第24話 Question

「君は死んだ人間はどうなると思う?」


自称探偵は名乗りもしないで、そんな質問を投げかけてきた。


「死んだ人間はどうなるかって、家族に葬式をしてもらって、火葬場で焼かれて、お墓に入るってことでしょうか?それとももっと精神的な話で天国に行くとか、地獄に落ちるって話でしょうか?」


「ふむ、では人の心の場所はどこにあると思う?」


次から次へと答え合わせをしないまま質問を繰り出してくる。


「よく言われるのは心臓の部分、ハートでしょうが、やっぱり脳じゃないでしょうか?


奏は続ける。

「そしてそういう意味でしたら、人は死んだ時、パソコンと一緒です。電源が切れてしまったら、何も考えないですし、何も動きません。」


「あとは残された者の記憶の中でしか存在はしませんし、時間と共に風化して、やがて何もなかったように消えていきます。人間には外付けのHDDは存在しませんから。」


「君はずいぶんと乾いた死生観を持っているね。まだ若いのに何と嘆かわしい。君彼女いないだろ?」


「いませんけど何か!?」

不意と図星を突かれ思わず声を荒げてしまった。


「申し遅れました、私はこういう者です。」ようやく自己紹介に名刺をもらう。


探偵...天城蓮あまぎれんと書かれている。


「君のCD聴かせて頂いたよ、すごく心に土足で入ってくるようないい曲だね。」


「褒めているのか、貶しているのかどっちなんですか?」


「私は褒めたつもりだが?」


「言葉のチョイスどうなってるんですか?」


「しかしこれは本当に君が描いたのかい曲なのかい?」


「どういう意味ですか?」


「深い意味はない、その言葉通りのことだけど?」


「この曲が盗作とでもいうんですか?何か根拠でも?」

どうにもこの天城蓮という男、挑発的で好きになれない、ついついこちらも攻撃的な口調になってしまう。


「こちらも探偵やってるもので、色々ね...」


「これは僕の曲です!」


「おやおや、すまないね怒らせてしまったようだ。職業柄全てのことに一度は疑いを持ってしまう性分でね。すまない、今度お詫びさせて頂くよ、そうだなー何がいいかなー」


「お詫びだなんて、何も入りません!」鼻息をフンフンさせながらはっきりと否定をする。


「おや、そうかな?このジャケットの絵の場所、そしてこの男性、そうだな、Mと言ったかな?この男性についての情報も必要なかったかな?」


心臓がバクンと跳ねた。

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