第26話 confidence

「亡くなっている...そんな...でも僕は彼に、Mに会って...話して...」


「奏くん、ここでは話せないこともあるので、もし私を信用して頂けるのでしたら、可能な限りあなたの助けとなります。それが先ほどのお詫びという事でいかがでしょうか?」


「おいおい奏こんな胡散臭い探偵のことを信用できるのか?」店長の言うことも分かるが、この男、天城蓮は何かを知っている。ただし信用に足る男なのだろうか、今すぐの判断が難しい。


「そうですよね、いきなり会ったばかりの自称探偵を名乗る怪しげな男から信用しろと言われても、そうそう信用できるものではないですよね。それは正しい判断だと私も思いますよ、普通の状況だったらの話ですけど、何度も言いますが、あなたは今危うい立場にあります。」


天城蓮は続ける


「そしてそれはあなたの命にも関わることかも知れません。これは脅しでも何でもありません、私からの忠告です。」


「命にって、完全に脅しじゃないですか!」


「そうですね、脅しと受けとって頂いても構いませんよ。あなたはまだ若いし才能もある、ここでの間違った判断で簡単に散らしていい命ではありません。」


どうする..どうする...決め手にかける。M...「Mはどうして亡くなったんですか?」


「そうか君は知らないんだね、彼はこの絵に描かれた場所で何者かに殺されたんだよ。恐らく君はその現場に居合わせている。もしくは...ふう、だから言っただろう?私は優秀ではないし、人から信用されないと」


なるほどと納得する。よくこれで探偵がやってられるな?と思ったが一つ質問が浮かんだ。


「あなたは特殊な能力をお持ちなんですか?専門分野がどうだとか言ってましたが?」


「まいったね..これをここで話すとますますこの状況をややこしくしてしまうだけなんだけどね。奏くん、では最初の質問に戻ろう。」


「死んだら人間はどうなるか?って話ですか?」


「記憶力も悪くないね君は、そうだ奏くんの言った答えは半分が正解で半分が間違っている。」


「何が正解で何が不正解なんですか?」


「基本的に人は死んだら何も残らない、その殆どが時間と共に風化して消えていく存在にある。ただし文字や曲、写真なんかは残っていくだろう?そういう意味ではHDDのようなものはあると言えないだろうか?では人の魂は?どこかに保存されるのか?はたまた生まれ変わるのかな?」


「魂...さっきの答えでは心は脳だと答えました。魂も心と同じ基本は脳だと思いますが、そうであるならば、やはり電源が切れてしまえば何も動かない、何も残らないと思います。」


「ではパソコンの例を挙げるのであれば、電源が落ちてもデーターは保存されているよね?電源を入れなおせばまた続きからの作業ができる、人が亡くなった時を電源が落ちるという表現をするならば、では中のデーターは、魂もしくは脳でも構わない、どうなっていると思う?」


「だから脳も死んでしまったら当然最後は骨しか残りませんから、やっぱり消えてしまうと思いますよ。一体何の話をしているんですか?」


「では外付けHDDがあると仮定して、全てをそこに移す事ができるとしたらどうだろう?」


「そんな概念的な話をまわりくどい言い方でしないで、はっきりと教えて下さい。」


「意外とせっかちなんだね、君との会話がすごく心地が良いからついついね、君はこのMという男性とどこで会いましたか?私は恐らく君が会ったのは彼が、Mが亡くなった後だと考えています。」


そしてMが亡くなった、遺体が発見されている時期を聞いて愕然とした。

確かに俺がMに会った時期はMが殺された後だった。

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