第3話 ネームド
▽
ついに昨日、俺たちがネームドになった。
てっきり、ミットにはまた小言を言われるとも持ったが、
素直に称賛してくれた。
…、というか慰められた?
▽
―昨日。
「GIO」本部の一室。集会に使われる、大広間にて。
「これより、コードネーム「ゼノン」、同じく「クロイツ」の両者のネームドへの昇進式を始める。二人は前に。」
俺たちに昇進報告をしたメガネの男がそう言い、俺とゼノンは、前に出た。
緊張で俺の足はガタガタだ。
すると、俺たちの前にボス(ケイン)が来て、大きな声で話し始めた。
「コードネーム「ゼノン」、「クロイツ」。あなた方は「GIO」及び、日本国…(以下略。よって、コードネーム「ゼノン」にランキング21位への昇進と、「
えっ? ゼノンが、21位? ってことは…。
「同じくコードネーム「クロイツ」にランキング22位への昇進と、」
くそ~。
俺がゼノンより下かよ。
まあ確かにあっちの方が活躍してたかもしんないけどよ~。
「「
‥‥、(。´・ω・)ん?
ぐしゃ?
ぐしゃってなんだ?
効果音か?
つぶれた!みたいな…
横に視線を向けると、ゼノンが笑いをこらえていた。
‥‥‥、おいまさか。
ぐしゃって
愚者!?
▽
と、いうわけでその後、会った人は例外なく、祝福と‥‥
まあ、慰めを俺にくれた。
本当にやめてほしい
まあ、それは置いといて。
今、俺たちは「GIO」本部にいる。
なぜかって言うと、会合があるからだ。
それも、ネームドどうしの。
ミットによると…。
「ああ、大丈夫ですよ。ただの顔合わせです、今回は。
まあ、でも気を抜かないでくださいね。絶対に。」
だと。
絶対に気を抜くなって何?
めっちゃ怖いんだけど。
ロビーで待たされて、案内に来たのは
‥‥川田さんだった。
「よお。元気か。」
この人、もしかして忘れてたりしないよな?
ゼノンはどうかわかんないけど、俺はまだ怒ってますヨ。
‥‥と、心の中にとどめた。
「ええ、おかげさまで。」
あっ、ゼノンとハモった。
「そうかい。…。ああ、昇進おめでとう。」
と、川田さんは俺たちに紙袋を渡してきた。
中にワインが入っていた。
ワインとか、何が何なのかわからないが、白赤の区別はつく。
赤ワインだ。
ゼノンは「ありがとうございます。」と言って、紙袋を受け取ると、
「じゃあ、行くか。」と川田さんはすたすたと歩いていく。
▽
実は、川田さんはこの「GIO」の幹部だ。
強そうでもなく態度も悪い、という外見はあながち間違っていない。
川田さんは異能を使えないアトマーだ。
いや、異能を使えないのでなく、戦闘の役に立たない異能である。
『
だから、川田さんは戦闘ではなく、
人事や、経費管理などの事務で幹部まで上り詰めたという。
意外とすごい人だ。
▽
「着いたぞ、ここだ。」
川田さんは襖のある部屋を指さした。
俺は、川田さんの指さす、襖を開けようとした。
‥‥ゾクッ。
何だ、この部屋。
異様な緊張が走る。
この空気を、俺は知っている。
犯罪アトマーと対峙するときに感じる、雰囲気。
殺気だ。
しかし、犯罪アトマーなんかとは、次元が違う。
何倍にも濃い。
‥‥、襖を、開けられない。
指が震える。
殺気に押しつぶされる。
これは、やばい。
グダグダしている俺を払いのけて、ゼノンは襖を開けた。
薄暗い畳の部屋に、座っていた者たちが、こちらを見ていた。
殺気を発しながら。
ゼノンはまったく気にしない様子で、
「「法師」のゼノンだ。よろしく。先輩方。」
と言い、空いている座布団に座った。
すると、座っていた一人が笑った。
「今回の新入りは、肝が据わってるなあ‥。」
笑っていた。
笑っていたが…‥。
「‥‥、お前ら。あんまいじめんな。」
川田さんが仲介に入った。
「ネームド」を「お前ら」呼ばわりって、
やっぱり川田さんは偉いのかー。
なんか、癪だ。
「いじめてませんよぉ。」
女の人が弁解した。
へえ、女の人もいるんだ。
「あれぐらい、殺気を発してたら、いやでも気づく。」
「ちょっと、からかっただけですよぉ。」
「お前らのからかいは、次元が違う。」
相変わらず、川田さんは饒舌だ。
相手が、ネームドだろうが、ひるまず抑えていくのは、すごいと思う。
「そちらさんは、噂の「愚者」クンかな?」
一人が、俺の方を見て聞いた。
「愚者」って、やっぱりヤだな。
まあ、俺の二つ名だし…。
ほんとのことだし…。
「はい。『愚者』のクロイツです。よろしくお願いします。」
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