ってたっけ。けれど同時に、常に頭を使うことを意識しろ、とも言っていた。どっちが正しいのかと拗ねてみせたこともあったけど――いや、それこそ今考えるべきことじゃない。
さっきの状況では、私からは彼女は見えなかった。と同時に、彼女からも私が見えなかったはず。彼女なら目が見えなくても、レーダーでかなり正確な位置を捉えられるかもしれないけれど、電波が混線している場所、密閉された空間、雑音の多い場所、熱い場所などでは、レーダーが役に立たなくなることがある――と、以前誰かに聞いたことがある。
おそらく、彼女は私のいる位置を予想して撃ってきたのだ。そして、私はそれを予想して避けた。なのに、直撃といっていい形で被弾したということは、彼女が若干、私のいる位置を読み間違えて、それがたまたま当たったのだろうか?
そういえばさっきも、私が跳ぼうとした方向に、彼女は銃を向けていなかっただろうか? もしかすると、私の動きが読まれている――?
私がこれまで戦ってきた中では、動きを読まれたと感じたことは一度もなかった。もちろん新人ということもあって、データが少ないのだろうけど。
と同時に、私は事前に霧村さんから、相手についての相当の情報を受け取っていた。利き腕が右である、蹴りの動作が苦手で、一瞬独特の予備動作がある、リズムを狂わされると集中力を失って大振りになる、じわじわと攻めるのが好き……
新人の私がこんなにあっさりと勝てているのは、もちろんこのドラッヘの性能によるところが大きいけれど、データ量の差、というのもかなり大きな比重を占めているはずだった。私はそれを頭の隅に置きながら、実際に戦って、相手の性格、今の気持ちを形作っていく。
けれど、今の状況はどうだろう? 彼女は私のことを一切知らないはずだし、逆に私はよく知っているはずだった。
なんとか姿勢を立て直し、私はドラッヘを膝立ちにした。アリスはカートリッジを捨て、新しいものに交換しようとしている。
ともかくよくわかんないけど、相手は私の癖をずいぶん知っている。なら、どうやって戦えばいいのだろう――
と、霧村さんがもうひとつ、よく言っていたのを思い出した。
――不利になったら戦法を変え、相手の苦手なパターンを探るんだ。
苦手なパターンはわからない。探ってる暇もない。しかし――そうだった。彼女は――アリスは私を捕獲するつもりも、この部屋を壊さないことも諦め、さらに味方を犠牲にしてまで私に向かってきているのだった!
私は周囲を見回し、目的のものを確認した。同時に、アリスがカートリッジを収め、改めて私に狙いを定めようとする。
私は跳んだ。乾いた音と、警告音。――左脚破損。膝下あたりから吹き飛んだかもしれない。構わず、私は目的のものにしがみついた。床と銃身の隙間に右脚を差し込み、くるりと向きを変えてアリスに向け、残った左腕でトリガーを引く。
――機関砲。
重い破裂音が連なって起こり、支えの足りない銃身が暴れる。その振動はコックピットにも伝わり、疲労した内臓を揺さぶる。
やがてそれは、回転する音のみを残しておとなしくなった。弾切れ。
アリスは――彼女は全身に穴を開けられつつも、まだ動いている。がくがくと震えながらも銃口を向け、こちらを狙おうとしている。
私はもう一度気力を振り絞り、彼女に飛びかかった。二人もつれて転がる。もうさすがに、休みなく何度も揺さぶられた全身は、再び強い遠心力を受けて、仕事を放棄したがっている。
もう少し――なんとか身体をなだめながら、私はタイミングを見計らってドラッヘの四肢を踏ん張らせた。全身でアリスを押さえつける形で転がりが止まる。いくつもの穴が開き、もはや普段の丈夫さのない装甲。私はアリスの動力部めがけて、左腕を突き下ろした。
金属のひしゃげる音。――それは思ったより身近な、耳の側で聞こえたような気がした。
警報ふたつ。――左腕大破。
……最後の最後でドラッヘが力尽きた。左腕が肘から折れ、貫くはずだった装甲の上に落ちたのだった。
アリスの右腕は生きていた。震えながらも銃口をドラッヘの胸――私に向ける。
私の頬には、涙が伝っていた。結果は――残念だったけれど、嬉しかった。
いろんな人に迷惑をかけてしまったけれど……本当は、もっと違う形でこの時間を作れたら、もっと悔いがなかったかもしれないけれど……
私はどうしようもない人だったかもしれない。母さんの命を奪ってこの世に生まれ、父さんの跡を継げもしなかった。霧村さんや、多くの人から受けた恩を仇で返し、こんな身勝手な勝負をした。
臓腑の色など見たことはないが、私のそれは真っ黒だろう。その真相はすぐにわかる。だけど、後悔はしていない。
――どのくらい経ったろう。一瞬だったかもしれないし、何時間も経ったのかもしれない。アリスは銃口を向け、しかし、トリガーを引こうとはしなかった。
さらにしばらくして、遠くから合成音声らしい女性の声が聞こえる。
『マスター、HA01より各機。警戒態勢解除。Gブロックを解放』
アリスは震えながら銃口をあげると、両手をふんばって引き抜くようにドラッヘから身を引きはがし、そのまま立ち去っていった。
非常灯がわずかに点いていただけの部屋の明かりが灯り、急に明るくなる。私はただ、床を眺めていた。
コックピットが開いた。
「この馬っ鹿野郎が!」
目に飛び込んできたのは、ものすごい形相の霧村さん。ためらいもなく右の拳を突き出してくる。私は思わず顔を背け、目を閉じた。
耳元で重い音が響き――痛くないことに気づく。
「ヘルメットしてる顔を殴ったところで、痛いのは俺だろうが」
今まで聞いたことのないような低い声。私は恐る恐る目を開けた。
「それと、戦士は死ぬ一瞬まで目を閉じたらダメだ。最後まで冷静に、勝つ手段を考えろ――何度教えた」
霧村さんの表情は変わっていなかった。声もそのまま。だけど、もう、怖くはなかった。本気で怒っていなかった。ふりをしているだけだった。――私のために。
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