宇宙人彼女はキスしないと死ぬらしい

秋雨千尋

第1話 タコ型の宇宙人がベランダに襲来

 学校から帰って、一人でコンビニ飯を食べてダラダラしていたら、ベランダに何か落ちてきた。

 今朝、大家さんに言われた事を思い出す。

 最近このあたりに強盗が出るのだと。

 恐る恐る窓を開けると、どうも壊れた宇宙船みたいだ。土星みたいな、よく見るタイプの形をしている。

 かなり小さい。両手に乗るぐらい。

 出入り口が開いて、手の平サイズの宇宙人が出てきた。


 これまたよく見るタイプの、銀色のタコみたいな姿をしている。


「ワレワレは、宇宙人ダ」


 どこまでも基本的。何一つ裏切らないその存在に目頭が熱くなった。

 憧れの都会の高校、夢だった一人暮らし。

 友達とゲーム大会だ、タコ焼きパーティーだと期待に胸ふくらませていたが、現実は冴えないものだった。

 ここに来てこんな非現実に出会えるなんて。

 人生捨てたもんじゃない!


「初めまして。地球にようこそ」


 手を伸ばすと、宇宙人はチョコンと手の平に乗ってきた。タコ足部分は冷たくて鉄っぽい感触をしている。

 指先で丸い頭を撫でてみる。

 宇宙人は触手を二本顔に当てて、照れているように動かしている。可愛いなこいつ。


 そのうち二本の触手をこちら側に伸ばしてきた。撫でたいのかなと思って顔を近づけると、頰にキスされた。

 冷たい鉄の玉が当たった感じではあるけど、照れたようなリアクションから、間違いなくキスだ。やっぱり可愛いな。


「ワタシ、ピロピノス」

「俺、タケシ」

「ワタシ、彼女、ナッテイイ?」

「いいよ!」


 俺はすっかり浮かれていた。

 相手は宇宙人とはいえ、小さくて無害そうだから気を緩めていた。


「アリガトウ」


 ピロピノスは巨大化して、8本の触手で俺の体をガッチリ掴んできた。指一本動かないぐらい強く締め上げる。

 そして至近距離に来る銀色の球体顔。

 あ、これ食われるヤツだ。俺の人生ここまでか。せめて成人したかったな。


 走馬灯が駆け巡り、唇を奪われた。


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