19石 2回目の配信 始めてのゲーム練習武器編

19石 2回目の配信 始めてのゲーム練習武器編




「ん?」


 そこで画面にエルミナからのメッセージが表示される。

 内容は『ツブヤイターの日本トレンド5位に入ったよ』ということだ。

 どうやらとうとうツブヤイターのトレンドに載れたらしい。

 それと同時にリスナーのコメントでも流れてくる。


『トレンド入ってるよ!』『5位だ!』『日本のトレンド5位きた!』『やったぜ。』


「うむ。皆の者のお陰でツブヤイターの日本のトレンド5位になれたようだ」


『おめでとう!』『さけるイカ:おめでとうございます!』『おめでとー』『流石はウルオメア様だぜ!』『このままトップを取ろうや!』『目指せトレンド1位』


「ありがとう。このまま続けて配信タグでツブートしてくれ」


『いえいえ』『どういたしまして』『俺がウルオメア様の力に』『もっとツブートするぜ!』『やぁってやるぜ!』


 トレンドに入ったお陰か、視聴者数が今まで以上に伸びている。

 現在3万人を超えたところだ。


『視聴者数すげぇ!』『3万人超えてる』『えっぐ』


 コメントを見ながら余はゲームパッドを操作して練習場に入る。

 即ロードが終わり、空き地のような場所にキャラクターが移動した。


『ロードはやッ!』『ウルオメア様のマシンスペックどうなってんの?』『配信環境やばそう』『つよつよPC』『やっぱり7chの情報はマジだったのか……』『あのハッキングニキか』


 どうやらリスナーはロードの速さに驚いているらしい。

 まぁエルミナが作成したパソコンだしな。

 ハッキングニキというのは知らんが。


「さて、ここで操作の練習と装備、アイテムの確認をしていくぞ」


『はーい』『了解ー』『練習場なんてあったんだな』『俺1回だけ使ったわ』『ワイは速攻で本番やで』『あんまり使わないよな』『いやいや、ここで遊ぶの楽しいぞ?』


 コメントを見る限りでは練習場を使っている奴は少ないようだ。

 ただ、練習場で遊ぶプレイヤーも居るのだな。


「とりあえずwikiの操作方法を見ながら動かそう」


 余はキャラクターを操作して、歩いたり走ったりしゃがんだり伏せたりジャンプしたり拳で攻撃したりしてみる。


「こんな感じか」


『そうそう』『いいかんじ』『チョーイイネ!』


「しかし、拳で攻撃する状況があるのか?」


『たしかにー』『あんまり使わない』『大体転移後すぐに敵と鉢合わせて武器がなかったら殴り合いになる可能性があるよ』『装備求めて逃げる敵を追い掛けて殴ったりしますよ』『ほとんど開始直後かなぁ』


 なるほど。

 武器が無い序盤で敵と遭遇した場合に拳で戦うことがあると。


『拳のみでトン勝した動画とかあるぞ』『それ見たわ』『縛り動画ね』


「ほぅ。そんなことも出来るのか」


『ただ、最後までほぼ戦いを避けてるから腕よりも運要素強いね』


「なんだ。拳で敵を殺し尽くしたとかではないのだな」


『むりむり』『そんなこと出来ないわ』『出来たらバケモノゾ』『拳で1キルする方が珍しいからな』


 そんなものか。


「よし、次は装備とアイテムを見ていくぞ」


 練習場にはテーブルがいくつか並んでいて、その上に装備とアイテムが置いてある。


「とりあえず左から見ていこう」


 1番左のテーブルに移動する。

 テーブルの上には5色の杖が乗っていた。


「杖か。どうやらこれがMFBGのメイン武器のようだ」


『へー』『流石はファンタジー』『お世話になってます』『剣じゃないのか』『……剣もあるゾ』


「順番に拾って試していこう。まずは赤い杖だ」


 テーブルの上から赤い杖を拾う。

 練習場なので杖を拾っても杖は消えない。

 無限だ。


「これは炎の杖レベル1だな」


『炎の杖ね』『見た目通りだな』『1番使う』『使いやすい杖だ』『レベル1ってなに?』『みんなよく使ってる』


「レベルっていうのは、そのままの意味でその装備のレベルだ。レベルは1から3まであって、レベルが高い方が性能が高いようだ』


『なるほどー』『解説たすかる』『レベル高い方が良い』『でも、レベル1でも使える』


 レベル1でも戦いは出来る訳だ。


「さて、炎の杖の性能だが、炎の杖は拳大の炎の球を発射する武器で中距離での戦闘に優れている」


『中距離か』『基本これで撃ち合うね』『ファイアーボールだな』『さけるイカ:使用率1位の武器です!』


 炎の杖は1番使い勝手の良い武器らしい。


「では実際に魔法を撃ってみよう」


 余はなにも無いところに照準を向けて攻撃ボタンを押す。

 が、なにも起こらない。


「む? 魔法が撃てないな」


『さけるイカ:ウルオメア様、杖は魔石を使って杖に魔力をチャージしなきゃ使えませんよ!』


「そうなのか」


 wikiを見ると確かに魔石を拾って杖に魔力をチャージしなければ魔法が撃てないと書いてある。

 魔石にも杖と同じように属性があって同じ色の魔石ではないとチャージ出来ないようだ。


「助かったぞ、さけるイカ」


『ナイス』『よくやった』『さけるイカ:ウルオメア様が僕の名前を!』『裏山』『俺が教えたかった』『名前覚えられるのいいなぁ』『お前ばっかりずるいゾ』


 余は杖の近くに置いてあった赤い石を拾う。

 これが炎の魔石か。

 炎の杖を持った状態でチャージボタンを押すと、杖に魔力がチャージされた。


「おぉ。チャージが出来たぞ」


 体力バーの上に魔力バーが表示される。


「早速撃ってみるか」


 再びなにも無い場所に照準を向けて攻撃ボタンを押す。

 すると、『ボッ』という音出して炎の球が飛んでいった。


『でたぁ』『詠唱なしか』『ファイヤーボール!』


 攻撃ボタンを押しっぱなしにしすると、炎の球が連射される。

 10発撃つと杖の魔力が無くなった。


「炎の杖は10発まで連射可能と。ただ照準が撃つごとにブレるな」


『連射たのちい』『結構ブレるぞ』『そこら辺は腕でカバーするんだ』『ウルオメア様、溜め射もあるぞい』


「確かに溜め射撃も書いてあるな」


 武器のモード切り替えをすると、炎の杖のアイコンの上のモードが【連射】から【溜め】に変わった。

 再び炎の魔石を拾って杖に魔力をチャージして、構える。


「やるぞ」


『おk』『はい』


 攻撃ボタンを押しっぱなしにすると、杖が僅かに光る。

 そして攻撃ボタンを離すと炎の杖から通常よりも大きな炎の球が発射された。


『デカイ(確信』『強そう(小並感』


「炎の杖の溜め射撃は1発で魔力を半分使うから2発撃ったら魔力をチャージしなくてはならないな。威力は通常の2倍ほどらしい」


『へー』『強い』『基本は連射か?』『溜め射は一撃で決めたい時とかに使う』


 確かに基本的に連射の方が使いやすいか。

 溜め射撃は威力2倍とはいえ、2発しか撃てないし溜める時間もあるからな。


「よし、次にいくぞ」


 余は炎の杖の隣に置いてある茶色の杖を拾う。


「これは土の杖レベル1だな。主に近距離で使う武器で前方広範囲にツブテを発射する杖だ。ただ2発しか撃てないし溜め射撃もない」


『ほほー』『散弾だな』『射程距離は短いゾ』『ショットガンみたいなものか』『ストーンバレット!』『近距離最強っぽい』『ま、炎の杖あれば近距離もなんとかなるけどな』


 確かに近距離では強そうだが、炎の杖でなんとか出来そうでもある。


「よし、撃ってみるぞ」


 土の魔石を拾って杖に魔力をチャージしてから攻撃ボタンを押すと、『バァン』という音を出して前方にいくつものツブテが発射された。


『ワイこれ好き』『俺もすこ』『強い(確信』『土の杖を好んで使うプレイヤーも居るけど、炎の杖ほどじゃない』『初心者は土の杖好きだよな』


 確かにこれで敵を倒せたら気持ち良いかもな。


「次にいくか」


 土の杖の隣に置いてある黄色の杖を拾おうとするが拾えない。


「ん?」


『さけるイカ:1度に持てる杖は2本までなんですよ!』


「そういえば、そう書いてあったな。忘れていたぞ。やるな、さけるイカ」


『さけるイカ:へへへ』『ま た お 前 か』『出遅れた』『反応はえぇ!』『タイピングはやすぎる』


 インベントリを開いて、とりあえず土の杖をその場に捨てる。

 そして黄色の杖を拾った。


『さよなら土に杖』『諸行無常』『迷いなく捨てられて草』


「さて、この杖は雷の杖レベル1だ。高威力の雷の槍のような魔法を高速で発射する長距離用の武器。発射出来る回数は一度のみ」


『fmfm』『長距離狙撃用武器だな』『スナイパーライフルっぽいやつ』『これで芋スナしたい』『サンダーランス!』


 雷の魔石を拾って杖に魔力をチャージ。

 遠くに照準を合わせる。


「撃つぞ」


 攻撃ボタンを押した瞬間『バシュッ』という音とともに雷の細い魔法が高速で飛んでいった。

 1発撃っただけなのに照準がかなり上を向いている。


「すごい反動だ」


『めちゃくちゃ強そう』『すごい上向いてるな』『実際強い』『プロスナイパーは遠くからこれでヘッドショットしてくるからな』『これに何度殺されたことか』『狙撃に自信があるなら常に1本持っておきたい』


 確かに強力な武器だ。

 遠くから一方的に攻撃出来る可能性も高いしな。


「さて、次」


 インベントリから雷の杖を捨てて、隣にあった緑色の杖と緑色の魔石を拾う。


「これは風の杖。使用すると前方に風の半透明な壁を発生させる魔法で、飛んできた魔法を防ぐ。まぁ防御魔法だな。使用中に魔力が徐々に減っていくタイプで、防いだ魔法の威力によって追加で魔力が減る」


『ここで防御系か』『風は攻撃じゃないのね』『ソロじゃあまり使わないな』『チームプレイでは誰かひとりが持ってもいい杖』『ウインドシールド!』


 風の魔石で杖に魔力をチャージして攻撃ボタンを押すと、前方に半透明の壁が発生した。

 横幅は3人分くらいだ。

 攻撃ボタン押しっぱなしで壁が発生し続けて、魔力が少しずつ減っていく。


「うーむ。練習場で使っても微妙だし地味だな」


『微妙』『ワイは好きやで』『地味だ』『使ったことないわ』『スクワッドで輝くから……』『ほんとぉ?』『……』


「最後の杖にいくぞ」


 余は風の杖を捨てて青い杖と青い魔石を拾う。


「この青い杖は水の杖。魔力を消費して自分か仲間の体力を瞬時に回復する。回復魔法の杖だな。消費魔力は回復する量に依存する」


『回復魔法キタ!』『これも地味じゃね?』『おっおい待てい。水の杖はめちゃくちゃ重要だゾ』『マ?』『ウォーターヒール!』『使えば一瞬で体力回復出来るのが強い』『でも、杖2本しか持てないからマジでこれ拾うか悩む』『たしかに』『チームなら必ず誰か持ってた方が良い』


 なるほど。

 確かに体力を回復する手段は大事だし、瞬時に回復出来るのも良い。

 チームの誰かが持っていた方が良いのも納得だ。


「これで杖は終わった訳だが」


 そこでひとつ気になった。


「そういえばレベル1以外の杖は置いてないのか?」


 このテーブルに置いてある杖はどれもレベル1だった。


『拾える装備のレベルは基本的に全部1で、レベルを上げるアイテムがあるからそれを使ってレベルを上げる。練習場にもあるからあとで出来る』


「なるほど。そういうシステムなのか。助言感謝する……名前の読めない奴」


 助言コメントしてくれた奴の名前は読めなかった。


『さけるイカ:うわぁぁぁ遅かったぁぁぁぁ!!』『ぎゃああああああああ間違えて普段使ってない適当な名前のアカウントでコメントしちまったああああああああ!!』『発狂してる奴ふたりいて草』『さけるイカざまぁww』『あーあ、やっちまったな』『ウルオメア様に名前呼んでもらって覚えてもらえるチャンスだったのに』『かわいそかわいそなのです』


 確かに可哀想だな。

 まぁ今からアカウント変えても特定出来ないし、しょうがない。


「では、隣のテーブルにいこう」


『了解です』『はーい』『あいあい』『ああああああ!』『コイツ狂化してやがる!』


 隣のテーブルに移動するとテーブルの上には西洋剣と鉄の盾が置いてあった。


「……剣と盾だな」


『近距離武器きたな』『ファンタジーっぽい』『杖だってファンタジーっぽいダルルォ!?』『剣も盾もあったんだ?』『ロングソードたんキタァァァァ!』『ヒーターシールドたんこそ至高!』『なんだコイツら』『ロングソードとヒーターシールドには一部で妙な人気があるんだよ……ほとんどゲーム内では使われないが』『MFBGのマスコットってゆーか、ゆるキャラみたいなもんだ』


 ほぉ。

 どうやらこの剣と盾は使われないが愛されているらしい。

 試しにロングソードを拾って振ってみる。


「普通だな」


『これこそ地味』『風の杖以下』『きゃわたん』『古い』『やはりヒーターシールドこそ至高』


 次にヒーターシールドを拾おうとするが拾えない。

 ロングソードを捨ててからだと拾えた。


「なるほど。ロングソードとヒーターシールドは同時には持てないのか」


『へー』『変な仕様だ』『さけるイカ:僕が教えたかった』『この仕様の所為でロングソード派とヒーターシールド派に分かれたんだよな』『開発が同時に持てるようにすれば生まれなかった対立』『剣と盾を一緒に持てないってなんだよ』『何故か盾も近接武器に分類されてんだよな』


 近接武器はひとつしか持てない仕様で盾も近接武器に設定されてるから同時に持てないのか。

 確かに変な仕様だな。

 だから、剣派と盾派で分かれたのか。



「ヒーターシールドは構えることで魔法のダメージを軽減出来る。近接攻撃は完全に防げるらしい。また構えてない時もヒーターシールドを背中に背負うことで背後からのダメージを軽減出来るようだ」


『ええやん』『有能』『魔法は完全には防げないのね』『やはりロングソードよりヒーターシールド!』『いやいやいや、ヒーターシールドは攻撃出来ないだろうが!』『くだらねー』


 確かにそんなことで対立する必要ないだろ。


「ほら、喧嘩はやめろ』


 そう言うとすぐに喧嘩は終わった。


『はーいママ』『ママァ』


「お前らのママになった覚えはない」


『さけるイカ:バカばっか』


 確かに。

 でも、さけるイカ……お前が言うのか。

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