第18話 you
Mとは違う誰かがキャンバスにいる。しかも今度は女性と思わしき人物が確かに写っていた。そして何やら歌が聴こえてくる。
グッと拳を握りしめ、意を決して絵の中の世界踏み込んでいった。
やはり女性のようだ、外の世界からでは判別はつかなかったが、この世界に入って間近にするとそれが分かった。
相変わらず綺麗な声でバラードを歌っている。どう声をかけていいか分からないままとりあえず距離を詰めていく、すると向こう側もこちらに気付いたようだ。
「うぇっ!」っと変な声が出てしまった。それもそうだ、突然彼女の方から向かってきたと思った瞬間、抱きしめられてしまった。
「ありがとう」
初めて会った人に御礼を言われる筋合いも無いし、思い当たる節も全くなかった。
「あの...どなたですか?御礼を言われるような事をした覚えが全くないのですが?」
「ごめん、なんか顔を見た瞬間、あなたに御礼を言わなければいけないような気がして」
「気がしてって...あのー名前を伺っても?」
彼女は頭を抱えながら考えていたが、やはり自分の名前が分からないようだ。首を横に振り思い出せないと答えた。
しょうがない今回も勝手に名前をつけさせて頂くとしよう。
「すみません、あなたのことを便宜上勝手にU(ユー)と、とりあえず呼ばせて頂きます。」
恐らくMと同じく質問をしたところで、何も覚えていないのだろう。
さて...これはどうしたものか...
「そうだ!ここで俺と同じぐらいか、もうちょっと大人な感じの男性を見ませんでしたか?あなたと同じくこの世界の住人として居たんですが、突然消えてしまったので、探しているんです。」
「ごめんなさい私もどうしてここにいるのか、いつからいるのか分からないの。」
やっぱり...あのー時計ってされてますか?Mと会った時の事を思い出す。
「えぇ、してるけど壊れちゃったみたい。もう動いてないみたい。」
やはり時計の針は止まっていた。止まった時間が昨日とすると、ちょうど俺が絵を描こうと走ってたぐらいの時間かな?
「俺の名前は奏です。時々様子を見にくるけど、もしさっき言ってた男性、そうだ分かりにくいけど」出来たてのCDジャケットを渡す。
そこにはシッカリとMが描かれている。遠めなので顔は分かりにくいかもしれないけど
「見かけたら教えて下さい、また来ます。」
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