第2話 ナイスバディなら宇宙人でもいいよね?

 ファースト・キスを宇宙人に奪われて気を失った俺は、ベッドの中で汗だくで目を覚ました。

 なんだ夢か、と窓を見る。

 見慣れたベランダで、宇宙人が忙しそうに働いている。

 ケーブルを繋いでパソコンをしている者。

 火花を散らす器具を使っている者。

 落下の衝撃で飛んでしまった部品を運んでいる者など様々だ。

 ピロピノスがこちらに気付いて、手を振る。

 みんな同じ姿をしているのに、リアクションで彼女だと分かる。俺は手を振り返してカーテンを閉めた。


 授業が耳に入って来ない。

 ショックで熟睡出来なかったらしい。本日10回目のあくびをした。

 帰ったらもう居なくなっていて欲しい。

 そんな願いを込めて、暇そうなクラスメイトを誘ってカラオケに行った。

 ついでに給料日前にもかかわらずファミレスで夕飯をとった。クラスメイトの山田と浜田は意外と面白い奴だった。


 恐る恐る、自室のドアを開ける。

 そーっと中を覗き、窓に視線を向けると、残念ながらまだ居た。

 頼むから宇宙に帰ってくれよ、もう。


 ピロピノスがジッとこちらを見ているのが、カーテン越しにでも分かる。


「タケシ、アケテ」

「やだよ。俺もうキスとかしたくない」

「ワタシ、彼女」

「やっぱ別れる。あんなデカくなるなんて聞いてねーし」

「ヒドイ」


 シクシクとすすり泣く声。

 なんだよ、泣くなよ宇宙人だろ。いや宇宙人だからって、感情が無いとは限らないか。

 だんだん罪悪感が募ってきた。


「ワタシ、キスシナイ、シヌ」

「死ぬ?」

「エネルギー、ヒツヨウ」


 俺から口移しで地球人のパワーを貰いたいって事か?

 宇宙人だし、色々あるんだろうな。

 なんだ、そうか。別に俺のことを好きな訳じゃないのか。


「分かった。キスするよ」

「タケシ!」

「けどさ、体を大きくしたり小さくしたり出来るんだから、もっと地球人っぽくなれないか?」


 無茶振りだと分かってる。

 また泣かれるかもしれない。それでも、意地悪を言ってみたい気分だった。


 カーテンの向こうが発光する。

 ボン・キュ・ボンのスーパーモデル体型シルエットが現れた。

 まさか、本当になれるなんて!


「ピロピノス!」


 ガラリと開けた窓の向こうに居たのは、鉄 で出来たナイスバディに銀の球体顔。

 あーそうだよなー。顔については何も言わなかったもんなー。俺のミスだよなー。


 俺は目を閉じ、彼女のキスを受け入れた。

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