第75話:みんなで仲良く昼ごはん
中庭の芝生に広志たちがやってくると、周りはざわついた。
制服姿の『世界三大美女』が並んで歩く姿は圧巻で、周りがざわつくのも当然と言える。
「あの三大美女を引き連れてる男を見ろよ!!」
「あっ、ホントだ! 三大美女を全員従えてるって、なんて凄い男だ!」
別に三大美女を従えてるってわけでもないのに、周りの男子たちはどうやら勘違いしてるみたいだ。
「あれはイケメン三銃士の一人、
「スゲー!! さすがだ!!」
「今年の人気総選挙は、天河ヒカルの勝利で決定か!?」
(うーん、やっぱりそう見えるか。
広志は健太と顔を見合わせて、苦笑い。
「三大美女と一緒にいるもう一人の女の子って、なんかかわいそうだな」
「いや、待てよ。美女ってワケじゃないけど、ロリで真面目な感じで、俺は結構あんな女の子がタイプだ」
「そう言えば、お前はそうだったよな」
「おうよ! あの子、結構かわいいぞ!」
弥生ちゃんタイプにも一定のファン層があるみたいだ。よかったよかった。
「しかも天河のヤツ、
広志は健太と顔を見合わせて、さらに苦笑い。
「広志よ。俺たちついに
「あはは、そうみたいだね。まあいいじゃん」
七人が芝生の上に輪になって座り、弁当箱やパンを取り出し始めた時に、急に見音が立ち上がってみんなを見回した。
「あの……こうやって皆さんとお昼ご飯をご一緒する前に、ひと
「ん? なになにー?」
健太が能天気な声を出してる。
「ここにいる皆さんには、色々と失礼なことを言ったのに、こうやって声をかけてもらって感謝してます」
健太は「何があったん?」ときょとんとしてるけど、広志は「さぁなぁ……」ととぼけておいた。
「伊田さんが『空野君と付き合ってみたら、空野君がホントに素敵な人だってわかる』って言ってたけど、正直信じられなかったの。だけど今はそれがわかる。ホントにみんなごめん!」
見音は立ったまま、腰を深々と折り曲げて頭を下げた。
「八坂さん、全然気にしてないから頭を上げて」
凜が優しく見音に語りかけると、伊田さんは明るく元気な声をかけた。
「そうだぞー! ようやく空野君の良さがわかったかー……なんちゃって!」
えへへっと伊田さんが笑う。
「それと……天河君、ありがとう。ホントにありがとう」
見音は泣き出しそうな顔をしてる。それを見てさすがの天河も、ちょっと焦ったようにみんなに声をかけた。
「さあ、食事が冷めてしまわないうちに食べよう!」
「いや、ヒカル。弁当だから、既に冷めてるし!」
「あっ、ああ、そうだったな……」
全員が「あははは」と大笑い。伊田さんなんか、「あはははははーっ!!」とより一層大きな笑い声を上げてる。つられて弥生ちゃんも、小さな身体を折り曲げるようにしてケラケラ笑ってる。
「ヒカル、ありがとう」
「いや、広志。こっちのほうこそありがとう。お前らと出会えて、仲良うなれてよかった。これからもよろしゅうな!」
天河がウィンクをしてきた。広志も照れながらウィンクで返す。
(うん。天気もいいし、気分もいい。こんなに美味しい弁当を食べるのは、生まれて初めてだ)
凜と伊田さんと見音、そして弥生ちゃんは、四人で楽しそうに談笑しながら美味しそうに弁当を食べてる。
「あっ、八坂さん! そのおかず、めっちゃ美味しそう! ちょーだいー!!」
伊田さんなんか、見音の弁当箱に箸を伸ばして、おかずをおねだりしてる。見音は笑顔で「いいよ」って答えた。
「もう、
それを見て弥生ちゃんまで、見音のおかずを欲しいって言い出した。
四人とも、すっかり仲良し女子グループになってるじゃないか。
楽しそうな会話の声が聞こえてきて横を見たら、初めて親しく話をしたという天河と健太もすっかり意気投合したようで、親しげに笑い合いながら話をしてる。
(こういう感じ、なんかいいなぁ)
自分の大切な人たちがこうやってみんな仲良くしてくれてる。それだけで広志は幸せな気分が胸の奥からあふれてくるのを感じる。その幸せな気持ちを噛みしめながら、広志は弁当を口にした。
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