第74話:見音と弥生ちゃんの変化
翌日は朝から雲ひとつない快晴で、めちゃくちゃ気持ちのいい天気になった。
昨日の楽屋でのやり取りで、
そのことを広志が黒田さんに電話で報告したら、黒田さんは涙声になって喜んで、何度も何度もありがとうございますと繰り返してた。
一定の
広志が登校して教室に入ると、天河は既に来てた。凜と伊田さんも登校してたけど、見音と弥生ちゃんの姿はまだなかった。
「昨日はありがとう、天河」
「こちらこそ、来てくれて嬉しかったばい」
近寄ってお互いに肩を叩きあう二人を、凜と伊田さんが驚いたような顔で眺めてる。広志が彼女たちに笑顔を送ると、凜も伊田さんも笑顔を返してくれた。
昨日のライブに見音を呼んだことまでは凜と伊田さんには言ってあったし、多くを語らなくても、広志の笑顔を見るだけであの二人は理解してくれる。
広志と天河が凄く仲良くなったこと。そしてライブ会場で、きっと見音に変化が現われたことなんかも、理解したんだろう。
その時、突如教室がざわめいた。何が起きたのかと教室を見回すと、出入り口から教室に入って来た、二人の女の子が眼に入った。
ロングヘアを黒髪に染めた長身の
ショートヘアを栗色に染めて、メガネを外したちっちゃい弥生ちゃん。
その凸凹コンビのような二人が、仲良く談笑しながら教室に入ってきたもんだから、クラスの皆がざわめくのも当たり前だ。
なぜあの二人が仲良しになってるのか?
なぜ二人揃って、髪色なんかを変えたのか?
でもいったい何が起きたのか、訊くに訊けなくて誰も二人に声をかけない。広志も驚いて、きょとんとしてしまった。周りからクラスメイトの声が聞こえる。
「八坂さん、人を寄せ付けないオーラが少し薄らいで、可愛くなったよな」
「中田さんも、結構可愛いじゃん」
朝のホームルームが始まるまで、教室内は何か落ち着かない、ざわざわした雰囲気が続いた。
昼休みになって、広志が弁当を手にして健太の席に近づくと、横から天河が声をかけてきた。
「なあ広志。今日はすっごくよか天気やけん、中庭の芝生んところで一緒に昼飯ば食わんか?」
天河は手にしたパン屋の店名が入ったビニール袋を少し持ち上げて、広志に見せた。
なるほど、それはいいアイデアだ。こんなに爽やかな天気の日はめったにない。屋外で昼ごはんを食べたら、さぞかし気持ちいいに違いない。
「ああ、そうしよう! 健太も行こうよ」
「おっ、いいねぇ。そうしよう!」
そのまま教室を出て行くのかと思ったら、天河はなんと見音と弥生ちゃんにも同じように声をかける。二人とも笑顔で「いいよ」と答えてる。
(5人で中庭で昼ごはんか。大人数だなぁ)
そう思ってると、天河は今度はさらに、凜と伊田さんにも声をかけてるじゃないか! 天河は、いったいどこまで昼ごはんの輪を広げるつもりなのか!?
校舎と校舎の間にある中庭。そこには芝生のエリアがある。そこで昼食の弁当やパンを食べる生徒もまあまあ多い。
そんな中でも、広志たち7人がぞろぞろと歩いてくる姿は、周りから見てもかなり目立ってる。
芝生にいる他の生徒や、近くを歩いて通りがかる生徒たちの会話が聞こえてきた。
「おい、あれ見ろよ! すげーぞ!」
「なになに……? あっ、ホントだ! 三年生の世界三大美女が勢ぞろいしてるっ!」
「あんな光景は見たことがないぞ! みんなめっちゃ可愛ゆい~! もうキュン死するー」
──少し垂れ気味の大きな目と通った鼻筋の優しい顔つき。肩までの栗色のミドルヘアが風になびく正統派美少女の
身長は160センチと一般的な背の高さだけど、豊かな胸ときゅっとした腰のくびれはスタイル抜群。制服のブレザーを着ていても、そのスタイルの良さは三大美女の中でも群を抜いてる。
──少し赤っぽいショートヘアに、クリっとした大きくて綺麗な瞳が特徴の健康美少女、
にっこにこした笑顔が可愛さをさらに引き立ててる。153センチとやや小柄だけど、チェックのスカートから、スポーツで鍛えた健康的な足が伸びてるのがカッコいい。動きも一番軽やかで、跳ねるように歩いてる。
──威圧的なロングの金髪を黒髪に染めて、優しく清楚な雰囲気も出てきた。西欧とのハーフのような整った顔のモデル系美女、
身長は167センチと、すらりとした長身モデル体型で手足が長くて美しい。歩き方もモデルのように綺麗だ。
さすがに三大美女が制服姿で全員揃って歩く姿は圧巻だ。その姿を目にしたほぼ全員が、男も女も感嘆の声をあげたり、ため息をついてる。そして誰かが言った。
「あの三大美女を引き連れてる男を見ろよ!!」
「あっ、ホントだ! 三大美女を全員従えてるって、なんて凄い男だ!」
周りの男たちのため息にも似た声が、広志たちの耳にも聞こえてきた。
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