第6話 作戦会議


「で、どうする?」


宮下加恋への聴取が終わった俺とゼノンは、喫茶店のテーブルを一席借りて、作戦会議をしていた。


端っこの席の窓際って最高だよな

暖かいし、心地よい

眠りそう・・・


「おい、聞いてんのか?」


はっ!

ヤバす、ゼノンがいるの忘れてた

めっちゃ機嫌悪いやん。


「えっ、あー・・・ごめん。なんだっけ?」


やめてっ!そんな顔しないでっ!

すごい蔑まれてるよ!

泣くよ!?


「はあ、だからこれからの案だよ」

「あ、あっ、それじゃあ・・・・」

「いや、お前から案を聞くとろくなことにならないから、いい」


なんか、いつもより棘多くない?


「まず二手に分かれよう・・・」




ゼノンの作戦はこうだ。


調べることは大きく分けて二つある


一つ目は、黒沢がこの横浜市内にいるかどうかを調べるということだ。


どういう事かと言うと、

まず黒沢は自動車やバイクなど自分で長距離を移動する手段を持っていない (らしい)


つまり、市内に出るためには、電車やバス、タクシーなどの交通機関を使わなければならない。


モチロン、それらの交通機関には監視カメラなどの、利用者を調べられる環境が一応整っている。


もし市内にいないのなら、そこで俺らの任務は終わりだ。


二つ目は、黒沢が宿泊している、あるいはしていた、施設を探すと言うものだ。


「住所不定」ってのも面倒だな・・・・。


怒りに任せて、自分の秘密を軽々しく言うやつだ。宿泊場所に「DAYS」に繋がる何かがあるかもしれない。

まあ、期待はできないけど・・・


もし、運が良ければ、そのまま遭遇!っていうパターンもある。


で、二手に分かれるらしいけど

俺は前者でゼノンが後者らしい。


理由は簡単。

もし後者の方で黒沢にあった場合、戦闘になるかもしれないからだ。


たとえ間抜けでも、「DAYS」。

たとえ腐っても、アトマー。


遭遇した場合、近接戦になる可能性が高いから、近接担当のゼノンが後者を調べる。


まあ、及第点だな、うん


「ただ、一つ問題がある。」

「問題?」

「ああ、やつがいない場合だ。」

「それって俺らの仕事が終わるだけじゃないの?」

「たしかに、やつが市内にいないとわかったなら俺たちは任務終了だ。

が、やつが俺たちに気付かれず、市外に出る可能性はある。」

「???」

「やつの知人・・・、そうだな。友人や親族が自動車を逃走のために用意した場合だ。

いや、知人ならまだいい。調べられるからな。」


歯切れが悪い。もったいぶってないで、早く教えろよ!


「じゃあ、なんだったらダメなんだ?」

「相変わらず頭の回転が悪いな。

つまりだ。『DAYS』が手を回している場合だ。」

「あ・・」


た、確かに。

「DAYS」に動かれたら厄介だ。

多分もう黒沢、いや奴らの情報を掴むのが難しくなる。


「そしてもう一つ」


‼︎


「まだあんのっ!?」

「俺はこっちの方が可能性が高いと思っている。」


えっ・・・。

なにこいつ。めっちゃもったいぶってたじゃん。


「さっき、『黒沢がいない場合』が問題だって言ったよな?」

「ん・・・、まあ」

「あれは黒沢が『横浜市内』にいないの意味ともう一つある・・・

黒沢が『この世』にいない場合だ。」




「DAYS」というアトマー犯罪組織がなぜ「世界で最も謎の多い犯罪組織」と呼ばれているのか?


その理由は「徹底的な情報管理」だと言われている。


これまで、世界のあちこちで事件を起こし捕まっている「DAYS」の構成員たちは、一人も情報を吐かなかったのだろうか。


否。

吐く前に殺されているのである。


ある者は、拘束時に。

ある者は、送還中に。

ある者は、聴取中に。

また、ある者は、自ら命を絶った。


・・・、まさに「死人に口なし」である。


「奴らがマヌケにも『僕、情報持ってますよ〜』って言ったやつを許して、さらに逃げ道まで確保してやると思うか?

・・・少なくとも、俺は思わない。」


一度失敗したなら、またする可能性もある。

まさにその通りだ。


「二度あることは三度ある」、だ。


一度の失敗も許されない、奴らにとって、黒沢は、「邪魔者」以外の何者でもない。


奴らにとって殺すには十分ずぎる理由だろう。


「じゃあ、どうする?やめるのか?」

「いや、微妙な仕事だが、一応は任務だ。やるだけやってみるしかないだろ」


随分とやりにくい仕事を回されたようだ

川田さんは俺らのこと嫌いなのか・・・?

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