第15話 memory

いつもの通り自分の絵の先に向かう、少し立ち止まり深呼吸をする。何をどうやって話をすればいい?


質問をしたとして、相変わらず記憶が戻らない、分からないの一点張りをされれば結局答えの出ないまま、ずっと悶々とした日々をこのまま過ごして行くのだろうか。


当たって砕けるか、鬼がでるか蛇が出るか。まずは世間話から始めるか...


絵の先の世界に足を踏み入れる、いつもの場所にMは居なかった。


「なっ!居ない!?おい、M?」

マジかよ、ここんところずっと悪い方へ悪い方へと考えていた、この瞬間顔からは血の気が引き、全身の力が抜けて、その場に座り込んだ。


「おい汚れるぞ?」


どこからか声がする。よく目を凝らすと草が生い茂った先に、ちょうど窪みのような部分ががあり、そこに寝転んでいるMを見つけた。


「なんだいるんじゃないか、返事ぐらいしてくれよ。」


ハァーとりあえずホッとしながらも、警戒を緩める事は出来なかった。


「M、今日はどうしたんだ珍しくそんなところで寝転んで、何か思い出したのか?」


「ああ、思い出したよ。」


「なっ、やっぱりお前なのか!?」


「何のことだ?この土手で寝っ転がる事が気持ちいいって事を思い出したんだよ。何だかこの窪みん所も懐かしいというか、しっくりくるというか。」


「何だよ何にも思い出せてないじゃないか!?」少し言葉の語気も荒くなる。


「どうしたんだよ、今日はやけに突っかかってくるな?何か慌てるような事でもあったのかい?」いつものMの調子で話しかけてくる。


どうする?何を、どういう風に聞く?

ストレートに人を殺した事があるか?いやどうせ分からない、記憶がないで交わされる。


「あれ?なんかポケット光ってないかい?」Mが唐突に俺のポケットを指差した。


「ん?何も光ってないよ?ポケットに手を突っ込み中の物を取り出した。」

この土手で拾った、正しくは現実世界の土手で拾ったリングだった。


「なあこのリング見覚えあるか?M」


「うーん、ちょっと触らして貰ってもいいかい?」


手に取った瞬間だった、Mはそのリングを触った瞬間電気が走ったかのように驚き、その場に落としてしまった。

そしてそのまま気を失い俺に向かって倒れ込んできた。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る