第6話 オマエは一体何?

薄っぺらい携帯電話から鳴る7度目のアラームで目が覚める。記憶を確かめる。昨日の真実は夢じゃなかったらしい。気持ち悪くなってきた。吐いてしまいたかった。


携帯電話を何度もタップし起動させる。時間は7:30 始業時間は8:00 学校までここから10km。ああもう最悪だよなんで起こしてくれなかったんだよ。


食欲のかけらも無かったし、なにしろ朝は低血圧、時間の余裕もない!早く学ランに着替えてチャリにのって急がなければ!!!クッソー!クソクソクソクソ!


どうして日本の道はこんなにガタガタガタガタしててそしてこんなに狭いんだよ!車に乗ってる人に申し訳なくなるわ。本当ごめん許してくれ!汗だくだくセットした頭はもうボーボー最悪だ!クソクソクソクソ!クソクソクソクソ!!!!!




時刻は7:55!ちょうど校門、ああクソッなんで俺の教室は4階にあるんだよ!あと5分で靴履き替えて間に合わないよ!そうだ!脱出用の外付け階段を上って教室まで行こう!間に合え!



クソクソクソク!ファッキンクソ!自分の机の上に荷物を置いて「今日来てますよアピール」したのに!遅刻扱いしやがってあのマクゴナガル!少しぐらい融通効かせろよ馬鹿野郎!









あー、なんも頭に入らない一日だった。おかげでだれかれもの陰口も視線も気にしなくてよかった。なんて言ってられるほど悠長なものでもなかった。



最悪な昨日、最悪な今日、きっと最悪な明日。嫌だった、これが現実だと思いたくなかった。いつもと変わらない毎日を送っていくと思っていた。確かに刺激も欲しかった。でも期待していたのはこんなのじゃなかった!


姉のために僕は何ができる?臓器提供でも金の融通でもなんでもすると母に尋ねてみたけど、僕には何もできない。


いざとなれば俺は誰かのためになんだって出来ると思っていた。いざとなれば大事な人だって救えると思ってた。思ってた、思ってた、思ってた。思ってた。

思っていた。思っていた、思っていた。思っていた。


自分は、ただ自分の無力さに打ちひしがれるだけだった。この悲しみをただ一人で受け止めて抱え込むしかなかった。逃げ出したかった。逃げ出せなかった。誰かに助けてほしかった。誰も助けてくれなかった。


僕は泣くこともできなかった。



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