第58話 『いい加減終わらせるぜ!!最後の曲だ!!』

 〇里中健太郎


『いい加減終わらせるぜ!!最後の曲だ!!』


 神の声は疲れてない。

 だが、朝霧さんはそろそろ限界だ。


 …そりゃそうだな。

 御年75歳。

 なのに、アズと変わらないパフォーマンスでギターソロも弾き倒した。

 ずっと笑顔ではあるが…きっとキツイはず。


 ナオトさんは抜き方を知ってるから、曲の合間に腰高のスツールに寄り掛かったり。

 コーラスだけに徹したり、コードだけの曲は体力を消耗しない弾き方をしてた。

 だが、朝霧さんは…なあ。

 いつも全力だ。

 …それが、俺が憧れた世界のDeep Redのマノンだ。


 俺の父親は朝霧さんの大ファンだったから…あ、いや、今もファンだが。

 俺がビートランドに再就職した事を喜んだ。

 結婚もしてない俺には、孫を見せてやる事も出来ず…せめてもの親孝行が、これのような気もする。


 音楽に関わって、夢を叶えている…風な現実。

 実際は、ガキの頃夢見たギタリストにはなれなかったけど。

 それでも…音楽に触れていられること。

 みんなが作り上げる音に携わる仕事が出来る事は、この上なく幸せだ。



 それにしても…

 アンコールの選曲、なんだよ。

 Deep PurpleとDeep Redは、リハの合間に冗談でやってたのを聴いたが…

 まさかのSHE'S-HE'S…

 しかも、あんなレベルの高い曲。

 朝霧さん、自殺行為だろ。


 いつ練習したんだ?


「……」


 ステージでは、神がラストのF'sを歌い終えて、フィニッシュを迎える場面。


『いいか!!おまえらも跳べよ!!』


 …ったく。

 跳ぶの好きだな。


 小さく笑いながら、エンディングの曲を用意する。

 …やっぱ、『Never Gonna Be Aolne』かな。


 最後の音と共に照明が明るくなって、F's全員がステージのセンターに集まってハグをした。

 それから…四曲前にも見た光景。

 手を繋ぎ合って、ステージギリギリの最前まで出ると、大きく両手を上げて客席の拍手に応えた。


 俺とハリーも、ステージ袖から拍手を送る。

 …いいライヴだった。

 ライトに照らされて、汗を光らせるF'sのメンバー全員を…

 俺は何とも言えない気持ちで見つめた。


 とても…まぶしい気持ち…っつーか。

 …すぐそこにいるのに、酷く遠い存在に思えた。



 明るく照らされた客席に、朝霧さんとアズと映がピックを投げる。

 京介はスティックを。

 それを取ろうと手を伸ばす観客。

 ナオトさんはタオルを投げ込み、神は…何も投げるものがないからか、投げるフリだけをした。

 それでも客席は歓声を上げる。

 …どれだけ愛されてんだよ。



「はー…興奮した…里中さん、お疲れ様っす。」


 ハリーが汗だくになった額を拭いながら言った。


「ああ…お疲れさん。ほんと、いいライヴだった。」


 いつも思うが…いいライヴの後は燃え尽きた感が否めない。

 明日俺は…仕事が出来るのか?



 観客の退場が始まった。

 俺達も撤収作業に入る。



「里中。」


 まだ興奮冷めやらない中、卓の終了チェックをしてケーブルを片付けようとしてると、声をかけられた。


「高原さん。」


 振り向くと、笑顔の高原さんが俺に手を差し出している。


「いい仕事をしたな。聴き応えがあった。」


 え…えっ!?


「あ…ありがとうございます。でもそれは、F'sの実力ですよ。」


「いや、本当におまえは腕がいい。」


 な…なんだ?

 高原さん、こんなに褒めてくれるなんて…


 俺はすごく…すごく恐縮しながら、高原さんの手を握った。

 すると、高原さんは俺の手を握り返して。


「ここを人に任せられるなら、ちょっとF'sの控室に行こう。」


 なんて言うか…

 久しぶりに見るような、スッキリした笑顔で言った。


「分かりました。」


 F'sの興奮もだが…高原さんの言葉にも興奮した。

 …あの世界のDeep Redのフロントマン…高原夏希に、聞き応えがあったなんて言われると…

 調子に乗りそうで怖いぜ。



 俺は片付けをスタッフに任せて、高原さんに続いてF'sの控室に向かう。

 ロビーはまだ賑やかで、そこにある笑顔を渡り廊下を歩きながら眺めた。


「ここに来れた奴らはラッキーだったな。」


 俺の前を歩く高原さんが、ロビーに残っている客を見下ろして言った。


 本当に。

 まさかのアンコール。

 それが…『Burn』から始まって、Deep RedとSHE'S-HE'Sの曲…

 F'sの曲だけでも満腹なのに、すげー贅沢なカバーだった。



「あっ、高原さん!!お疲れ様です!!」


 控室の前の通路は賑やかで。

 高原さんを見付けたスタッフ達は、次々にそう言って道を開けた。


「みんなもお疲れさん。」


「ありがとうございます!!」


 …スタッフは数知れず居るが…

 ここまでピリッとさせられるのは、この人しかいねーよなあ…


 あとは…神とか。



「おまえら、よくも無許可で俺の曲を。」


 高原さんが、ドアが開いたままになってる控室の入口でそう言うと。


「ナッキーの曲は俺の曲やんか。」


 少しクタクタになった風な朝霧さんが、上半身裸でタオルを首にかけた状態で言った。


「ははっ。よく言うぜ。」


 高原さんと朝霧さんのハイタッチ…ああ…いくつになってもカッコいい人達だ…



 どうやら中にはF'sのメンバーしかいないらしい。

 高原さんは少しだけ振り返って通路を見た後、ゆっくりとドアを閉めた。


 俺は壁際に立って、高原さんがみんなに声をかけるのを眺めた。

 今夜の高原さんは…すこぶる機嫌がいい気がする。

 だいたいいつも穏やかな顔をされてはいるが…

 今夜は、超笑顔だ。



「健ちゃん‼︎すげー弾きやすかったよー!!ありがとう!!」


 シャワーから出てきたばかりのアズに、そう言って飛びつかれて。


「うわっ!!濡れるじゃねーかよ!!」


 飛び跳ねるように移動する。


「つれないなー。」


「いくつだよ、おまえ。」


 触られて濡れた腕を拭いてると。


「いや、ほんと弾きやすかった。ありがとう。」


「ああ。めっちゃえかったで。」


 ナオトさんと朝霧さんにもそう言われて…


「えっ…あっ…ありがとうございます!!」


 ペコペコとお辞儀した。

 …俺、明日生きてんのかな。

 こんな…盆と正月がいっぺんに来たみたいな展開…


「アンコールの時も、千里のキーが少しキツそうになるとディレイかけてくれてたな。」


 は…さすが高原さん。


「ぶっつけであんな細かい作業、ようやったなあ。」


「いえ…まあ、それが仕事なので…」


 ああ…ドキドキする。

 これ、ドッキリって言われるんじゃ…

 いや、俺にドッキリってなんだよ。

 芸能人でもないのに。


 俺が一人で嬉しさに悶絶しそうになってると。


「…みんなに話がある。」


 高原さんが、真顔でみんなを見渡した。


「ん?」


「なんですか?」


「なんや?」


 F'sみんなが顔を上げた中。

 高原さんは…


「明日発表しようと思うんだが…」


 腰に手を当てて。


「俺はビートランドの会長を退く。」


 静かな声で言った。


「……」


「……」


 みんな、無言になった。


 ついに…か。

 そんな気分になって。

 分かってたつもりでも…少し落ち込みそうになった。


「会長を…」


 神、覚悟は出来てるか?


 俺が神を見てると…


「さくらに任せようと思う。」


「えっ!?」


 驚きの声を上げたのは、俺とアズと京介と映。

 朝霧さんとナオトさんと神は…小さく頷いてる。


「ええんちゃう?さくらちゃんなら、まだまだ元気やし。」


「むちゃくちゃな事されそうっすけどね。」


 朝霧さんと神が、そう言い合って笑う。


 …さくらさんが…

 まあ…あの人なら…何かと上手く動かしそうな気もする…うん…


「そして、今まで設けなかった社長なんだが…」


 ん?

 社長?

 じゃあ、そこに神を…


 俺が神を見ると、神は…俺を見た。


 …ん?


「里中、おまえに頼みたい。」


「………………はっ?」


 俺が何の事か分からなくて口も目を開いたままでいると。


「賛成。」


 神が、片手を上げて笑顔になった。






 …………はあ!?



 〇神 千里


「はあ!?」


 遅れて控室にやって来た義母さんが、大声を上げた。


「聞いてないよー!!」


 そう言いながら、高原さんをポカポカと叩く。

 …知花みたいな猫パンチならともかく…義母さんのこれは…


「おっ…おい、さくら。俺を殺す気か?」


 高原さんにそう言われた義母さんは。


「はっ……」


 驚いた顔で動きを止めて。


「ご…ごめん、なっちゃん。痛かった?痛かったかなあ?」


 高原さんの顔を覗き込んで、それまで自分がポカポカと叩いていた胸辺りを両手で触った。

 すると高原さんは、その義母さんの両手をギュッと握って。


「ああ…痛かったな…俺の事をサンドバッグと思ってないか?」


「まっ…まさか!!」


 みんなの前で両手を握られて、義母さんは少しうろたえてる。


 …今更だよな。

 今まで、どれだけ公衆の面前でイチャついて来たと思ってんだ。(俺が言うかって感じだが)


「…言わなくて悪かった。だが…俺はどうしても、さくらに…ビートランドを任せたいんだ。」


 …すっげー、甘い声だな。

 こりゃ、義母さん頷くだろ。

 …ていう、大半の思いとは裏腹に…


「それとこれとは別ーーーーー!!」


 義母さんは高原さんの両手をパーッと離すと。


「なんでそんな大事な事、みんなに話した後に報告するわけー!?」


 握り拳を作っての反論。

 …まあ、正論だな。

 相談もせずに、みんなに話した高原さんが悪い。


 俺は椅子に座ったまま、足を組んでその光景を眺めていた。


 会長に義母さん。

 社長に里中を推した高原さん。

 だが、義母さんは断固拒否し続けてるし、里中は…


「……」


 放心状態だ。



「健ちゃん、大丈夫?」


 さっきからアズが何度もそう声をかけているが、里中は依然として返事すらしない。

 ただ、口を開けて高原さんと義母さんのやりとりを見ているだけだ。

 …ま、ここは言い出しっぺの高原さんに任せて…


「……なんで、俺なんですか…」


 ゆっくり立ち上がったところで、里中の弱弱しい声が聞こえて来た。


「え?」


 高原さんが義母さんからの遠慮がちな攻撃を、少しデレデレで防御しながら里中を見る。


「…どう考えたって…神が適任じゃないですか。なのに…どうして俺なんか…」


 里中は高原さんを見て、それから…視線を俺に移した。


「なんで…おまえは平気な顔してるんだ。」


「なんでって。俺は、おまえで大賛成だからだよ。」


「なんで大賛成なんだよ。どう考えても神だろ。」


「どう考えてもって何だ?どう考えたら俺なんだよ。高原さんの娘の旦那だからか?それならアズだっているぜ?」


 俺がアズを顎でしゃくって言うと。


「そうじゃなくて!!」


 珍しく…里中が声を荒げた。




 〇里中健太郎


 少し声を荒げてしまったが、もう…止められなかった。


 だっておかしいだろ…!?


「誰からも尊敬されてて、カリスマ性があって、もちろん才能だってある。上に立つ人間としては、申し分ないじゃないか。」


「……」


「誰だって…誰だって、おまえの言う事なら聞くし、聞きたいって思うはずだ。」


「……」


 俺が両手を握りしめて、何なら…すごく褒め上げてるというのに。

 神はポリポリと頭をかいて。


「…確かに俺の言う事は、みんな聞くだろうな。」


 それまで座ってた椅子に座り直した。


「だが俺への尊敬は、シンガーとして、ソングライターとして、後は…そうだな…まあ、ネームバリューだな。」


「……十分だろ。」


「そうか?俺はそれより、おまえみたいに「この人のために」って思わせる力のあるやつの方が、すげーって思うけどな。」


「…は?」


 神の言う事が分からなくて、眉間にしわを寄せる。


「オタク部屋に行った。」


「……」


「で、おまえのいい所と悪い所を教えてくれって言った。」


「は?何だそ………あ。」


 そう言えば…


「一昨日のアレか!?」


 部下たちが、恐ろしく興奮して『神さんがさっきまで!!』『ここでの評価が!!』なんて一度に騒ぎ立ててた…アレか!?


「オタク部屋が出来て何年だ?まだ片手にも余るっつーのに…おまえの信頼度、半端ねーよ。」


 神は前髪をかきあげながら、足を組んだ。


「…信頼度で言うと、知花ちゃんの方が上だぜ。」


 俺が低い声で言うと。


「そりゃ、あいつの知識はバカみてーに上限を知らねーからな。でも知識の問題じゃねーよ。」


 神は首を傾げて、やけにスッキリした顔で言った。


「……」


「おまえの部下たちがどう答えたかと言うとな。」


「あっ、ちょちょっ…ちょっと待て…」


「あはは、健ちゃん緊張してる?」


「うるさい。」


 俺はそばにあった紙コップを手にして水を注ぐと、ゴクゴクと飲み干した。

 そんな俺に小さく笑いながら、さくらさんと一緒に椅子を引いて座る高原さん。

 …もう有無を言わさず…って感じなのか?


 いや、俺は納得いかない。



「いい所ですか…うーん…結構色々無茶ぶりされるのに、文句言いながらも応えちゃうんですよねえ。地味に、だけど完璧に出来ちゃう人だなあって、尊敬します。」


 神が、いったい誰の物真似だ?って思うような口調で言って、アズとナオトさんが手を叩いて笑った。

 続けて…


「ダメな所ですか?うーん…人が良過ぎますね。」


「あはは。さっきから誰の真似やねん。そんなんオタク部屋におるか?」


 朝霧さんが俺に向かって言う。


「…最初のは…本間で、後のは…高橋…?」


 どうかな…と思いながらそう答えると。


「正解。さすがだな。俺。」


 神は自分で手を叩きながら言った。


「嘘やろ。千里の物真似が似てるとは思えへん。里中の観察勝ちやろ。」


「間違いないねー。」


 …地味にだけど完璧に出来る人…か?俺…

 人が良過ぎるか?

 ……いやいやいやいやいやいやいや。

 誰の事言ってんだよ!!

 本間!!

 高橋!!



「健ちゃん、すごいねー。大絶賛じゃん。」


 アズがそう言うと。


「社長がそない嫌なんか?俺が里中なら、万歳してるで?」


 朝霧さんは腕組みをして、若干呆れてる口調で言った。


 ば…

 万歳なんて、出来るかー!!


「全く……部下にそれだけ言われてるんだぜ?素直に喜べよ。」


 京介がつっけんどんにそう言って。


「ほらな?満場一致だぜ?」


 神は鼻で笑った。


「…何が満場一致だ…」


 もう…立ってるのもやっとだ。



 だいたい…

 俺は今のスタンスで仕事をするのが好きだ。

 いや…好きどころの話じゃない。



「人が良過ぎるからこそ、心配にもなるし手伝いたくもなる。そして気が付いたら『里中さんのために』と思ってしまっている、だってさ。」


「……」


「歌う事をやめても尊敬される何かを持ってる。おまえは俺以上にカリスマ性がある。」


「…バカ言うなよ…あるわけねーよ。」


 色んな意味で…気持ちが揺れて。

 俺の声は小さくなった。


 社長なんて器じゃない。

 SAYSだって、俺が解散させたようなものだ。

 まとめる自信なんて…あるわけがない。


 オタク部屋だって、知花ちゃんが来てくれてたから…



「里中。」


「……」


「おまえに、社長を任せたい。」


 高原さんが、俺の目を見て言った。


「……無理ですよ。」


「俺が頭を下げてもか?」


「下げないでください。下げられる前に俺が土下座しますよ。」


「…確かに俺は千里と圭司にこの事務所を任せたいと思ってた。」


「……」


 ほら…な?

 なのに、どうして…


「だが、千里から『自分より適任がいる』と、おまえを勧められた。」


 俺が眉間にしわを寄せて神を見ると、神は涼しい顔をしてそっぽを向いた。


「俺も色々リサーチした。おまえ、オタク部屋からだけじゃない。ステージスタッフからの信頼も厚い。それに…」


「……」


「マノンとナオトにまでダメ出し出来る奴、見た事ない。」


「はっ…あっあれは…」


 さーっと血の気が引く。


「ええんやって。それだけ、おまえの音楽に対する熱が強いっちゅう事やん?もっと良くしたい、もっと出来るはず、てな。」


「…朝霧さん…」


 そう言われると…

 俺はこれからも、今の仕事を続けていきたいと思う。

 強く。


 だからー…

 やっぱり社長なんて…



「…俺自体は…結構身軽です。」


 立ってるのもやっとな精神状態だが、真っ直ぐに体を伸ばして…高原さんを見据えて言った。


「ですが、病気がちの両親もいます。だから今までも休まずやって来たわけじゃありません。」


 高原さんは腕組みをして、俺の話を真顔で聞いてくれている。


「それに…俺は今の仕事が好きです。すごく満足しています。アメリカから帰って…細々と仕事をしていた俺をここまでにしてくれた高原さんには、本当に感謝していますが…その要望にだけはお応えできません。」


「…どうしても、か?」


「どうしても、です。とてもじゃないけど、俺はそんな器じゃ…」


 俺が少しうつむいてしまうと。

 まるで、それを待ってましたと言わんばかりに高原さんは立ち上がって。


「オタク部屋には通ってもいい。今まで通り、卓にもついてもらう。プロデューサーもエンジニアとしても活躍しまくってもらう。」


「え?」


 まるで、夢みたいな条件を…高原さんが出した。


「家も事務所の近くに用意する。親と一緒に引っ越せ。」


「はっ…?え?」


「おまえに大きな肩書をつけたい。おまえには、それほどの才能がある。部下たちの言う『人が良過ぎる』うんぬんじゃない。俺がおまえの、エンジニアとしての才能を買って言ってる。」


「……」


 さっきまでの動揺が…感動に変わってきた。

 俺には、それだけの価値があるんだろうか。

 だけど、これだけの…

 俺が尊敬して止まない人たちが、俺を評価してくれてる。



「…さくらさん。」


 俺はさくらさんの前に立って。


「俺で…役に立ちますか?」


 新会長に抜擢された、さくらさんに問いかける。


「え…えっ…?なんであたしに~…?」


 当然、さくらさんは困った顔だ。

 だけど…高原さんは望んでるんだ。

 さくらさんと俺のタッグで…ビートランドが新しく生まれ変わるのを。



「……分かったわよぅ…だけど…みんな、ちゃんとフォローしてよ…?」


 さくらさんが控室の中を見渡して言うと。


「もちろん。」


「頑張って下さい。」


「楽しみやな~。」


「これいつ発表する?」


 それぞれ、そんな言葉が飛び出して…

 神が、俺に手を差し出した。


「……ったく…おまえはー…」


 俺がその手を乱暴に握り返すと。


「頼むぜ、健ちゃん。」


 神は、不敵な笑顔でそう言った。




 おまえまで『健ちゃん』言うなーーー!!

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