39石 4回目の配信開始前のコメント

39石 4回目の配信開始前のコメント




 パーティーサバイブの配信が決定した翌日は特になにもせずにグダーっと過ごした。

 そして配信当日。

 現在時刻は20時10分。

 余とレイラは衣装に着替えて配信部屋に移動し、準備万端。

 エルミナも何時ものようにパソコンの前で待機している。


「ウーちゃん、師匠、空いている時間にゲームパッドを改造しておいたから触ってみてぇ」


 エルミナがこっちを見てそう言ってくる。

 どうやら前に気にしていたゲームパッドを改造しておいてくれたらしい。

 レイラと一緒にパソコンの前に行くと、前とは見た目が違うゲームパッドがふたつ置いてある。


「これか」


「ウーちゃんが紫色の方で師匠が緑色の方だよぉ」


 二色あるゲームパッドの紫色の方を手に取って握ってみる。


「おお」


 握ってみて驚いた。

 ゲームパッドが手にピッタリとフィットする上に前よりも軽い気がする。


「これは凄いですね」


 隣のレイラもゲームパッドを握って驚いていた。


「ふたりの手の形に合わせて形を作り直して、中身も性能を上げつつ軽量化してみたんだけど、どうかなぁ?」


「完璧だ。驚くほど余の手に合っている」


「はい。私の方も同じです」


 よくここまで2000円くらいのゲームパッドとジャンクパーツで作れるな。


「流石はエルミナだ。よくやってくれた」


「ありがとうございます」


「うん!」


 エルミナはにへらと嬉しそうに笑う。

 その後はパソコンの前に座って軽くゲームパッドの動作確認をしてみたが、前よりも格段に使いやすくなっていて問題はなかった。


「エルミナ、配信ページを出してくれ」


「はぁい」


 モニターの画面が切り替わり配信ページが表示される。

 今回も多くの待機者が居た。


「まだ40分もあるのに相変わらず待機者が多いですね」


「うむ。こういうリスナーはチャットを楽しんでいるのだろうな」


 そう言いながらコメントを見てみる。


『待機』『待機中』『まだぁ?』『ウルオメア様がプールで目撃されたってマジ?』『どうやらマジらしいぞ』『あれって結局ガセじゃなかったのか』『さけるイカが見つけたってツブートしてたから本当のようだぞ』『マジかぁ……いいなぁ』『俺もウルオメア様の水着姿見たかったわ』『発見した誰かが写真上げてくれねぇかな』『あっ、おい待てぃ。無許可で写真を上げるのはマナー違反だゾ』『あ、そっかぁ』『ネチケットは守ろうね!』


「本当に待機者はリスナー同士のチャットを楽しんでいるようですね。内容のほとんどはウルオメア様の水着の話のようですが」


 そう言ってレイラが鋭い視線でコメントを見る。


「まぁこれくらいは良いだろう。いちいち怒っていてもしょうがないぞ」


「分かりました」


『さけるイカ:あれぇ? まさかウルオメア様の水着姿を見逃した奴、おりゅ?』


 そこで、さけるイカが空気を読まないコメントを投下する。

 コイツ絶対わざとだ。


『は?』『は?』『はぁ?』『ざっけんなコラァ!』『当たり前だよなぁ?』『あのさぁ……』『コイツ煽りよる』『殺されてぇか?』『キレそう』『俺はもうキレてる』『あったまきた……』『許せねぇ』『血涙ものなんだが』『おじさんのこと本気で怒らせちゃったね』


 さけるイカに大量のヘイトが集まる。

 コイツ何時か絶対痛い目をみるぞ。

 そこから10分ほどで一旦水着に関するコメントが落ち着いた。


『今日はパーティーサバイブをやるんだよな?』『そうらしいぞ』『一度に6人まで遊べるから俺たちが参加出来る可能性は高いな』『マジか。知らなかった』『やべぇ買ってねぇよ……』『ワイは即買ったわ』『俺は持ってた』『ネットですぐ買えるし値段も安いからウルオメア様と一緒にゲームをしたい兄貴姉貴は買った方がいいぞい』『チャンスだしなぁ』『初見でも大丈夫かね?』『ワイも初見』『初見でもいいのかなぁ。心配だ』


 どうやら今回配信するパーティーサバイブ初見勢が参加しても良いのか心配しているようだ。

 そこで思い付く。

 余もコメント出来たはずだし、答えてやりたい。


「エルミナ」


「ウーちゃん、なにぃ?」


「配信ページのチャットに余もコメントしたいのだが、大丈夫か?」


「大丈夫だよぉ。そこのキーボードを使ってねぇ」


「うむ」


 どうやらコメントをしても問題はないようだ。

 早速、キーボードでコメントを打ち始める。


『ファゴアット帝国:皆の者、余だ』


 とりあえず、そうコメントする。


『ファッ!?』『さけるイカ:ウルオメア様!!』『ウルオメア様!?』『マジもんか?』『どう見ても本物だろ』『中身が違うかもしれないだろ』


 確かに中身が余かは分からないか。

 まぁそこは信じてもらうしなないな。


『ファゴアット帝国:余本人だ』『おぉ!』『まさか待機中のチャットにウルオメア様が降臨するとは』『今までなかったよな』『初めてだ!』『さけるイカ:ウルオメア様、なにか言いたいことがあるんじゃないですか?』


 文香の奴、察しが良いな。


『ファゴアット帝国:うむ。実は皆の者のコメントを見ていて答えた方が良いと思ったのでコメントした』『俺たちのコメント見られてたのか』『待機中のコメントもチェックしているんですね』『まだ時間あるのにもうスタンバッてるのか』『流石はウルオメア様だ』


 確かに配信開始までまだ時間あるな。

 でも、1時間前待機する配信者も居ると聞いたことがあるし珍しくはないのではないか?


『ファゴアット帝国:コメントを見ていてパーティーサバイブ初見勢が居るようだが、余も初見だから安心しろ』『ウルオメア様もパーティーサバイブ初見なのか』『また初見でやるんですね!』『ワイと同じや』『MFBGも初見だったよな』『さけるイカ:僕も初見でしたけど、頑張って練習してきました!』


 どうやら文香は本当に練習していたようだ。


『ファゴアット帝国:まぁそういうことだから初見勢も安心してゲームに参加してこい。どんどん来い』『すごいウェルカムな感じじゃん』『パーティーサバイブ初見だけど安心したわ』『良かったー』『ROM専だったけど、積極的に参加してみます』『ウルオメア様もこう言ってるし、パーティーサバイブ持ってない奴は買ってきた方がいいな』『よっしゃ、買ってくるわ』『いてらー』


 これでパーティーサバイブ初見勢も気兼ねなくゲームに参加してくれるだろう。


『ウルオメア様はああコメントしてくれたけど、お前ら操作方法くらいはwikiとか見てチェックしておけよ』『当然よ』『今見てるわ』『みんな分かってるよな? この配信で爪痕を残せばウルオメア様に名前を覚えてもらえるチャンスなんだぞ。しかも今回は参加出来る可能性が高い』『チャンスだな』『うわっそういうことかぁ』『それを忘れてたわ』『俺もさけるイカ並みに認知されたい』


 確かに余が名前を覚えるチャンスは多いな。


『今のうちにwikiをよく読んどけよ』『だからパーティーサバイブめちゃくちゃ練習してきた』『俺より強い奴に会いに来た』『ガチ勢はともかく、パーティーサバイブ初見勢にもチャンスはある訳か』『さけるイカ:僕はもっとウルオメア様にアピールするよ!』『さけるイカは最優先で倒す!』『おう!』『任せろ!』『あったりまえよ!』『いくぞ、みんな!』『OK!』『OK!』『OK!』『絶対キルフォーメーションだっ!』『……ネタが分からん』『古いわ』『おっさんばっかりかよ』『何だこのオッサン!?』


 余もサッパリ分からん。

 まぁ面白いが。

 そんな感じで配信開始時間までコメントを見て楽しんでいた。

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