第2話

死ぬわよ。の言葉がぐわんぐわん、と頭に響く。

え、何?俺死ぬの?

固まってしまった俺にやれやれと言いたげに頭を振ってエニはディルドを俺の目の前からおろした。


「あなたがいた世界では、今日のこの嵐の影響でこのビルは倒壊する。この店内に、いいえ、このビルにたった1人でいたあなたを下敷きにしてね。」


老朽化だなんだと言われていたビルなのは知っていたがそこまでだったとは…。

5階建ての雑居ビルで1階2階はうちの店が借り上げていて、上の階に入ってるテナントは確か、中国人だか韓国人がやってるエステだった気がしたがこのビル今誰も居ないのか…。なんか寂しい。

突然、死ぬって言われて動揺もしたが話を聞いていくうちにふーん、へぇー。と何故か凪いだ気持ちになっていく。


「あなたが私のお手伝いをしてくれるのであれば、あなたが私の従者という事に世界に認識されるから、あなたが干渉しているこのビルが倒壊することも無いし、あなたが死ぬ未来は無くなる。」


エニの言葉にうーん、と唸り声をあげてしまう。

何せ、ツッコミどころが満載だ。

とりあえず、一旦深呼吸をしてからエニの顔とおっぱいを見る。


「いくつか質問。」

「はい、なんでしょう。」

「ボクは何でいきなり引っぱたかれたんでしょうか?」

「神様は人間が考えている事が大抵の事ならわかります。」

「かみさまこわい。」


そのたわわなおっぱいをすげぇなぁ、柔らかそうだなぁ。と見た瞬間に、エニから左頬にビンタを食らった。

ジンジンと痛む頬がなんとなく今起きていることが現実なのだと認識させてくれる。


「えっと、質問その2。仮に手伝ったとしてここの営業とか仕入れとかはどうなるんだ?」

「それは簡単なことよ。あなたを通して商いをする事になるから、商品の補充や追加は普通に"今まで通り"おこなってちょうだい。ただ、営業に関しては、あなたが"干渉している"から、という理由でこのビルの倒壊が間逃れている訳なのでこのビルから外に出ては行けなくなるわ。と言っても人間には休息が必要だから1日くらい離れるのは問題ないわ。」

「え。じゃあ、俺は今まで通り家に帰ったりとか、バイトの子達が出勤してきたりとか出来るんだな?!」

エニの言葉を聞いて、なんだ今までと変わらないじゃん!と思い確認すればエニの表情が少し曇る。


「あなたがいた世界の人間がこのお店に立ち入ることは基本的に出来ないの。家はそうね、このビルの3階に空間を繋げてしまいましょうか。」


エニの言っている意味がわからない。

だって、発注も外出も出来るんだろ?おかしくねぇの?その理論。

拳をグッと握り、エニに「意味がわからねぇ」と言えば悲しげに微笑まれた。


「このビルはいわゆる、聖域という扱いになっているの。外には結界があってあなたの世界とはガラス1枚隔てたようになってしまっていて、あなた以外の人間は中に入れない。荷物のやり取りであれば無機物なので可能よ。」


有機物は転移の処理が難しいので、と笑われればなかなか昨今の異世界転生ものの作品よりも意外とシビアなんだな…と思った。

いやまぁ、着の身着のまま飛ばされるとかよりは店ごと転移だからマシか。

なんとなく状況は飲み込みながらも、ここからが重要な質問!と声を大にして言う。


「商品を補充するにしろ、なんにしろ、金がかかる。それはどうなんだ?」

「それならご安心を。私の世界での通貨は4種類なのでそれで支払ってもらって、そこは神様特権ってことでアレにポンと入れたらあら不思議、日本円に変わるようにしてあげるわ。」

「ちなみにその4種類の通貨の日本円に直した時の金額は?」

金に関してのところはチート能力使ってくれるようで、レジに通貨を入れれば日本円に直してくれるらしい。

うーん、面倒なことが無いっていうのは魅力的だ。


「日本円での交換レートが金貨は1万円、小金貨が5千円、銀貨が千円、銅貨が100円ってところでどうでしょう?まぁ、私の世界での金銭感覚的にはもう少し上ってとこかしら。一般的な大人の1ヶ月の稼ぎが金貨3~5って言われる場所だからこの店のものは少し高級品かもしれないわ。」


なるほど?

エニの言葉的に、金貨の価値はこの世界では4~5万くらいなのだろう。

いやいや、神様手数料半端ねぇな。

まぁ良い。


「じゃあ最後の質問だ…俺の利用価値がなくなった時はどうなる?」


最後の俺の質問にエニが少し驚いた顔をして、そのあとニッコリと笑った。


「あなたの利用価値がなくなったら、そうね…種馬にでもなってもらいましょうか?色んな種族の雌と性交して、少子化対策に貢献してちょうだい。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る