第25話 Sentence

何で知ってる?Mだって、なんで知ってる。だめだ動揺するな、嘘かもしれない。


「ずいぶん暑くなってきましたね、ほら奏くんも汗をかいてくるぐらいに。」


「そうか?奏は急いできたから、汗がひいてないだけじゃないかー?」


店長グッジョブ!心の中で手を良いねの形にする。


「そんなに急いで僕に会いに来てくれるなんて嬉しいなー、僕は君の曲を聴いてからというもの、すっかりファンになってしまってねー。でも個人的には最初の頃の曲も好きだったんだけどなー、なんで消してしまったのかなぁ?」


天城蓮、こいつ!何が目的か分からないが、こいつは何か危険だ、しかし...


「いやー嬉しいな、よく昔の曲なんて探し出せましたねー」

とりあえず無難に返していこう、冷静に、向こうのペースに巻き込まれるな。


「探偵ですからー」

軽い感じ、とぼけた顔をしているが、眼だけは笑ってない、むしろ観察している、俺のことをジッと、まるで丸裸にでもされているようだ。気持ちが悪い...。


「さすが探偵さん!天城さんは優秀なんですねー」


「いやーそうでもないんですよ、私の得意とする分野は少し特殊でね、そもそもお客も少ないし、依頼されても信用されないというか、まぁその辺はおいおいという事で。」


天城蓮は続ける。


「そうそう、これだけは伝えておきますね。君は今非常に危うい立場にあります。」


急に真面目な顔つきになり続ける。


「あなたはこのままいくと、殺人犯になってしまうかもしれません!」


「はぁ?」


店長と俺の声が被った


「いや実際私はあなたを疑っています。最初に言ったように全ての物事を疑う性分なので、気になされないように」


「気にするわ!」


「ふふふ、君は面白い。ですが本当です。あなたが犯人であろうがなかろうが、このままでは殺人犯になる可能性が高いと思います。」


「だから本当の事を話しましょう。ここではなく、あなたの自宅が良い。あるんでしょう?このCDジャケットの絵も曲のマスターデーターも」


ははぁん、読めた!奏名探偵は全ての謎を解いてしまった!


こいつは何故だか分からないが、曲を作ったのは俺じゃないと思っていて、きっとこのジャケット絵に描かれた男、つまりMが本当の作曲者だと考えた、そして俺がMを殺して曲も奪ったと考えている!


「探偵の蓮さん、何か勘違いされているようですが、曲は盗んでいませんし、誰も殺していませんよ?」


「ふぅ、勘違いされてるのは奏くん君の方です。きっとあなたは今こう考えましたね?このジャケットに描かれたMこそが本当の作曲者で、殺して曲を奪った犯人が奏くんだと、私がそう考えていると」


「なっ、心が読めるんですか!?」あまりに自分が考えていたことそのままを口にするので、驚きのあまり本音を口にしてしまった。


「そうです!そうですよ!」


「では君にはもう一つお伝えしておく必要がありますね。いいですか、この君がMと呼んでいる男性は、すでに亡くなっています。」


人は驚きすぎると声が出ない事を奏は初めて身をもって経験をする。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る