第22話 search

奏は悩んでいた。1曲、たった1曲で自分の人生が変わったような気がした、Mが歌っていた1曲をアレンジしてネットにあげた。


一気に世界は広がった。沢山の人から評価された。しかしMの歌以前の自分の曲は逆に酷評をされていった。


それ以降も自分で曲を作っていたが、完成することはなく、途中で作業を止めてしまっていた。


どうしても比べてしまう、Mの曲と自分の曲を。


きっとまた酷評されるに違いない、本当に同じ人が作った曲かと、あの曲は誰か違う人が作った曲だと。


考えるだけで自分の曲に益々自信が持てなくなった。しかしまたYouの曲を聴いた時にはやはり衝動を抑えることができなかった。


素晴らしいメロディを前に作品として完成させずにはいられなかった。そしてどうしても知って欲しかった。


今度はネットにはアップせずに、直接店長のところに相談に向かった。


「奏、オメェ何かしでかしたのか?さっき警察が来てな、これのこと根掘り葉掘り質問責めされたぞ?」

俺に顔を見るなり剣幕に喋り始め、

店長は俺のCDを指差した。


「あぁ、直接うちにも来たよ。また事件が起こったらしいんだけど、偶然俺が夜通し絵を描いていた日らしい。おかげで俺は容疑者Aって事なんじゃないの?おい店長!まさか疑ってるんじゃないだろう?なんだよその顔は、」


ニヤリと不適な笑みを浮かべた店長は「虫も殺せねぇ、女も口説けねぇような臆病者に人なんて殺せるかよ。」


「それにこんな曲作るやつが悪い人間とは少なくとも俺は思わねぇよ。」


店長の言葉にドキッとする。この曲を作ったのはMだ、そしてそのMは消えてしまったが、俺はあいつの事を疑っていた。


店長はもしかして俺が作ったんじゃない事を薄々感づいているのだろうか。


今日持ってきた音源を出すのが躊躇われた。


「で、今日は何のようだ?そうだCDの売れ行き上々だが、事件の事もあってか妙な噂が立ち始めてな、さっきも警察が来たと行ったろ?実は2人目なんだよなーこのCDの事を聞いてきた人間は。」質問をしておいて、答えも聞かず自分の事を話し始めた。


「1人は警察、もう1人は探偵だかなんだか、無茶苦茶怪しいやつでな、気味が悪いから、何もしらねぇって言って追い返したけど、この辺をウロウロとしてるみたいだな。」


「このジャケットの男の事を知ってるのか?ってな、しつこく聴いてまわってるらしいぜ。オメェも気をつけなよ。何が起こるか分からない世の中だ。」


その探偵はMの事を知ってるのか...積極的に関わることは控えたいが、もし何かを知っているのなら教えてほしい。


「店長また今度そいつがやってきたら教えてくれないか?」


「おいおい大丈夫なのか?やめとけやめとけ、首をつっこまねぇ方が良いと俺の勘がそう言ってるぞ。」


「詳しくは話せないけど、このジャケットの男を僕も探しているんだ。」


しかし警察の方もよほど困っているのだろうか、それとも徹底的に俺を疑ってかかっているのだろうか、何方にせよ気をつけなければ...

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