17石 2回目の配信準備
17石 2回目の配信準備
余が買ってきたカレールーのパッケージをよく見ると、激辛と書いてあった。
由亞の家庭は何時もこれを食べているのかと戦慄しながらなんとかカレーを完食する。
余とエルミナは汗が止まらなかったが、レイラは嬉しそうに食べていた。
もしかしてレイラは辛党だったのだろうか。
そんなことを思いながら余は眠りにつく。
そして、2回目の配信日になった。
何時ものように3人でダイニングに集まって朝食を食べる。
「レイラ、ゲームの調子はどんな感じだ?」
「順調です」
「師匠はもうソロならほとんど負けないよぉ」
「ほぉ……それはすごいな。流石レイラだ」
「恐縮です」
ゲームをやったことのない人間が半日かそこらで勝てるようになるのは、とてもすごいことだ。
普通の人間からみれば恐ろしい上達速度だろう。
これもレイラの人並み外れた身体能力と器用さの賜物だな。
「ですが、負けることがまだあります」
「有名プレイヤー……特にランキング上位のプレイヤーでプロレベルの腕を持つ相手には師匠でもまだ厳しいんだよねぇ」
「そこはしょうがないだろ」
初心者がプロゲーマーに勝てたらプロの立つ瀬がない。
「しかし、ウルオメア様の助っ人として情けないプレイは見せられません」
「それに今日の配信の最終目標は勝ってインパクトを残すことだからねぇ。まあ運が悪くなければプロレベルのプレイヤーになんて当たらないよぉ」
「そうか」
確かに人気ゲームで人の多い時間にプレイするのだから、上位プレイヤーに当たる確率は低いだろう。
……フラグにならなければいいが。
「なので、私は配信ギリギリまで腕を磨いておきます」
「わたしはネットで情報収集をしたり、配信用のサムネイルを作ったりしているよぉ」
「分かった……なんか余だけやることが少ないな」
ふたりにばかり働かせて申し訳ない。
「ウーちゃんは今日の配信に備えていればいいのぉ」
「エルミナの言う通りです。配信ではウルオメア様がメインなのですから」
「そうか……そうだな。じゃあ今はふたりに任せて余は余で配信に備えておこう」
「うん!」
「お任せください」
そうして、ふたりは配信部屋に篭り始めた。
余は何時ものようにリビングのソファーに座る。
「うーむ。とりあえずツブヤイターのチェックをするか」
スマホでツブヤイターを開く。
余のフォロワー数は4万を超えていた。
順調に増え続けている。
「うむ。順調だ」
そこで余はツブートをすることにした。
まだ3回くらいしかツブートしていないのは、少し寂しいしな。
「今夜の配信楽しみとかツブートしておけばいいか?」
『皆の者、今日は2回目の配信日だ。
今人気のゲームを初見プレイするからな。
楽しみ待っているのだぞ』
色々考えた結果、こうツブートした。
すると、すぐにリツブートといいねが大量にされる。
「普通はこういう時、通知止まんねぇとか言うのだろうな」
余は最初からツブヤイターの通知を切っているので、そういうことはない。
少しだけ通知が止まらない状態も味わってみたかったが、今やると面倒になるのでやめておく。
そこで余のツブートに返信が大量に来ていたので、見てみる。
『絶対見る』『必ずいくゾ』『リアルウルオメア様楽しみ』『人気ゲームってあれかな?』『イクゾー! デッデッデデデデ!(カーン)デデデデ!』『楽しみすぎてテンションやばい!』『全裸待機中』『了解!』
こんな感じのツブートがほとんどだ。
その中で2割くらいは批判的だったり変なものだったので無視する。
まぁ8割肯定的なら上々だろう。
時間もあるので、とりあえず見た返信はいいねして、一言ずつだけ返信しておく。
次に配信タグでエゴサして、ツブートのいいねをポチポチする。
そうしている内に昼になった。
ダイニングでレイラの作ったチャーハンを3人で食べながら会話する。
「師匠どんどん上手くなってるねぇ」
「まだまだ力が足りません」
「えーでも、さっきは上位プレイヤーと一騎打ちになってたの見たよぉ」
「そうなのか?」
「うん。相手はトップ100に入ってるプレイヤーだったねぇ」
「ですが、結局負けてしまいました」
「惜しかったんだけどねぇ」
「負けは負けです」
「だが、次は勝つのだろう?」
「はい。次は勝ちます」
「流石師匠」
レイラならそう言うと思った。
「あ、そうだ。ウーちゃん」
「なんだ?」
「今日の配信ページ作ったからツブヤイターで宣伝しておいてぇ。サムネも作っておいたからぁ」
「分かった。お疲れ様」
「ありがとぉ。簡単なものだけどねぇ」
そんな感じで昼食&話し合いは終わり。
ふたりは再び配信部屋に。
余はリビングのソファーに戻った。
「宣伝宣伝」
『今日の配信ページが出来たぞ!
前と同じく21時からだ!
人気ゲームを初見プレイするぞ!
配信ページ:xxxxxxxxxxxxxxx』
「これでよし」
すぐに大量の返信とリツブートといいねがされる。
「それにしてもエルミナはサムネも作れるんだな」
配信ページに表示されているサムネがそれっぽい感じになっている。
もうエルミナは機械関係ならなんでも出来そうだ。
まぁイラストとかは書けないと言っていったから、すべては出来ないのだろうけどな。
このサムネも有名なフリーイラストサイトの素材が使われているし。
「うーむ。いずれはオリジナルのイラストが書ける人間が必要になってくるか」
金があればイラストレーターに依頼でもいいんだがな。
「まぁまだ先の話だ」
今考えてもしょうがないだろう。
そう思いながら余は午前中と同じように余のツブートの返信にいいねをしていった。
☆
3人で夕食を食べてから配信部屋に集まる。
あと1時間ほどで21時……配信時間だ。
余は衣装に着替えて準備万端。
レイラもやる気十分だ。
エルミナは何時ものように笑顔だが、問題がない証拠だろう。
「じゃあ、今日の流れを確認するねぇ」
「頼む」
「はぁい。まずはウーちゃんがプレイするゲームをwikiを見ながら説明するのぉ。知らない人も居るだろうし、ウーちゃん自身が学ぶ必要があるからねぇ」
「うむ」
「そのあとはウーちゃんが初見プレイをしてグダグダ具合を見せてリスナーにウーちゃんが初心者なのを認識させる」
「そこが大事だな」
「うん。そしてゲームをプレイしていくうちにウーちゃんはメキメキと腕を上げていく。ウーちゃんならすぐに上手くなるだろうしねぇ」
「当然だ」
「最初のグダグダ具合からは想像出来ないほどの成長を見せてリスナーを驚かせるのですね」
「その通りぃ! そこで出来ればウーちゃんが勝ってくれると良いんだけど、流石にそこまで難しいだろうねぇ。ここまでが1時間半くらいかなぁ」
「うーむ」
確かに1時間半では余でも難しいか。
「すごいけど勝てない。そこで謎の助っ人が登場ぉ!」
「私ですね」
「そう!」
そこで気になることがあった。
「レイラも姿を見せるのか?」
「師匠が姿を見せるのは流石にまだ早いかなぁ。わたしたちが配信に出るのはチャンネル登録者がもっと増えてからだねぇ」
「そうか」
「師匠にはあくまで謎の助っ人として登場してもらうよぉ。プレイヤーネームも分からないものにしているからバレない」
「なるほど」
「ウーちゃんと師匠がチームを組んで勝つ! いくら助っ人が居るとはいえ、ゲームを始めたばかりの初心者が勝つのはインパクトがあるからねぇ」
「確かにな」
「とはいえ、ウーちゃんがなにもしないのは駄目だからねぇ?」
「分かっているさ」
「師匠のサポートを最大限もらって勝ってねぇ!」
「任せろ」
「精一杯サポートさせていただきます」
「頼む」
「それで、勝てたらリスナーを入れてプレイする。これは別に勝てなくていいよぉ。あくまでリスナーとの交流だからぁ」
「うむ」
「ただ、流石にボイスチャットは怖いから無しねぇ。配信中はわたしも師匠も黙ってるから頑張って実況してねぇ」
実況はあまり自信がないが、まぁやるだけやろう。
「タイミングとかは配信中にわたしがウーちゃんのモニターに文字を表示させて教えるからぁ」
「助かる」
「こんなところかなぁ」
「じゃあこのままで配信時間まで待つか」
「そうだねぇ」
「分かりました」
余はモニターの前に座ると画面には配信ページが開かれていた。
まだ1時間前なのに既に配信ページには1000人以上が待機している。
「多いな」
「もうチャンネル登録者数が6万人を超えてるからねぇ」
そうなのだ。
もうファゴアット帝国のチャンネル登録者数は6万人を超えている。
恐ろしい速度だ。
「配信が始まればもっと増えるよぉ」
「そうだろうな」
エルミナの予想では今回の配信でチャンネル登録者数が10万人を超える予定だからな。
どこまで伸びるのやら。
「あ、さけるイカだ」
そこで突然エルミナがモニターを見てそう言った。
さけるイカは余を応援している奴だ。
コメントに居たのか?
余もコメントを見てみる。
『さけるイカ:全力待機中。楽しみで仕方がない』
「本当に居たな」
まぁコイツなら居ない方がおかしいが早すぎるだろ。
そこで、さけるイカに他のリスナーが反応する。
『あ、元ガチャ神だ』『タオ手再開するんだよぉ!』
「コイツそんなに有名なのか」
「ちょっとだけ調べてみたんだけど、タオ手に月何百万と課金してた上にwikiにデータとかも提供してたらしいよぉ」
「……そりゃ有名になるよな」
『お前だけウルオメア様にフォローされてずるいぞ』『ウルオメア様に唯一フォローされた男』『裏山』『ゆ゛る゛さ゛ん゛!!』『ぶっ飛ばす』『神の裁きを』『ナメクジくらえ!』
どうやら、さけるイカが余にフォローされたことを叩かれているらしい。
ちょっと悪いな。
『さけるイカ:あれは僕の努力が実った結果だよ。羨ましいだろう? ウルオメア様にフォローされてないやつ、おりゅ?』
前言撤回。
コイツ全然堪えてないぞ。
それどころか煽ってやがる。
少しでも悪いと思った余の気持ちを返せ。
「でもまぁ面白い奴だよな」
「だねぇ」
再び、さけるイカが叩かれ始める。
『(#^ω^)ピキピキ』『もう許さねぇからなぁ?』『ボートを用意しろ。一人乗りでいい』『お前を殺す デ デ ン !』『殺されてぇかお前……』『今、俺の堪忍袋の緒が切れた!!』
なんだかんだでリスナーは楽しんでいるようだ。
『さけるイカ:なんなの……この人……』
『お前のことだゾ』『鏡見ろ』『ブーメラン』
その後も配信前なのにリスナーたちは盛り上がっていた。
そして――配信時間がやってくる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます