第5話 黒沢健司という男
▽
アトマー犯罪組織「DAYS」。
彼らは、何なのか。
彼らは、何を求めているのか。
謎が多いと言う、レベルではなく、
名前以外は謎という犯罪組織である。
これまで、幾度となく組織に所属されていると思われる
犯罪アトマーを拘束してきたが、
組織の名前である「DAYS」以外、
何も聞きだすことはできなかった。
その謎の多い犯罪アトマー組織は、「世界で最も謎の多い犯罪組織」
として、世間一般に広く知られるようになった。
▽
ー横浜市。
「で、どこだっけ?その店。」
「メモによると、赤レンガ倉庫の近くらしい」
俺とゼノンは、黒沢の目撃情報があり、通報してきた喫茶店を訪れるために
その喫茶店がある、横浜市まで来た。
「あれじゃね?」
「『喫茶店 グラン』・・・・。
あれだな。」
看板の文字が筆記体だけじゃなくて
レンガ造りの雰囲気のある店だ
カラン。ドアについていたベルが鳴った。
あっ、涼しい
「いらっしゃいませー。何名様でしょうか?」
「あの、すみません、この店の主人に用があるのですが・・・」
高校生くらいか?
若さそうな女性店員は、すこし怪訝そうな顔をして、
「少々お待ちください。」
と言い残して、店の奥に姿を消した。
しばらくして、初老の男が出てきた。
黒い髪にちらほら白髪が見える。
「お待たせしました。あたしが店長ですが、なんでしょうか?」
俺らは、顔を見合わせた。
「申し遅れました。通報を受けました、「GRAY」の者です。
私はゼノン、こちらはクロイツです。」
「あー、すみません。暑い中、わざわざ来ていただいて。」
「いえ、仕事ですから。」
ゼノンって、意外と礼儀正しいよな。
ここだけは、すごいと思う、まじで。
ここだけは。
「立ち話もなんですし、どうぞこちらに。」
と、主人は俺たちを応接室に案内してくれた。
▽
やっぱ、クーラーの付いている部屋にいるの
最高だわーー。
「おい」
「ん?」
「あんまり、くつろぎすんなよ」
「・・・、すまん」
くっ、ゼノンに注意されてしまった。
なんて、失態っ!
今、黒沢に話を聞いた店員を
主人に連れてきてもらっている。
ガチャ。
「お待たせしました。こちらが、話を聞きたいとおっしゃっていた店員の宮下です。」
「
さっきの受付の女の子だった。
ロングできれいな黒髪で、顔が整っていた。
が、愛想がない!
ザ・無愛想だっ!
「すみません。私は仕事があるので、抜けさせてもらいます。」
主人はそそくさと出ていった。
「仕事中、すみません。宮下さん」
「いえ、大丈夫です。で、なんでしょうか?」
「えっと、黒沢のこと覚えてますか?」
「ええ、『DAYS』の人でよね」
「はい。それで、黒沢が自分が『DAYS』だって言った経緯を教えてもらえますか」
▽
ー宮下visionー
ー数週間前。
カラン。ドアが開いて熱い空気が店内に入る。
「いらっしゃいませー。何名様でしょうか」
この頃、いつもこの時間に来ると決まってくる人だ。
ドラマーがいかにも被りそうなバンダナを被っている。
その男の人は、人差し指を立てた。
一本・・・。
「一名様ですね。こちらへどうぞ。」
席に座った男の人にメニューを置く。
「お決まりになられましたら、お呼びください。」
「あの!」
「はい?」
珍しい・・。
驚いた。
いつも、静かに、ただ静かにコーヒーだけを頼んでいた人が、
いきなり話しかけてきたのである。
「なんでしょうか?」
「あっ、あの、えーと、その・・・」
「?」
何だろう。
私、何か変かな?
「こ、この後、じ、時間ってありますか?」
「・・・・はい?」
「いや、そのお茶でもどうでしょうか」
・・・・・、あー。
そういうことね。
自分で言うのもあれだが、
私はモテる方だ。
学校では、2ヵ月に1、2回のペースで告られるくらいだ。
ナンパされることもたまにある。
そういう時は…、
「すみません。そういうのは少し・・・」
こう言えば、ほとんどは諦める。
「そ、そこを何とか。」
・・・・諦めないのかよ。
「いえ・・・、本当にすみませんが。」
「いや、だから・・・」
「困ります。」
「・・・・」
黙った。っていうことはもういいのかな?
と、思った瞬間である。
ドンッ、っと男の人が机を叩いた
「こ、こんなに俺が頼んでるのに!な、なんでダメなんだ!?」
まさかの逆ギレっ!?
周りが驚いて、こちらを向いている。
「こ、困りますっ。」
「どうしたの?宮下さん」
騒ぎを聞きつけた店長が来た。
事情を説明すると、店長は男の人に向かって
「申し訳ありません、周りのお客様の迷惑ですので、
そういうのはやめてもらってもよろしいでしょうか。」
と言ってくれたが、男の人の怒り(?)は収まらず、
さらにヒートアップしていった。
少し、危機感を感じた別の店員が、店長に
「警察呼びましょうか?」と言ってくれたことで、
男の人は舌打ちと千円札を置いて、席を立った。
私の前を通る時、
「お、俺はあの『DAYS』に所属している。俺に恥をかかせたこと、こ、後悔するんだな。」
と言い残して、去っていった。
そこから、今日までその男の人は一度も来ていない。
▽
「・・・と、いうわけです。」
「な、なるほど・・・」
・・・・・。
ん〜〜〜〜んん?
・・・・・・。
・・・いや、マヌケやん!!
「DAYS」を名乗ったって言うから、どういうわけかなーって思ったら、
ナンパの失敗からの逆ギレって・・・。バカなの?
もう、あれやん、
ゼノンさえも驚きを隠せてないよ!?
こんなマヌケの、相手をすんのかよ、
俺たち・・・・。
俺とゼノンは互いに顔を見合わせた。
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