第2話
今日から体育祭の練習が始まっていた。
ゴールデンウィークが明けて、定期テストを終えたあとに六月の始まりにある。
わたしは体育祭は主治医の先生に止められていて、参加することができなかったから放送部としてアナウンスをずっとすることになった。
放送部の体育祭の打ち合わせが終わって、吹奏楽部が奏でるメロディーが軽やかに聞こえてくる。
「咲悠良、まだいたのか」
「うん、放送部の打ち合わせをしてた」
龍樹は野球部の練習をしていた。
「またね」
「うん、それじゃ」
わたしは少しだけ寄り道をすることにした。
それは大学のアイスリンクで、クラスメイトが練習を始めていた。
「菜々花ちゃん! お疲れ様」
「咲悠良ちゃん。来てくれたの」
菜々花ちゃんはアイスダンスの世界ジュニアの代表にもなってるし、今度のオリンピックでは出場することが有力視されているんだ。
「じゃあ、練習をするよ」
そのままパートナーの古川くんと共に滑り始めた。
わたしは少しだけ見ていくことにしたの。まだ今シーズンの振付練習を始めたためか、まだ完成形にはなってないものの、わたしはとてもいいと思った。
「今日は椿選手が来るの? みんないるから」
「うん! 椿先輩、すごいんだよ! トリプルアクセルを跳んでるの」
「ほんとに?」
「そうだよ」
「来たよ!」
わたしは端っこで見せてもらうことにした。
二宮椿選手は桜選手の姉で、八年前のオリンピックの銀メダリストなんだ。ついこの前のオリンピックはショートプログラムでフリーに進めるなかで最下位の成績だったのに、フリーでノーミスで四位入賞を果たした。
目の前でトリプルアクセルを跳んでるのを見て、とてもすごかった。
桜選手が日本に帰国していて、今日は練習に出ているみたいだ。
「わぁ、すごいな。あのトリプルアクセル」
スケート部の生徒も滑ってるのに、桜選手が滑っている場所だけは異次元の雰囲気を醸し出していた。
四回転トウループとサルコウを練習をしていたけど、女子でも四回転を練習するのは多いみたい。
「ロシアの女子のジュニアスケーターが、四回転ルッツとかを跳んでたりしてるし……来シーズンにはシニアデビューするみたいなんだ」
「そうなんだ、すごい。ロシア恐ろしいね、四回転……」
少ししてから、お姉ちゃんと合流することができた。
「
「え? 大丈夫だよ。あのあとから一ヶ月は経ってるけどね」
お姉ちゃんはわたしの八つ上の二十五歳、看護師の仕事をしているんだ。
「咲悠良は体育祭は出ないんだよね? まだ発作とかも起きてなさそうね」
家に帰ってから、少しだけチェックするみたいだけど、発作は実は昨日起きていた。
「お姉ちゃん、あのね」
「ん?」
「なんでもないよ、少しだけ考え事してた」
「テストだもんね……。がんばれ」
お姉ちゃんはそのまま部屋に戻っていった。
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