第3話 The Munchkin
「へぇ、あの会社の営業やってるんですか? あそこの営業って、マラソンの日本代表選手がいましたよね?」
「そうそう、俺の後輩なんだよ。時々、練習の休みの日なんかは、一緒に外回りに連れて行くんだよ。やっぱり有名人だけあって、アイツが顔出すと話がすんなり進んでくれて助かっちゃうよ」
「すごーい。えっ、もしかして、一緒の写真とかってあります?」
「見たい見たい」
「あるよあるよ、ちょっと待ってね」
二卓目。
次に一緒になったのは、割と普通な感じの、そして大人びた感じの男女だった。
ただ、いかんせん、一緒になった相棒――男の方のスペックが高すぎた。
名古屋の自動車会社の営業職。
オリンピック代表選手まで抱えているような大企業と言えば指折り数えるほどもない。ボードゲームでの立ち回りは、頭悪いの一言に尽きる散々なものだったが、それを甘いマスクと華麗なる学歴と職歴で払しょくし、彼はゲーム終了後の会話の中心へと躍り出た。
名古屋市近郊の市で雇われ事務員をしているというサイドポニーの女の子。
大須商店街の中ほどにあるアパレルショップで働いているという、ツーブロックが素敵なお姉さん風の女の子。
二人してもう、目の前のさわやかスポーツ刈り青年の話に夢中だった。
うーん。
流石にオリンピック代表選手の後輩は卑怯だ。
こっちには、そんな風に場映えするカードはない。
そして、系列子会社という身だけあって、無理に前に出て彼の気分を害するのもためらわれる。たとえ、彼が純粋な営業職で、今後開発職の僕と接点がないにしたって、親会社との関係に影を落とすのはためらわれた。
プライベートだから、そんなの気にしなくってもいいと思うんだけれどね。
「えっと、おじ――お兄さんは、なんかそういうのないんですか?」
「うーんないかなぁ。ほら、システムエンジニアって、基本的にインドア派な人間がやるようなお仕事だから」
「ですよねー」
事務員やってる女の子が僕のことを無自覚におじさん呼びしてくる。
加えてあわてて訂正してお兄さん呼びしてくる。
ちょっとしんどい。
まったく悪意なんて彼女にはないのだろう。
だからこそしんどい。
まあ、そうだよな、普通にもう彼女たちからみたらおじさんだよな。
三十四歳だもの。
聞けば、まだ二十も前半だという。
社会経験も浅ければ、年上の人に対する口の利き方がどれだけコミュニケーションを円滑に進めてくれるか、実感するような仕事も任されていないに違いない。
あるいはそんなことを感じられないくらいに生まれついて図太く、これからもその調子で生きていくのかもしれない。
全部、勝手な僕の感情と想像である。
怒っても仕方ないし、恥ずかしいだけなので、僕は笑って済ました。
というかこんなことで腹を立てる僕が恥ずかしい。落ち着きなさい、もういい大人なんだから。
おそらく同年代、あるいはちょっと年上であろう、アパレルのお姉さんが気の毒そうにこちらを見ている。この人は基本的に人間ができている感じで、何かとフォローしてくれているが、それでもやはり営業職の相棒の方が本命らしかった。
よっぽど酷ければフォローはするが、気をひくようなことはしない。
事務員の彼女よりよっぽど男と女の機微のようなものを弁えている。
大人の女だ。
営業職の彼はといえば、まったく少しも僕の発言にも行動にも興味がなさそうだ。まぁ、そうだよな。
系列子会社の社員なんて、彼らからしてみれば取るに足らないものだろう。
こういうこともある。
肩書というのは世間で大切だ。
世間体というのは何よりもモノを言う。
悔しいならば努力するしかない。だいたい、努力というのは正しく行えば、報われるようにできているのだから。
もっとも今の僕は彼らとの会話よりも、もっと気になることがあった。
先ほど、トイレの前で出会った女性――アッシュボブの髪をしたそこはかとなく僕たちと同じギークの匂いを感じさせる女の子。
彼女のことであった。
まぁ、Fateネタが伝わる時点で、オタクなのは間違いない。
あの後、トイレの前で突然の再会を果たした僕と彼女は、ほんのちょっぴりだけれども話を交わした。どうやら、彼女も僕と同じで、出会いを求めてこの場にやって来ていたらしい。
上着が変わっていたのも、どうやらそれを意識してのことらしかった。
狭い店舗ではあるが、そこそこの人数が居る。
僕も彼女がこの場に居るなんて気が付かなかったし、彼女も僕が居るのに気が付いていなかったらしい。けれども、あれだけの騒ぎを起こせば、いやでも目に付く。気が付いてしまう。
それで、僕がトイレに駆け込んだのを目にして、見かねておいかけてきてくれたということらしい。
彼女は意外と優しい女の子だった。
「ひっどいですねぇ。エンジョイ勢とガチ勢の構造的な対立については仕方のない部分はあると思いますけれど、もうちょっと配慮をしていただきたいものです。ここは学校のボドゲサークルじゃないんですから。社交の場ということを考えていただきたい」
「そう、それ。それなんだよ」
「これは私の直感ですが、彼、たぶん学生ですね。それも
「けっこうばっさり切ったね。けど、その分析にはおおむね同意するよ。いるんだよ、あぁいう部下がさ。もう、そいつの顔が頭に浮かんで仕方なくって」
「……手、出しちゃダメですよ」
「安心して。僕、体そんなに丈夫な方じゃないから」
「なるほど、注意するにも命がけ、
「しないから!! というか、ちょいちょいFateネタ絡めてくるね!!」
「そりゃまぁ、型月さんとは長いお付き合いだけですからね。お月さまだけに」
「誰がうまいこと言えと」
「そうだ!! 死徒になれば、もしかすると少ない筋力もどうにかなるかもしれませんよ!! さっちんみたいに!! ヒロインルートはないけど、さっちんみたいに!!」
「あるもん!! さっちんルートはあるもん!! きのこ言ってたもん!! 月姫リメイクしたら実装されるもん!!」
そして、割とシニカルな物言いをする女の子だった。
ついでに型月の古参兵的な会話が成立する女の子だった。
つまり、女の子という年齢のカテゴリにあてはめてしまって大丈夫なのかなと不安になる、おそらく僕と同世代の時代を生きていそうな、そんな女性だった。
型月作品群は基本的に男性向けだ。
少なくとも表向きは男性向けのコンテンツだ。
ただ、現在多くの女性ユーザーに認知され、受け入れられ、支えられていることを鑑みればお察しだろう。男性向けを謡いながら、多分に女性にも受け入れられる要素を盛り込んでいる、非常に間口の広いものだった。
だから、当時から女性でも「月姫」や「Fate/Staynight」を知っている、プレイしているという人は相当数居た。
一般小説として講談社から出版された「空の境界」などは言わずもがなである。
たぶん、女性の方がよっぽど読んだのではないだろうか。
形としては男性向けの体を装いながら、中身としては女性にターゲットを絞っている。そういうモノはあの時代――割と探せばいくらでもあったのだ。
回顧はともかく。
そういう時代だったのだ。
彼女が型月と長い付き合いだと言ったことは、僕にとってはそれほど気にすることではなかった。むしろ、この年頃のオタクあるいは元オタクの嗜みとして妥当だろうと感じる、そういう発言だった。
それよりも。
僕は、彼女が僕のことを心配してやって来てくれたことの方が嬉しかった。
「まー、マンチキはよくないですよ。百害あって一利なし。ゲームはみんなでプレイするものなんだから、そこはみんなが気持ちよくなるプレイとロールを心がけなくちゃ」
「マンチキ?」
「マンチキン。英語のスラングでクソガキみたいな意味ですね。TRPG用語で、本来ならばボードゲームで使うのはちょっと違うんですが、協力型のボードゲームは言ってしまえば自由度の低いTRPGみたいなものですから」
曰く。
ルールのテキストフレーバーを拡大解釈したり、自分に不利な状況下でルールを無視するような要求をしたり、周りのプレイヤーに自分のキャラを助けるように強要したり、とにかく自分が楽しくプレイすることを優先するプレイスタイル。
ガチ勢とはまた微妙に違うニュアンスを含んだ表現だが――。
「うぅん、なるほど。確かに彼のプレイはそんな感じだった」
「でしょう、でしょう。楽しんで勝つんじゃなく、勝ってはじめて楽しいみたいな。ゲームは過程を楽しむものなのですからそういう心持でやられたらたまったもんじゃありません。掲示板のオンセだったら半年ROMれとか言われますよ」
「またそれ、懐かしいネタ」
「若い世代にはそういうの分からないんですかね。ツイッターとか、ラインとかから入った世代には公共の場の空気を読むとか場の人に合わせるとか、その流れに自然に溶け込む努力とか、そういう考えができないんですかね。悲しいことです」
掲示板文化か。
僕は見ているだけで、実際に参加したことはなかった。
なのであんまり何も言えないや。
けど、会議の場で周りに置いて行かれないように、必要な知識を身に着けておくことの重要性は、社会に出てからいやというほど実感している。
どれだけ準備をしても、知らないものは知らないのだからどうしようもない局面もある。けれども、場を不必要な発言で遅滞させないように、最低限勉強しておくというのは、社会人として必要なビジネススキルだ。
知らないでは済まされないとはよく言ったもの。
済まされるけれども、迷惑はかかる。
そうか、学生と言われれば確かにそんな気がするな――。
「ガツンと言ってあげるのも優しさですが、言ってやらずに自分で気づいて反省させるのもありですね。どうします、ブッチョさん?」
「あ、僕、平リーマンだから」
「またまたぁ。学習意欲も責任感もない平リーマンが、いい歳して情報系のマネジメント技術書を昼間からあさっている訳ないじゃないですか。勉強熱心は、この怠惰こそが正義の情報屋界隈で出世するのに必要なスキルですよ」
同業者だな。
もう、その核心を突いた業界評で、僕は彼女が自分と同じ仕事でご飯を食べていることを確信した。
プログラマーとシステムエンジニアは怠惰な生き物である。
どうすれば、今ある自分の仕事が効率よく片付くか、そんなことを四六時中考えているよな、そういう集団である。サボるため――つまり効率よく仕事を終わらせられるならば、どんな労力も惜しまない。
手を抜くこと、勉強して地力を上げること、任せられる人物に任せること。
そういうことを徹底する人種なのだ。
けれど、上に立つ人間になると、そういう怠惰は許されなくなる。
会社に属している人間になると、自分の都合を優先できなくなる。
仕事に対する責任から、怠惰な選択肢は必然的に取れなくなる。
だから勉強する。
必死に勉強する。
怠惰ではなく、自力と創意工夫により、物事を解決しようとする。
まぁ、部下が怠惰でそれを解決したりすることもあるのだけれど。
どうしようもなければ、怠惰――スケジュールやテスト作業ともすると機能数を融通してもらって、解決することもあるけれど、それは最後の手段なのだ。
分かっている。
そして、分かっているということは。
にまりとアッシュボブの女の子は、やっと気づきましたかねといわんばかりに、口の端を釣り上げた。
「栄にあるWEB系開発会社のデザイナーやってます。社員規模は百人ちょっと。社長がやり手なんで、仕事は結構忙しい方ですね。まぁ、プログラム系の業務は門外漢だったんですけれど、動作テストのためにわざわざコーディングしてもらってたら、工数かかっちゃうし逆に自分のスケジュールが押しちゃうんで、独学で習得しましたよ」
「えっと。高専の専攻科卒。自動車メーカの子会社ソフトウェアハウスでシステムエンジニアをやってます。業務内容はその――下手に話すと問題になるので」
「あーあーあ、大丈夫です。大丈夫です。もう、自動車メーカーの子会社ソフトウェアハウスっていう時点でいろいろとお察し案件ですよ。あの業界も大変ですね。うちもそっちから流れてきた人材が何人かいますけど、みんな揃ってタフですよ。何時まで働くんだお前らって、生え抜きは青色吐息って奴です」
「それは……ご迷惑をおかけします」
「大丈夫です。うち、みなし残業月二十時間の超絶ホワイト企業なので。残業時間が評価に直結しない、成果出してなんぼみたいなところありますから」
超絶ブラック企業なのでは?
三六協定にひっかかる上限でみなし残業設定してるって、それ、逆に言えばそれ以上はつけさせないぞって言っているようなものだよね。
よく見ると、彼女の眼の下にばっちりと黒い隈があるような――。
「ちょっと!! 女性の顔をじろじろ見るのはデリカシーないですよ!!」
「す、すみません……」
「この業界で働く女性は少なからずタフなんですから、そこら辺察してください。お察し能力足りてないんじゃないですか? そんなんじゃ管理職も大変でしょ?」
「あ、やっぱそこまでバレてます?」
「バレバレです。トイレに駆け込む姿が、うちの隣のギスギスチームの係長とそっくりでしたよ。部下のやらかし案件キターって、思わずにまにましちゃいましたね。休日までそんなこと思いたくないですけれど」
「重ね重ね申し訳ない」
いや、すまないの方がいいだろうかと言ってやると、そこまで役を作らなくても大丈夫ですよと、満面の笑顔で返された。
いい人だ。
察しもいいし、気立てもいいし、ノリもいい人だ。
ただ、性格はちょっと、不安な感じがする人でもあった。
あと、ちょっとだけお察し能力が足りていないというかズレている。
管理職は管理職だけれど、僕はその――係長じゃなくて課長補佐だ。
大きい会社なので、それなりの部下を回している。おまけに、僕にしかできない業務を長年抱えており、絶賛プレイングマネージャーをしていたりする。
本当は察していて言わないのか。
あるいは察しきれていないのか。
そこのところは分からないけれど。
なんにしたって、ここまで何も言わないのに、いろんなことを察してくれるのがすごい。
できれば部下に欲しいくらいだ。
「えっと、名刺交換とかしましょうか? 確か、休日に急に何かあったときのためにと、財布の中に一枚持って」
「もうっ!! そっちの番号交換にここに来ている訳じゃないでしょ!! 会社の内線番号なんて知ってどうしろって言うんです!! 何を話すんです!!」
「……び、ビジネスの話を」
「しーたーくーあーりーまーせーん!! 私、プライベートと仕事はちゃんと分けるタイプなんですよ!! プライベートの方、教えてください!!」
すちゃとカバンの中から取り出したのはスマートフォン。
世の女性、ともすると男性まで、問答無用でiPhoneを使うご時世だと言うのに、彼女の持っているそれはAndroidに間違いなかった。
しかも――国産メーカーの最高級機。
僕がAmazonで買った、中国資本に買収された大手通信機器会社の格安フリーSIM端末と違って、ちゃんとお金がかけられているAndroidだった。
ほら、出してくださいという視線がこちらに向けられる。
なんだか気後れする感じで、僕のスマートフォンを取り出すと、彼女はすかさずドヤ顔をしてみせた。勝ったという感じの、技術者にありがちな得意の表情をこちらに向けた。
「そんな格安端末使ってちゃいけませんよ。ちゃんと五万くらいは端末に出さないと。まともなコアを積んでなくって、周回性能が落ちちゃいます」
「いやぁ、それは分かるんだけれどね」
「この端末なら
「一番いいのは、
「そうですね。けど、なんか
もしかして、LINEも使ったら負けと思っている人かなと思ったけれど、その辺りについては抵抗のない感じの人だった。素直に僕たちは、スマートフォンをふるふるすると、お互いのIDを交換したのだった。
高専時代の友人たちとは基本的にメールでやり取り。
LINEでは、もっぱら家族や会社の同期や後輩、部下ばかりである。
そんな中にぽこりと一つ、新しい名前が追加される。
しかも女性だ――。
ちょっとだけ、落ち込んでいたテンションが上がった。
「って!! これ!! IDとアイコン!!」
「箒少女あんばーチャンですが、何か?」
「……リアルの友人との付き合いで、これ使ってるんですか? オタバレとかそういうの怖くないんですか?」
「あー、まー、そー、ねー。普通の人ならわかんないから、意外と大丈夫ですよ」
「意外と大丈夫なんですか!?」
「むしろ、私、本名が加賀って言うんですよ。そっちのがいじられるっていうか」
「最近はちょっと下火ですけど根強い人気ですものね!! そっちも分かるんですか!!」
「分かりたくないけど分かっちゃうんです。オタだから。哀しみ……」
ちな、嫁は瑞鳳ちゃんですと、真顔でキメる加賀さん。
加賀さんなのにあんばーチャンで嫁が瑞鳳ちゃんさん。
女性オタでもこういう猛者っているんだなと、僕は思いがけず肝を冷やした。
部下にしたいなと思ったけれど、これは――御するのに苦労するタイプだ。
この手の部下を一人、持っているから分かるけれど、難しいタイプだ。
プライベートの連絡先の方を交換したのは正解かもしれない。
「さて、それじゃそろそろ、すまないさんがしこたま隠したラインの黄金の瘴気がおさまった頃ですし、私もお花を摘みにいかせていただきましょうかね。おほほ」
「あっ、これ、気軽なトークとかじゃなくて、そういうの待ってたんですね」
「まぁ、すまないさんは、ちゃんと空気を読んで、男女共用のトイレを利用した際には、便座をアルコール消毒した上で、消臭剤をバルムンクしてくれると信じてますけど」
「……すまない!! ジークフリートすまない!!」
僕がうかつにすまないさんネタなんて使ったばっかりに、汚いネタにされてしまってすまない。宝具レベル四で、周回はもとよりゲオルギウスさんとセットで高難易度イベで重宝しているのに、こんなことになってしまって本当にすまない。
僕の横をひょいとすり抜けて、トイレに入る加賀さん。
ちょっとして、ひょっこりと顔を出すと、彼女はなんでかサムズアップでどや顔をした。
「流石ですね森野さん。森野だけに、森の香りしかしませんよ」
「……感想とかいいから!!」
とまぁ、そんな訳である。
「それでは、お待ちかねの連絡先交換タイムと参りましょう。皆さん、ご立席ください」
やいのやいのとカフェスペースに騒がしい喧騒が流れる。
バッグから、ポケットから。スマートフォンやガラケー、手帳なんかを取り出して、思い思いの方へと移動し始める参加者たち。
僕と席を共にした親会社の営業マンも。
また、彼に首ったけという感じだった、女の子たちも。
いつの間にやら他の人たちの所に行ってしまった。
さきほど一緒の卓だったメンバーの姿も、人ごみの中にちらほらと見える。
何人かの男女は諦めたのか、それとも、もう何かに納得しているのか、自分の席から動かない。そんな彼らと同じように、もう、今日の合コンの目的を十分に果たした感じのある僕は、テーブルの上のほぼ氷しか入っていないグラスを手に取り、底に溜まった少ない水を、じゅっと音を立てて吸い上げるのだった。
なんか、ズルしちゃったみたいで、申し訳ないな。
けど、欲しいと思った女性の連絡先はもう聞けたのだ。
なんだか思った以上に苦々しい合コンだったし、これ以上、がっついてあれやこれやとやる気には、僕にはちょっとなれなかった。
というか……。
うん……。
「……はじめて、女の子と、連絡先交換してしまった」
たららん。
音と共に、一応取り出しておいたスマートフォンが鳴動する。
その音に遅れてディスプレイが明滅すると、箒少女あんばーチャンがスタンプを送信しましたとメッセージが表示されていた。
タップ。指紋認証でロックを解除して、それを確認すると――。
「……どういう感情?」
送られてきたスタンプは、呼符で星5鯖を引いてしまった文明の粉砕者が、そわそわと周囲を見渡しているものだった。
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