第4作 ヒビの入った日常
俺はゲームが得意だ
別に好きなわけではない
ただ得意なだけだ
そんな俺が毎日一時間以上、長いときは一日六時間以上モニターの前に座り様々なゲームを嗜んでいるのには理由がある
最初のころは得意というほどじゃなかった
誰だってそうだ
好きだったから
楽しかったから
面白かったから
ただひたすらにやり続けた
接戦が、圧倒が、劣勢が
勝利が、敗北が
育成がコンボが周回が、銃が剣が魔法がチームワーク、etc…
あらゆるものが興味深く、奥深い
俺一人の人生では味わいつくせないほどの娯楽に溢れていた
あぁ…なんて…──────
──────俺は幸せだったのだろうか
『ガラン』を出た後は、何事もなかった
望んでいた通りの変化のない日々
ガオさんも気を使ってか、ノアさんに関する事を話すことはなく
いつも通りゲーセンで遊んだだけ
とても素晴らしく平穏な日々だった
「どうも、お疲れ様です」
ほんの数日ぶりの平穏を噛み締めながら、日課のゲームに入る
俺にはいつも一緒にゲームするメンバーが、俺を含めて六人いる
ID『MJ_ZAKKU777』通称ザックさん
本名
今年30歳になる男性、最年長で妻子持ち
人生経験豊富でトークが上手く、チームのムードメーカー
ID『hanako_dayoo29』通称ハナンコさん
本名
今年30歳になる女性
ひたすらに明るく、同じくチームのムードメーカー
ID『MOMOnGA-333』通称モモさん
本名 不明
俺と同じ高校二年で自称男性
声が女性にしか聞こえない、チームのマスコット
ID『cat_man25』通称アキさん
本名
大学二年生の女性、にゃーさんと呼ぶと怒る
落ち着いた雰囲気のお姉さん、テンパると五月蠅い
ID『phantom_wing-0』通称ツバサくん
本名
高校二年女性、こてこての中二病だったが最近になって落ち着いてきた
性格が少し幼く、メンバーの後ろをついてくる後輩的存在
そして俺
この六人で毎晩、ボイスチャットというゲーム内通話のようなもので喋りながら遊んでいる
ザック[やぁヘイくんおつかれぇ]
モモ[ソルさんお疲れ様です]
モモさんは唯一俺のことをIDの方で呼んでくれる
癒されるぜ
「みんな今日は何してるんすか?」
ハナンコ[いつも通りAOなんだ!]
アキ[ヘイくん来るなら私ヒーラーやっていい?]
ツバサ[ヘイさんAOやるんですか!?]
「みんなやってるならキャリーしにいきましょうかね」
ザック[ツバサちゃんもきなよ、楽しく勝てるよー]
ツバサ[やりますぅ!]
こんないつも通りの日常
AOっていうのは
タンク、ヒーラー、アタッカーの三つの種類の役職があり、6VS6で拠点を取り合ったり物資を運んだりして勝敗を競うゲームだ
そしてキャリーってのは、試合を勝ちに運ぶ。
俺が勝たせてやるよ、という用語のようなものだ
まぁこんな長ったらしく日常を語っても
起きてしまった異変からは
逃れられぬというのに
黒なんて甘ったるい言葉では表せない
まるで無を連想させるような深淵
そんな空間に光が差し込み、思考を捨てた脳みそが急速に動いていく
「……今、何時よ…」
装着したままだったヘッドホンを外し、携帯の画面を光らせる
【8:14】
見間違いかと思い目を凝らす
寝起きで視界がぼやけているんだろう
確か7時15分にアラームをかけたはずなのだ
こんな時間に起きるはずが──
───ジリリリッ…ジリリリッ…ジリリリッ…
一時間遅れて鳴ったアラームが
日常を揺らす音がした
ヤンデレゲーマーを愛せない 蚩噓妬├シフト┤ @shift_006
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