40石 4回目の配信 前半

40石 4回目の配信 前半




「ウーちゃん、そろそろ始めるよぉ」


 そんなこんなで流れるコメントを眺めていると、配信開始時間になりエルミナがそう声を掛けてくる。


「よし、余は何時でもいいぞ」


「私も問題ありません」


 余もレイラもとっくに準備は出来ている。


『そろそろ来るぞ』『我慢できねぇ』『き……』『来……』


 リスナーも配信が始まるのを今か今かと待っているようだ。


「エルミナ、始めてくれ」


「うん。じゃあ配信開始ぃ!」


 エルミナの声とともに配信が開始されて、何時ものように配信画面にファゴアット帝国の国旗が表示され、フリーBGMが流れ始める。


『うおおおおおお!』『きちゃぁ』『何時もの国旗』『さけるイカ:パーティーの時間だ!』『来たああああああ』『間に合ったぜ!』


 そして数秒後、BGMの音量が小さくなり、ファゴアット帝国の国旗が消えて配信画面に余とレイラの姿が映った。


「皆の者、ウルオメア・ファゴアットだ」


「ウルオメア様のメイドのレイラでございます」


「今日も来てくれて感謝する」


『こんばんは!』『さけるイカ:こんばんは!!』『今日も来たぞ!』『レイラも居るぞ!』『レイラファンの俺歓喜』『こっちこそ配信してくれて感謝だわ』『今日は開始からレイラも居るといことは……』


 お、察しが良いリスナーが居るな。


「察している者も居るようだから先に言ってしまうが、今回は事前に告知したようにパーティーサバイブをプレイする訳だが、それにレイラも参加してもらうぞ」


「よろしくお願いします」


『おぉ!』『やっぱり!』『レイラもパーティーサバイブするんか!』『レイラのゲームの腕前はどんなものか』『ククク、お手並み拝見だな』『いや、お前何者だよ!』『レイラとゲーム出来るかもしれないと考えるだけで俺は幸せだぁ』


「さて、最初に一応言っておくが、良かったら画面下に表示されている配信タグの#ファゴアット帝国放送局でツブートしてくれ」


『まかせろーバリバリ』『おっけー』『もうした』『もうトレンド1位だけどな』『意味はある』


 そう、コメントで流れたように実は配信開始の少し前に既にツブヤイターの日本トレンド1位になっているのだ。

 他にも水着やプール、パーティーサバイブなどもトレンドになっていた。


「皆の者、ツブートありがとう」


「ありがとうございます」


『いえいえ』『ファンとして当然のこと』『30回くらいツブートしたわ』『俺も』『ワイも』


 もう言わなくても配信すれば毎回配信タグがトレンドに入りそうな勢いだな。

 まぁ言った方が良いので言うが。


「よし、では早速パーティーサバイブをプレイしていく……その前に皆の者が気になっているプールのことについて少し話そう」


『マジ?』『早速パーティーサバイブかと思ったらプールの話か!』『プールの話してくれるんか!』『気になってた』『さけるイカ:むふふ』『なんの話?』『わからない』『知らない奴も居るのか』


 どうやら知らないリスナーも少ないが居るらしい。


「知らない者も居るようだから説明するが、先日ネットで余とレイラをプールで目撃したという情報が流れたのだ」


『へー』『そうだったんだ』『知らなかった……』『プール……つまり水着……鼻血出そう』


 妄想しただけで鼻血を出すなんて昔のマンガみたいだな。


「はっきり言ってしまうが、プールでの目撃情報は事実だ」


『やはり!』『だよなぁ』『知ってた』『イカが嘘を言う理由もないしな』


「先日、テレビを見ているとプールメインの大型レジャー施設のCMが流れたのだ」


『あーあれな』『俺も見たわ』『よくやってるよな』『こっちは流れてないわ』『地方住みだからなぁ』『俺もだ』『ワイも見てない』


 大型レジャー施設のCMを見てない者も居るらしい。

 まぁある程度近くに住んでいなければ流れないか。


「それでもう外も暑いし、プールに遊びに行くかぁとなった訳だ」


『なるほど』『確かに最近暑い』『俺もプールに行きたくなる』『もう夏だしな』


「そうしてレイラと前日に水着を買いに行って、その翌日にプールに遊びに行って遊んでいたところを目撃されて今に至る」


『水着!』『ウルオメア様とレイラの水着姿……』『興奮してきたな』『レイラと一緒に水着も買いに行ったのか』『ガチでレイラはウルオメア様のメイドなのか?』『流石に設定だろ』『あーなんで俺はあの日にプールに行かなかったんだ。めっちゃ後悔だわ』『俺も行きたかった』『ワイも』『お前らはふたりの水着姿が見たかっただけだろ』『当然よ!』『当たり前さ』『お前は違うのか?』『俺はふたりに混じって遊びたいだけだ』『コイツ……俺たちより欲深いぞ!』『ウルオメア様とレイラに混じりたいとは……変態め!』『恥を知れ! 俗物ッ!』『ふたりに混じっていいのは同じレベルの人物だけだゾ』『変態は去れ』『お前らも似たようなもんだろ……』『変態が変態を罵っているだけじゃん』


 確かに。

 流石は変態大国日本。

 まぁ今日も日本は平和だということだろう。

 だが、レイラの視線がそろそろヤバイから次にいった方がいいな。


『さけるイカ:むふふ。僕はバッチリ見たけどね!』


 そう思ってたのだが、我慢出来ない変態がひとり居た。


『コイツ!』『イカは見たんだったな』『そっかぁ』『じゃあ、死のうか』『テメェの目を潰したい』『お前らそろそろやめろ』『レイラの顔を見ろ』『ヒェ……』


 そこでリスナーがレイラの冷え切った視線に気が付いたようだ。


『少し頭冷やそうか』『はい』『はい』『はい』『さけるイカ:はい』


 どうやら流石にヤバイと思ったらしく、さけるイカも含めて静かになった。


「余だけの時は問題ないが、レイラはそういうのアレだから自重しような」


『スイヤセン!』『ごめんなさい』『よく理解しました』『でも、なんかゾクゾクしてクセになりそう』『わかる』『おい』


「特にさけるイカは反省しろ!」


『そうだよ』『そうだそうだ』『反省しろ!』『マウント取ろうとすんな!』『さけるイカ:ごめんなさい』


 文香もしょうがない奴だな。


「さけるイカも謝ったから許してやってくれ」


『はーい』『しょうがないな』『ウルオメア様が言ったから許すんだからね。勘違いしないでよね?』『ツンデレ』『お前らもレイラが居る時は自重しろよ』『そうだゾ』


 そろそろプールの話は終わりで良いだろう。

 次にいこう。


「さて、これでプールの話は終わりだ。お待ちかねのパーティーサバイブをやるぞ!」


『おおおおおおおお!』『きたあああああ!』『やるぞおおおおおおおお!!』『お前ら切り替え早いな……やっほおおおおおお!』『絶対参加してやる!』『俺がレイラを守る!』『メイドマスターのこのぼきゅがレイラを守るんだな』『ウルオメア様を倒して名前を覚えてもらうぞ!』『爪痕を残す!』『お前がウルオメア様を倒すというなら俺がお前を倒す!』『みんな必死だねぇ……まぁ俺が名前を覚えてもらうんだけど』『いや、私だ』『ワイやで』『俺だ俺だ俺だああああああああああ!!』


 コメントが盛り上がっている。

 皆、それだけパーティーサバイブが楽しみなのだろう。

 正確にはパーティーサバイブで余とレイラと一緒に遊べるかもしれないからなんだろうが。


『さけるイカ:いええええええええええい!』


 文香の奴も他のコメントに混じって盛り上がっていた。

 アイツ絶対反省してないだろ。

 まぁ文香らしいか。


「ふふっ」


 そう思って思わず笑ってしまう。

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