第51話 海。

ずっと前に、

真夜中に海に行ったことがありました。


その時、波音が轟音の様に聞こえて

「海は生きている!!」と飲み込まれそうな気がして、無性に怖くなった事を覚えています。


それからは、夜の海には行くことはなく

昼間の海にだけ行っていました。


泳ぐのではなく、

大体私は日傘をさして座っているだけ。


それは友人と行こうが家族で行こうが。


本当にただ座っているだけなのです。


それなのに、

帰りの電車の中ではいつもいつも

私だけが灰になっていました。



そして、今日も友人と海を眺めながら

おしゃべりをしてきてのですが、

やはり帰宅後、灰になっていました。



家族に

「海って心は癒してくれるけど、生命エネルギーを吸い取っている気がする。そうだ!あの生きているような波は全部生命エネルギーを吸い取っているんだよ!!」

などと、私は戯言を言っていたのです。


「じゃないと、海に行くたびに死にそうに疲れるのはおかしい!!」と。


「生命エネルギーを吸い取っているに…」


と続けている私の言葉を遮って夫が、


「スクワットしなよ」


「いや、生命エネルギーが…」


「1日10回…いや、5回でいいからスクワットしなよ」


「絶対に吸い取られてる!!」


「いいから、スクワット!!」


「…でも今日はもう死にそうだから無理」



そう言って、

海に生命エネルギーを吸い取られてるという

私の訴えは、海の泡となって消えていきました。



でも、本当に生命エネルギーが…!!!



……はい。大人しくスクワットします。



というか、疲れ過ぎて眠れません。


どれだけもやしなのでしょうか…私は。

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