第11話職業 【占い師】

【占い師】とは?

人、天候、災害、魔獣、など数多くの対象の未来や確定事項が分かり、その情報を提供することでそれを生業としている人たちの総称。

収入が高いことでも有名であり、多くの偽物たちも存在する。

しかし、本物の占い師はマルセーロのような大都市(推定人口50万人)でも、100人存在するかどうかであり、5千人に1人の割合で生まれてくるようである。

完全に生まれつきの才能に依存した職業であり、見通せる項目や内容も才能によって差ができる。

しかし100%その占いは当たるため一代で財を築くことが可能である。

また、絶対に外れないことから偽物を見るけるのも容易であり、客と揉めた場合は往々にして占い師側が損をする。

なぜなら自分の行く末を見通すことも占い師にはできて当然だからである。

それよりも希少な占い師を巡って生じるのトラブルの方が多く、得てして大規模となる傾向がある。

【占い師】の上には【賢者】が存在する。

占い師よるもさらり洞察力があり一節によると次元の異なる存在と言われ、さらに希少な能力である。

マルセーロを含む7大都市の頂点にそれぞれ1人君臨している。


「というのが私達【占い師】な訳。分かる?」


腕を組み胸をそらして自慢気に解説するエミリア。

眉間をピクピクさせて隣を小走りで歩くアッシュは面倒臭そうに話を聞き流している。


「ちょっと私の話を聞いてた!?」


「ああ、聞いてたよ」


アッシュの左腕をグイグイ揺らし訴えるエミリアに適当に相槌を打つ。


「それならもうちょっと態度ってものがあるでしょうが!」


気に食わないとばかりにプンプン怒る。


「ッハ、なんだ敬って欲しいのか?自分でさっき予想が外れたって言ってたじゃねぇか。お前の解説通りならペテン師と名乗るべきだな」


背の低いエミリアに文字通り見下した態度をとる。


「今までにこんなことなんてなかったのよ!?私の占いでは何事もなく通り抜けてたはずなのに・・・・でもあたしの才能は確かよ!今だってマルセーロ上空の天気は分かるんだから」


「へぇ、それなら安全にマルセーロから出られる道を占いながら1人で行けばいいじゃねぇか。俺は前金だけでいいからよ」


「それはできないわ。不確定要素が多すぎて・・・現在進行系で変化する人の行動を占ってたら、それこそ足を止めて集中しないとできないもの」


「それなら偉そうに講釈垂れるな」


先程から何も言い返すことができずシュンと俯く。


「何よ、私は【占い師】なのよ!もうちょっと尊敬しなさいよ。貴重な存在なんだからね。選ばれた人にしか成れないのよ」


だが納得がいかずブツブツと不満をこぼし続ける。

ふぅとアッシュは短く息を吐くとおもむろに足を止める。

数歩通過したエミリアがそれに気付くと訝しむ表情を見せる。

現在の2人のいる位置は西の通路から何度が道を曲がり、中央地区を避けるように迂回しアッシュの住処のある北地区へと進路をとっていた。

北に地区が近づくにと当然治安と景観が悪くなっていく。

舗装もお座なりで凹凸が目立つようになる。

道も狭く路上にはゴミや乱雑に積まれて木箱などが置かれ、見通しも悪い。

完全に2人が横になると肩がぶつかってしまうような道幅だった。


「ちょっと、急に止まってどうしーーー」


そこから先は通路に背中どんと打ち付け言葉にすることができなかった。

エミリアが気付いたときにはアッシュの右腕が左頬を掠めて壁に追いやられていた。

所謂、壁ドン状態。

極めて険悪な。


「いい加減イライラするぜ。少しは頭を切り替えろ。現状じゃお前の能力なんてクソの役にも立ちはしない。それにお前が死んだところで、俺は別に興味もないことを理解しろ。それが嫌なら大人しく生き残ることだけ考えろ。・・・もしくは戻って監視役に見つかることだな。お前が【占い師】とやらなら丁重に保護してもらえるはずだ。俺は脳天気なプライドを持つお姫様を守って死ぬようなことはしない!」


その表情は真剣であり、特徴的な眉間のシワはイライラを表わすというよりも、エミリアのこの先を危惧しているような印象を与える。

そこには真っ直ぐに自分を見つめるアッシュの瞳に誠実な光があるからだろう。

生まれて初めてここまで乱暴な扱いをされたにも関わらず、初めて人として扱われたという気持ちがエミリアには湧いた。

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