第2話行き先
柔らかな土の感触と幼い頃によく嗅いだ草木の香りがぼやけた意識の中で肌と鼻から知覚される。
(小学生の低学年くらいまではよく空き地で遊んでたっけ・・・・)
ふと幼い頃の記憶が次々と思い出される。
夏の日差し、炎天下、灼熱のアスファルト、田んぼの畦道、茜空、蝉の鳴き声と蜻蛉、木陰の涼しさ
(いつから遊ばなくなったんだろ。昔はあんなに汗かいて走り回ってたのに)
家で引きこもっている現在とは正反対の幼少期を眩しい宝物のように感じた。
(ここはどこなんだろ?)
。
思い出から我に返り疑問を抱く。
薄めを開けるもののぼやけて視界が定まらない
どうやら長いこと仰向けの状態でいたらしく腰や後頭部に少しの痛みを覚えた。
自分がベッドの上で寝ている訳ではないことを認識する。
最後の記憶はトイレで用を足した時のものであり、記憶と現状のギャプに不安と混乱が生じる。
そこではじめて恐怖を感じガバッと上半身を持ち上げる。
(え?本当にここはどこ?)
少し痺れている首を持ち上げるようにして顔を上げたタイヨウの眼前には、広大な山々が広がっていた。
(俺は夢でも見てるのか?)
そして自身もその風景の一つである山の中腹にいることにしばらくしてから気付いたのだった。
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