第11話 rain

数日経ったある日のこと

ザァザァと降り続く雨のせいで、河川が増水し氾濫の危険があるという事で、テレビでリポーターが現地から放送を行なっている。


「こちらN市の河川敷から状況についてお伝えいたします。現在河川は危険水位に迫る勢いで増水を続けています。まだ避難警報は出ていませんが、この調子で雨が降り続けますと氾濫の危険もございます。川もかなりの勢いで流れていますので、決して近づかない様にご注意下さい。」


「ただいまN市の川の様子をお伝えしています。先日この河川敷付近では殺人事件が起き、現場を守るための黄色いテープが張ってあった場所が見えますが、雨と風で今にも飛ばされようとしています。」


ふと殺人事件という言葉が耳についた、犯人はまだ見つかっておらず、捜査も難航しているという。まさか...


可能性の一つとして全く無いわけではない、時期的にも丁度絵を描くために河川敷に通っていた時期と重なる。


しかし、あの中にいながら何も食べず生きていられるものか...しかしもしも、もしもMがそこから動くことが可能だとしたら、俺と同じように何処か別の入り口があって、そこから出入りが自由だとしたら...


そう考えるといてもたってもいられなくなって、降りしきる雨の中あの河川敷に向かって走り出していた。

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