少年と私、閉じた部屋

倉宮林檎

第1話 誘拐 監禁 そして

あぁ、あんなに躊躇っていたのに、すれば一瞬なんだね。

そう思いながら一息、眠る少年を見つめながら。

彼は四宮梨亜、歳は15、私とは10は離れている。

数ヶ月前、仕事帰りに家出した彼を泊めてからは友人のような関係性になった。

「やっちゃった、もう後戻りはできない」

呟くも、私のしたことが現実味を帯びるようなことはなくて、ただただ私は興奮を抑えられずにいた。

逃げられないように、この日のためにたくさんの準備をしてきた。怪しまれないよう理性を保ってきた。すぐに私と彼との関係も壊れる、違う。私が壊す。私の欲求によって。

「はやくしないと、起きてしまう前に」

違うか、今起きてくれたらすべて今まで通りに戻れる。起こしてしまおうか

「何してるの、手伝った私のためにもさっさと運んでくれないかな?」

呼び掛けられ、私は意識を戻す。大丈夫、私は今日人間であることを辞める。

「大丈夫だよ、蓮華。それより報酬はどうしようか」

「この少年の観察とか、たまに貸してくれたらいいよ」

お前も同じ用途だろう?

「君とは違うよ、蓮華、違わないか、分からないや。私はただ好きで仕方なくて」

「うん、そうか。私も好きだよ、少年はいいよね」

蓮華のショタコンと同じにしないでほしい。私はこの子じゃないとダメなんだ。

「部屋は防音、鎖で縛った範囲でトイレやシャワーもある、まあ便利だよね、梨亜くんも納得してくれるかな」

「その点は私も同意だよ、少年にはストレスを与えたくないからね、環境では」

二人がかりでも彼の体は重い、引き摺ると起こすかもしれないし、それはまあ辛抱。

「にしても、慧ちゃんが男を、中学生とはいえ監禁だなんて何があるか分からないね、それだけでもみてて楽しいよ、素晴らしいね」

「蓮華と友達じゃなかったら殴ってるよ」

「ああ、ごめんね、気に触れた?じゃあ今日はこれで帰ろうかな、また立ち寄らせてもらうね」

そう言って蓮華は梨亜くんに手錠を付け柱に鎖を繋ぎ立ち去った。とても手慣れているようだった。

起きるまで待つか、待てないか。

あぁ、私の足は彼の方へ向かい、私の手は彼の首に飛びかかるように、その管を絞めた。

白い肌に私の指が絡み付き絞める。

鬱血し紅く染まる肌。青くなってしまうことを考えると罪悪感で狂いそうになる。

でも、止められない、このまま殺してしまいたくはないと、どうにか手を離す。

げほげほと咳き込む、彼の肺は空気を求めている。

キスしたいな…私の酸素を君にあげたいよ。

「ちゅっ…ちゅっちゅぅ…」

「んっ……んん!?」

あぁ、起きちゃったでも、もう少し

「ちゅっ…んむっ…れぇ…」

「んむっ…やめ…てっ!」

確かに私の舌は、君の唾液の味を知った、おかしくなってしまいそうな快楽と征服感と君の美味しさが混ざって混ざって抑えられなくなる。

「起きちゃった?ごめんね」

「慧姉ちゃん…おかしいよ?ここ、どこなの?」

「新しい家だよ、家出してくる必要はないんだよ」

「おかしいよ、さっきから一体…それにこれ、外してよ、帰れないじゃないか」

混乱していてとても可愛い、大丈夫、大丈夫なんだよ。

「帰らなくてもいいんだ、私がずっとここにいてあげる、お姉ちゃんになってあげるからね」

「帰してよ…帰りたい…」

「あーあー、ダメじゃん慧ちゃん、ここは私に任せなよ」

帰ったとおもっていた蓮華は注射器片手に、私たちに近寄っていた

「蓮華、何しに来たの、離れて」

「慧ちゃんができないことをしに来たんだよ」

やはり手慣れているのか病院でするようにアルコール消毒、そして梨亜くんに注射器を刺し、液体を入れた。

「よし、と」

「何がよし、なの?」

「怖い顔しないでって、少年が慧ちゃんのことが大好きになる薬を入れただけだよ」

「なにも、よくないよ…」

「あのままじゃ嫌われるよ、ほら効いてきたら何かしてあげなよ」

今度こそまたねってやつだ、と言い残し去った。

私はすぐさま玄関の鍵を閉めようと後を追う、思い出したように振り帰る蓮華に私は対応出来なかった。

「ッ!?」

同じ注射器で薬を体に流し込まれる、なんなんだ、これ…

「あー、一人で発情しても寂しいよね、二人で朝まで愛し合えばいい」

「お前…ッ!」

体が熱くなるのを感じる、少しずつ熱がたまっていくような。

「ただの媚薬だよ、ただのってなんだ?あー、お代は頂かないよ、ただの、だけに無料ってね!」

諦め玄関の鍵を閉め、私は部屋に戻る。

「慧ねぇ…さっきの人蓮華さん?」

「うん…」

「そっか、相変わらず変な人だね、悲鳴聞こえたけど大丈夫?」

「うん…」

「とりあえず、話だけでも聞かせてほしいな」

「すき」

「好き、なの、こういうの?」

「ちが…う、君が、好きだから」

「そうだったんだ、気づけなかった、ごめんね」

「君が好きだからここに縛り付けて私だけのものにしたい、ダメ?」

おかしくなっている、欲望に正直に話しすぎている、これではいけない気がする。

「怖いけど、慧ねぇならいいかな」

「いいんだ、そっか、好きにしちゃうよ」

頭がおかしくなっている、もう引き返せない、私は彼の服を脱がせる、相変わらず白くて綺麗な肌、私はメスを入れるように噛みつく、白い肌を私の赤で染めたい。

「ぐっ…」

「痛い?可愛いねもっと痛くしてあげる」

八重歯を肌に刺す。この子の血が欲しい。

「痛いよ…」

「そっか、嬉しいよもっと苦しめてあげるね」

肌が破れ血が流れる。私はこれが欲しかった。

美味しい、甘い、これが君の中身の味、何ヵ月ぶりだろう。

「ぐっ…うっ…」

「録音していたいな、君の苦しそうな声、大好き」

「好きなら優しくしてほしいんだけど」

「それは無理なんだ、優しくしても君が痛がるところとか苦痛な表情だとか、見れないから、私だってそうしていたいよ?」

「お姉さん、そういえばそうだったね、泣き腫らした目だとか傷口の手当てだとかするの好きだったね、絆創膏剥がすのもわざと痛くしてた?」

「あぁ、バレてた?もういいかな、って、お姉さんね、君が大好きだから痛めつけたりいじめたりしたいんだ、わかってくれなくてもいいよ」

「わからないよ…でも逃げられないし慧ねぇは好きだから、どのくらい我慢したらいいかな」

「わからないよ、私の欲求が満たされるか」

私自身、それに怯えていた。大金出して買った部屋。大きなリスクを抱えた拉致監禁、そして…虐め。

「優しいお姉さんに戻ってね、今は許してあげる…だから終わったら優しくしてほしいな」

「終わったら責任を取って君を私の大切なものにする、必ず虐めない、約束するから、したいだけさせて?」

狂ってる、こんなお願い、私はこれから君にどれだけのひどいこと、痛いこと、苦しいことができるか楽しみになっている。

「じゃあ、始めるよ」

歪んだ笑顔を君に向ける、私は悪魔だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

少年と私、閉じた部屋 倉宮林檎 @kurarikurarin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ