第10話 ハーレム勇者 勇者、無双する

 サイトウは城下町を進む。途中で魔物に襲われている女魔法使いを救助する。ここまで隠れていたところを魔物に見つかり、襲われそうになっていたのをサイトウが一撃で倒したのだ。

「あ、あなたねえ……も、もっと早く助けにきなさいよ!」

 危なく殺されそうになったところを助けられた女魔法使い。助けてやったサイトウにそんな失礼なことを言う。だが、そう言いながらも、明後日の方を向いてチラチラとサイトウの様子を見てくる。

「俺はサイトウ。勇者をしている。君は?」

「ル、ルーセット……か、感謝しなさい……。私を助けることができて」

「はいはい」

 サイトウはそう返事をしたが、心の中は(ツンデレ、キター)の文字が躍っている。

 ルーセット。ちょっとツンデレな感じの女の子だ。だが、サイトウはツンデレが大好きだ。ルーセットも自分に気がある素振りなので、なにを言われても可愛いとしか思えない。

「じゃあ、ルーセットちゃん、俺らとリッチ退治に行きますか?」

「は、はあ……何を言ってるのあなた。あんな悪魔級の化けも似に勝てるわけないじゃない!」

「そうかな」

 またもや現れた魔物(レッサーデーモン)を見ることなく、片手から放たれた攻撃魔法で瞬殺したサイトウ。それを見て女魔法使いは絶句する。

「で、でたらめですか、あなたは……」

「さあ、一緒にリッチを退治しに行きましょう。俺のお姫様」

「ば、ばか……誰が初めてあった男と行動するか……でも、あの……」

「ん?」

「少しくらいなら付き合ってあげてもいいわ」

(ううううう……ツンデレ~御馳走様です!)

「じゃあ、行きましょう」

 中級魔法使いのルーセットも部下に加えたサイトウ。さらに突入した城に乗り込むと奴隷にされていたメイド長や美しいメイドたちも助ける。

「くくく……まさか、ここまでやって来るとは……だが、この魔神アリエスが敬愛するリッチ様のため、お前たちをここで消し去る」

 リッチの立てこもる王の間の扉前。ここを守るのはリッチの親衛隊の女魔神。頭に小さな角を生やし、口元から牙も出ているが顔は美形。

 そして身に付けたコスチュームは、どう見てもハロウィンの小悪魔姿。いろんなところがはみ出していて、女魔神らしく、男を誘惑する、実にけしからん姿である。

「魔神の姉ちゃん、君は殺すのは惜しい。黙って通してくれれば酷いことはしないけど」

「なっ……ば、馬鹿にするな人間……お……な、なんだ……体の自由が」

 サイトウは無詠唱で魔法を唱えていたのだ。魔神アリエスは手足をピクピクさせてその場に崩れ落ちる。

「ああ、魔神にも効くんだな……この金縛りの魔法。君はもう抵抗ができない」

「な、なにをする……お前は鬼畜か~」

「俺が鬼畜だと……。そんなわけないじゃないか。俺は正義を愛する勇者なんだ。女の子には特に優しいよ」

 サイトウは抵抗できない女魔神を四つん這いにすると、パンツをずらす。

「ち、ちょ、ちょっと待て、私は魔神だぞ、こんな屈辱的な格好は」

「魔神に対して素手による攻撃を開始だ。せいの!」

パン。

 甲高い音が炸裂する。女魔神の豊かな尻がたゆむ。

「はい、屈服するまでお尻たたきの刑だよ」

 魔法効果『浄化』付きのきつい叩きだ。

「うあ~ん……」

 女魔神とて、勇者の数十発の尻たたきに耐えられるはずがない。


 最後の防衛ラインを軽く突破したサイトウ。トロトロになった女魔神アリエスを支配下に置くと、扉を開けて最終ボスのリッチの前に出た。

「さあ、リッチ。覚悟しろ!」

 勇者サイトウは玉座に座るリッチをにらむ。玉座に座った骸骨はゆっくりと立ち上がり、そしてぶるぶると震える骨の向き出た腕をサイトウに向けた。

「お、お前がここに来ることは分かっていた……だがな……それはなんだ!」

「はあ?」

 サイトウはリッチがかなり怒り狂っていることに合点がいかない。

「何を怒っている?」

「お、怒るというか、さすがの我も怒りを通り越すというか……」

 リッチはサイトウの後ろを指さしている。

 サイトウは振り返る。別に怒ることはない。後ろには女戦士に女神官、女騎士に女魔法使い。公女様にパツンパツンボディのメイド長。可憐なメイドたち。

 淫らな目でサイトウのことしか見ていないかつてのリッチの部下の女魔神。みんなサイトウに目がハート状態。そんな女を20人ほど従えているのだ。

「お、お、お前のようなふざけた奴に、この我が……不死の王と言われたこの我が……倒されるわけにはいかぬ。絶対にいかぬ!」

 リッチの叫びが虚しく響いた。

「あ、そう……」

 サイトウは面倒になった、さっさと倒して公国を再興しないといけない。それに後ろでサイトウのことを崇拝する可愛い女の子たちにカッコいいところ見せないといけない。

「面倒なので、一撃ね。シャインブレード×100」

 サイトウがそう呪文を放つと光り輝く光の剣が100本召喚され。それが全方向からリッチへと降り注いだ。リッチはどうすることもできない。

「う、うそだ~。こ、こんな結末は~っ……ありえない……信じない……ぐああああああっ」

 体が消えていくリッチ。

 アンデッド最強と言われる大ボス。ゴブリンよりも戦闘描写は短い。

「こ、これで終わると思うな勇者よ……本当の恐怖は……これからお前に……」

 消え去るときにそうリッチは言い残した。

「本当の恐怖だって?」

 サイトウは気にも留めない。恐怖なんてあるわけがない。何といっても自分は最強なのだから……。

 後ろではサイトウによって助けられた女の子たちが大騒ぎしている。みんなキャーキャーと叫び、サイトウを賞賛する。

「素敵だわ、サイトウさん」

「サイトウ様は私の一番のお方ですわ」

「結婚して~サイトウ様~」

「お主ほどたくましい男は魔界にはおらなんだ。その種を我におくれ~」

「サイトウさん、好きです~」

 その後のサイトウは忙しくなった。リッチの残党を掃討しつつ、公国の立て直し。サイトウが剣を振るい、魔法を唱えた分、悪は滅び、助けられた女性が増える。

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