41石 4回目の配信 後半
41石 4回目の配信 後半
配信画面が切り替わり、パーティーサバイブのタイトル画面がふたつ表示される。
『タイトルきたああああああ!』『パーティーサバイブの時間だああああああ!』『タイトル画面、右と左に分かれてるな』『マジだ』『どっちがどっち?』
右と左にタイトル画面が表示されただけで騒いでいたリスナーが、右と左どっちが余でレイラなのか気にし始める。
そこでエルミナが気を利かせて、それぞれの画面の端っこに余とレイラの名前を表示させた。
エルミナ、ナイスだ。
「見て分かるように、右側の画面が余の視点で、左側の画面がレイラの視点だ」
『おk』『把握』『優しい』『気が利く』
「さて、視点も分かったところで、早速プレイしていくぞ」
『おお!』『やったぜ』『ついにか……』
「といっても、最初の数戦は余とレイラだけでやらせてもらうがな」
『りょ!』『あいあい』『了解でーす』
最初は余とレイラでパーティーサバイブの操作確認を含めた練習試合だ。
余はゲームパッドを操作して、パーティーサバイブのタイトル画面にあるマルチプレイを選択する。
「今から部屋を建てるが、お前たちは入ってくるなよ。まぁ見えないようにパスワードを設定するから入ってこれないと思うが」
『はーい』『分かってまーす』『くそぅ』『ふたりの中に入りたいなりぃ……』『キモッ』『さけるイカ:ペッ!』『コロス』『言い方がキモすぎる』『寒気がしたわ』
気持ち悪いコメントは無視して、さっさとパスワードを設定して部屋を建てる。
その時に上手くエルミナが配信画面ではパスワードを隠していた。
相変わらずのナイスサポートだ。
「じゃあウルオメア様の部屋に入りますね」
そう言ってレイラがマルチプレイを選択して、余の設定したパスワードを入力する。
すると、余の建てた部屋にレイラが入ってきて、画面に余とレイラのキャラクターが表示された。
全身一色の角の生えたデフォルメされた人形キャラクター。
「赤いのが余で、青いのがレイラだな」
「なんとも言えない見た目をしていますね」
「確かにな」
『顔は目しか付いてないね』『こいつらぐにゃぐにゃしてるんだよな』『なんで角が生えてんだろう?』『結構可愛くないか?』『そうか?』『可愛くはないだろ』『俺はちょっとだけ可愛いと思う』『マジ?』
リスナーの間で、このキャラクターが可愛いか可愛くないか意見が分かれているようだ。
ちなみに余は普通だと思う。
『ウルオメア様、ここでキャラクターの見た目とステージを設定出来ますよ』
「お、そうなのか」
画面を動かしてみるとコメントの通り、確かにキャラクターの見た目とステージを設定出来るようだ。
「じゃあまずは見た目を設定してみるか」
「かしこまりました」
とりあえず、まずは自分たちのキャラクターの見た目を決めることにした。
ゲームパッドを操作してキャラクターの項目を動かしてみると、全身の色が変わったり着ぐるみを姿になったりカツラを被ったりと様々なバリエーションがある。
『なんか色々あるな』『カツラで草』『結構種類あるっぽい?』『色選択まで含めれば結構種類あるぞ』『ワイのお気に入りは裸エプロン!』『それってただエプロン付けただけだろ』『コイツら基本的に裸じゃん』『草』
確かに裸だな。
横目でコメントを見ながら、キャラクターを設定していたが、別に裸でも良いかと思って全身の色を紫にするだけにした。
「よし、出来たぞ」
「私も出来ました」
どうやらレイラも設定が出来たらしい。
見てみると、余と同じように全身の色を緑に変えただけだった。
「レイラも色を変えただけか」
「シンプルで良いかと思いまして」
「確かに。やはり余たちは気が合うな」
「ええ、そうですね」
レイラは嬉しそうに微笑んだ。
『綺麗すぐる』『ふつくしい……』『眩しい』『ウルオメア様とレイラがてぇてぇ……』『尊みが深い』『ありがとうございます! ありがとうございます!』『モエ〜』『なんか古のオタク居ない?』『久々にモエ〜って見たわ』
「では、次のステージの設定だが……最初だからこのフラットってところにしようと思う。名前からして簡単そうだしな」
「分かりました」
『フラットは平坦でシンプルだから練習には良い』『簡単だしな』『良い選択』『さけるイカ:良いと思います!』
「問題も無さそうだし、早速始めるぞ」
「はい」
『楽しみだ』『どうなるんだろう』『そもそもどういうゲームか知らない』『ぐにゃぐにゃやぞ』
余はステージを決定してゲームをスタートする。
すると、ゲーム画面が切り替わり、中央に平坦な大地があって奥と手前が奈落になっているステージが表示された。
余とレイラのキャラクターはその大地の上で向かい合っている。
そしてカウントダウンが始まった。
「最初は操作確認だ。それが出来たら戦うぞ」
「分かりました」
カウントダウンが終わりゲームが開始された。
早速、余は自分のキャラクターを動かして操作確認をする。
周囲を歩き回ったり、ジャンプやパンチ、キックなどを繰り出す。
『なんか変な動き方してるな』『足が短いから仕方ない』『マジでぐにゃぐにゃしてる』『ぐにゃー』『これでもアクロバットな動きが出来るんだぜ』『マ?』『極めれば自由自在ゾ』
「よし、そろそろいいか」
一通りの操作は出来たと思う。
「私も終わりました」
どうやらレイラも操作確認が終わったようだ。
「では……やるか?」
「何時でも」
『ふたりともやる気満々だ』『火花散ってそう』
余とレイラのキャラクターが向かい合う。
「手加減無用だぞ?」
「私が戦いで手を抜くと思いますか?」
「ふっ……ないな」
『かっけぇ……』『なんだこのセリフ!?』『RP完璧で草』『さけるイカ:流石はウルオメア様!』
「ではいくぞ!」
次の瞬間、余とレイラのキャラクターが走り出し、中央で激しく衝突した。
その反動でキャラクターがぐにょんとなる。
それを気にせず、余は両手でパンチを繰り出す。
レイラも負けじとパンチしてくる。
「……なんか……力が抜けるな」
「はい……」
さっきまでの真剣さが嘘のように力が抜けていく。
何故なら側から見ると、余とレイラのキャラクターが戦っているというよりワチャワチャしているだけにしか見えず、どう見てもゆるいからだ。
『草』『さっきまでのカッコイイセリフが馬鹿みたいに思えてくるゆるさ』『ワチャワチャ感すごい』『めっちゃゆるいな』『初心者だとこうなるゾ……』
その後もワチャワチャしながらポカポカ殴り合っていると、余とレイラのキャラクターが同時に倒れた。
『ダブルノックアウト!』『同時に気絶したな』『先に起き上がって相手を掴んで落とした方の勝ちだ』
ゲームパッドのボタンを連打していると、余とレイラのキャラクターが同時に起き上がった。
そしてまたワチャワチャポカポカ。
「……なぁレイラ?」
「……なんですか?」
「ステージ変えてリスナーと一緒にやらないか?」
「そうですね」
パーティーサバイブはふたりだけでフラットステージでやるゲームじゃないな。
泥沼化するだけだ。
『それが良い』『賛成』『はやく参加したい』『飛び降りて終わらそう』『どうせなら手を繋ごう』
コメントの通り、余はレイラと手を繋いで一緒に奈落に飛び降りた。
画面にはドローの文字。
「なんとも言えん終わり方だ」
「はい」
「まぁいい。では、リスナーを入れてステージも変えて再開するぞ」
『うおおおおお!』『きたああああああ!』『さけるイカ:準備万端です!』『俺の力を見せてやるぜ!』『絶対爪痕を残す!』『名前を覚えてもらうゾ』『まずは参加出来るかどうかだろ』『確かに』
コメントが爆速で流れる。
どれだけ参加したいんだ。
「最初に説明しておくぞ。参加はひとり1回までだ。終わったら速やかに部屋から抜けるように。ボイスチャットは無し。いいな?」
『おk!』『基本』『了解!』『さけるイカ:はい!』『当たり前だよなぁ?』『わかりやした!』
「よし、ではパスワードを公開する」
そう言うと、隠されていたパスワードがすぐに公開された。
その数秒後、部屋にリスナーが4人入ってくる。
その中にはさけるイカが当然のように入っていた。
『は、はえぇ……』『爆速じゃん……』『さけるイカ:いええええええええええい!』『速すぎて草すら生えない』『チャーリー:うおおおおお!』『いいなぁ』『スシヤロウ:きたあああああああ!』『羨ましいぞオイ!』『巌流島:よっしゃああああああ!!』『当然のように居るイカに戦慄した』
「あー、さけるイカは置いといて、チャーリーとスシヤロウと巌流島か。よろしく頼む」
「よろしくお願いします」
『さけるイカ:置いとかないでください!』『チャーリー:よろしくお願いします』『スシヤロウ:よろしくです』『巌流島:よろしくお願いします!』
「とりあえず、ステージはランダムでいいか。参加者は見た目変えたいなら変えて良いぞ。30秒待つ」
余の言葉を聞いてゲームの参加者たちがそれぞれ個性的な見た目に変えた。
チャーリーはグルグル眼鏡。
スシヤロウは寿司の被り物。
巌流島は頭に小さな船を乗せている。
ちなみに、さけるイカはイカの着ぐるみ。
「イカの着ぐるみなんてあるのか」
『さけるイカ:僕も見つけた時は驚きました』
だろうな。
「よし、では始めるぞ」
『参加者はドキドキだろうな』『スシヤロウ:心臓破裂しそう』『破裂したらワイが変わるぞ』
余がゲームをスタートすると画面が切り替わる。
気になるステージは――
「ここは新幹線の上か」
「そのようですね」
どうやら並走する2本の新幹線の上のステージらしい。
それぞれの新幹線の上に3人ずつ乗っている。
『ここかぁ』『ここはアレがあるからなぁ』『アレな』
アレ?
コメントを不思議に思っているとカウントダウンが始まる。
『チャーリー:やるぞぉ!』『さけるイカ:ウルオメア様に勝利を!』『巌流島:落ち着け俺』『スシヤロウ:勝つ!』
参加者がやる気満々なのは良いが、文香は自分が勝つことを考えろ。
そう思っているとゲームがスタートする。
始まった瞬間、参加者たちがそれぞれの新幹線の上で戦い始めた。
その様子は先ほどの余とレイラの戦いとは大違いだ。
それは良いのだが……。
「なんで余とレイラを避けるんだ」
参加者たちは器用に余とレイラを避けて戦っていた。
近付くとススっと離れていく。
「何故逃げる!?」
『そりゃ……ねぇ?』『いきなり自分からふたりに飛び掛かってはいけないでしょ』
どうやら余とレイラには来ないようなので、しょうがないから参加者たちの戦いを観戦する。
そこで、さけるイカが巌流島にヘッドバットを決めて気絶させて新幹線から放り投げた。
『さけるイカ強え』『ガチで練習してきてるな』『巌流島:なんとぉ!?』『巌流島どんまい』
そうやって観戦しているとコメントがざわつき始める。
『おい、そろそろ来るんじゃねえか?』『アレがくるぞ!』『ウルオメア様もレイラも気を付けて!』
「アレってなんだ?」
『複線ドリフトだよ!』
「は?」
次の瞬間――新幹線がドリフトを始めた。
「なんじゃこりゃああああ!」
新幹線が突然、くの字になってドリフトを始めた。
その衝撃で新幹線の上に乗っていたキャラクターたちが吹き飛ばされる。
『チャーリー:死んだあああああああ!』『スシヤロウ:戦いに夢中で落ちた……』
どうやら参加者たちは落ちてしまったようだ。
隣のレイラも落ちている。
しかし、ゲームが終わっていない。
「終わってないぞ?」
『ウルオメア様、新幹線の横をよく見て!』
コメントの通り、新幹線の側面を見ると、なんと文香が新幹線に片手でくっ付いていた。
「なにッ!?」
しかも、文香は片手で余を掴んでいる。
『さけるイカ生きてるぞ!』『しかもウルオメア様を助けてるし!』『さけるイカすげええええええええ!!』『でもこのままじゃ落ちるぞ!』
「さけるイカ! 余のことはいいから手を離せ!」
そう言うが、文香は一向に手を離す気配はない。
文香の奴、本気で余を助ける気だ。
そこで新幹線がドリフトをやめて元に戻る。
その瞬間に文香は余を離した。
すると、余のキャラクターは放物線を描いて新幹線の上に乗る。
どうやら文香は新幹線がドリフトをやめる時の勢いを利用したようだ。
『さけるイカはこれを狙っていたのか!』『マジかよ!』
余はすぐにキャラクターを動かして、さけるイカのくっ付いていた新幹線の側面を目指すがゲームが終了した。
余の勝利で。
「お見事です」
レイラが隣でそう呟いた。
「さけるイカ……お前」
『さけるイカ:言ったじゃないですか。ウルオメア様をサポートするって!』
「はぁ……」
文句の1つや2つ言いたいところだが……。
「ありがとう」
余の口からは自然とその言葉が出ていた。
『さけるイカ:はい!』
その後、数戦したが特に目立つようなこともなく、楽しくリスナーとゲームをプレイ出来た。
そして今日最後のパーティーサバイブ。
『もう最後か』『参加したいゾ』『参加出来たけど爪痕は残せなかったわ』『名前覚えてくれたかなぁ』
流れるコメントを見ていると部屋が埋まる。
「最後の参加者はヤックス、馬場、チョレイ、マスターニンジャだな」
『ま、マスターニンジャ!?』『嘘だろ!?』『マジでマスターニンジャ?』
コメントがマスターニンジャの名前でざわつく。
有名なプレイヤーなのか?
『マスターニンジャ:よろしくでござる』『マジもんじゃん』『これゲームすぐ終わるぞ』『ウルオメア様でも流石に勝てない』
どうやら相当強いプレイヤーのようだ。
だが、余もレイラもパーティーサバイブに慣れてきたから簡単にはやられんぞ。
そう思いながらゲームを開始する。
ステージは飛行機の上。
「いくぞ……!?」
ゲーム開始した瞬間、マスターニンジャが他3人の参加者をアクロバットな動きで瞬殺した。
無情にも気絶した参加者たちは飛行機から落ちていく。
次にマスターニンジャはレイラ目掛けて飛び掛かる。
それをレイラはパンチで迎撃しようとするが、マスターニンジャはそれをヒラリと躱してレイラの脳天に攻撃。
レイラは気絶し落ちていった。
呆気にとられていると余もすぐにマスターニンジャにアクロバットな動きで気絶させられて落ちる。
「は?」
『マスターニンジャ:良い戦いでござった』『これだからニンジャは……』『流石にウルオメア様でも困惑するよなぁ』『だってひとりだけ別ゲーしてるし』『ニンジャ汚い』
「訳がわからん」
結局、その日の配信は最後に謎のプレイヤー、マスターニンジャに持ってかれて終了した。
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