第21話 sleep

夢を見ていた。


美しい女性が白いドレス着て大きなホールで歌を歌っている。あの絵の中の女性だ、この歌は絵の中で彼女が歌っていた曲だ、スポットライトに照らされながら、ホールの音響は素晴らしく彼女の声が美しく響き渡っている。


観客は僕1人、いや誰かもう1人いるようだ、そして何故かエビチリが彼女の周りをうろちょろとしている。


曲が終わりもう1人の観客が立ち上がって拍手をするつられて俺も拍手をする。突然その客がシュートサイン、いわゆる手をピストルのような形にして彼女に向ける。



バン!と彼の口から発せられた瞬間、じわじわと彼女の純白のドレスが徐々に真っ赤なドレスへと変化していく。


男の声にびっくりしたのか、彼女の近くをウロウロとしていたエビチリがこっちに向かっても猛ダッシュで走ってきて、そしていきなり僕のお腹にドロップキックかましてきた。


そこで目が覚めた、僕のお腹の上にはエビチリがスヤスヤと眠っていた。そして絵からは微かにあの歌が聴こえてくる。


いい曲だ、僕は自然にDTMに向かってこのメロディを五線譜に流していった。


俺は一体何がしたいのだろう、こうして他人が歌う曲を自分が作ったかのようアレンジし、何が欲しいというのだろう、ミュージシャンとしての人気か、沢山の人にただ認められたいだけなのだろうか。


自分で作った曲はネットにあげても、何の反応もなく、偶然たどり着き再生してくれた人も、もっと頑張りましょうのハンコを押すように、悪辣な評価を下していく。


しかし僕はもう一度この曲をネットにあげようと覚悟を決める。承認欲求の為でもなく、単純にこの素晴らしい曲対しての純粋な反応を聴きたいという、ただの音楽好きのアホウな考えが勝ったからだ。


この絵の中にいる孤独な彼女の素晴らしい歌を聴いて欲しい。それが僕の使命と勝手な使命感とらわれた盲目の音楽家は、この歌も二弾目のCDとして発売する様に店長に頼みに行くことになる。

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