第6話不吉な集落

北風タイヨウの眼前に広がる開けた土地は、見る限り人の住む集落と言えた。

その作りは木材で基礎を作り土と藁(わら)で壁を築いた茅葺き屋根の家であり、楕円に広がる土地を囲むようにして建っていた。

そしてそれらの家の外周には先を鋭利に尖らせた木を隙間なく並べることで、外敵から守る塀のようにできていた。

タイヨウが今いる位置はその集落の正面に位置し、傾斜があることで向こうから彼を視認することは難しいだろう。

傾斜の真下には下り坂の道ができており集落へと続いている。

その道の先には木の塀はなく集落への入り口がぽっかり開いていた。

タイヨウが目を細めて確認できた家の数は7棟であった。

一棟に最低2人は住んでいたと仮定して、少なくとも10人以上はいる計算になる

家の入口はどの家も集落の中心を向いている。

そこでタイヨウの目を引いたのは、集落の中心には太い木の幹が四角く互い違いに組みしかれていることであるった。

まるでキャンプファイヤに使うセットを連想させる。

準備前なのか今は火がついていなかった。

人がいる・会えるという喜びが太陽の胸に広がり駆け出したい衝動にかられる。

その一方どうにも安易に踏み出すことを拒む何かがその集落にはあるようにタイヨウには感じられてしまう。

それは人の生活の営みが感じられず、静か過ぎることに原因があるのかもしれない。。

陽はとうに没しているものの、まだ数時間しか経っていない。

普通であれば家に明かりが灯っていてもおかしくない。

まるで真っ黒なカーテンが集落全体を被さっているような静寂はタイヨウに期待よりも不安を抱かせた。


(どうしよう。やっと家を見つけたのに・・・)


(家の作りはどう考えても歴史の教科書でみるようなものだよな・・・)


(言葉は通じるのかな。それよりもなんか・・・・気味が悪い)


(果たして友好的に出迎えてもらえるのかな?)


(いきなり襲われはしないだろうか?)


(果たして人間が住んでいるだろうか?)


悩みはじめると嫌な想像ばかり膨らんできてしまう。

日本を出たことは疎か、最近では自室の部屋から出ることすら稀になっていたタイヨウには、またしても状況を打破するアイデアが一切出てこない。


「あ~~面倒臭い!あれこれと考えるのは止めよう!どうせ他に道なんかないし!


自身を鼓舞するように呟き、迷いを捨て集落に正面からゆっくりと近づいて行くことにする。

ゆっくりと慎重に負傷した右足を庇いながら斜面を下りて、村へと続く道へと進む。

時間を掛けて入り口へと歩いていく。

警戒しながら木の塀をくぐる時、さきほどまでタイヨウのいた藪の中から、猫と思われる動物の鳴き声が聞こえてきた。

ふとタイヨウは振り返ったがそのあたりには何もいない。

猫の声はまるで彼を引き留めるような声に聞こえた。

タイヨウにはそう思えてならなかった。

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